Yahoo!ニュース

残り湯の洗濯利用は要注意 梅雨に悩ましい「部屋干し臭」を防ぐ3つの洗濯ワザ

藤原千秋ライター、住生活ジャーナリスト
洗濯物の部屋干し光景(写真:アフロ)

 今月中旬に全国で梅雨入りし、一日中雨が降っていたり、午前中は晴れていたのに午後は雨の予報だったりという日が続いています。いたしかたなく洗濯物を「部屋干し」して数時間後。もう乾いたかと思いきや、うっすら湿り気が残っていて、さらになんとも言えないニオイが干した物から漂ってしまっていた……。

 そんな切ない経験のひとつやふたつ誰しも抱えているものですが、果たしてそんなとき一体どうしたらこの臭いは防げたのか、どう洗えばよかったのか、どう干せば、どうすればあの臭いをリカバリできるのか? 

 安上がりでも効果のある方法から札で叩く方法までの洗濯ワザ数多あるうち、この記事では洗う前と洗う時にできることをお伝えしたいと思います。

1.洗濯槽清掃を行う

 冒頭からキモになるところをお話ししてしまうのですが、そもそも部屋干し臭が出てしまう洗濯を行っている、洗濯機の洗濯槽そのものが、長期間にわたって手入れされておらず、カビや細菌に汚染されてしまっているケースが散見されます。そのため毎日毎回の洗濯の際に、それらの微生物を衣類にわざわざ移植してしまい、臭っている可能性が考えられるのです。

 そこでの洗濯槽清掃ですが、特段の技術は要りません。手近なドラッグストアなどで200円~600円くらいで市販されている「洗濯槽クリーナー」という商品を購入し、裏面の説明書に従って洗濯機に投入し運転させてください。基本的に作業はそれだけです。

 注意点は、ドラム式洗濯機の場合、泡立ちを嫌うので「過炭酸ナトリウム」を主成分とした洗濯槽クリーナーが使えないことが多いというところです。購入時に自宅の洗濯機でも使えるか注意書きを確認してください。また、クリーナーをかけることで、信じられないくらいの量のカビや泥ヘドロのような得体の知れないものがドロドロ出てきてしまうことがあります。この度合いによっては次回の洗濯時に、それが衣類にへばりつく恐れがあるということは、了承しておいてください。

 この気持ち悪い物体が衣類にへばりつき乾いた状態が乾燥ワカメに酷似していることから、「ピロピロワカメ」などと呼ばれることがありますが、当然ワカメではありません。石けんカスとクロカビなどの合体したものなので、もし洗濯物に付着しているのを見たら、乾いたところでそっとはがしてください。

 洗濯槽クリーナーをかけた時点で不吉な予感がした場合には、その後すぐ何も洗濯物を入れずに2~3回洗濯運転をさせることで洗濯槽を「濯ぐ」ことで洗濯物汚染リスクを下げることができます。

 ちなみにこのピロピロワカメ発生予防には、2か月に一度程度の洗濯槽クリーナー利用、また洗濯機の蓋を閉めないこと、洗濯槽を洗濯物カゴ代わりにしないことなどが有効なのでぜひ実行してみてください。

 ※ただしドラム式洗濯機に誤ってお子さんが入ってしまう可能性のあるお宅では、安全優先で。使用していない時間帯はドアを閉め、必ずチャイルドロックしておきましょう。

2.風呂の残り湯を洗濯利用しない

 エコ好きな方はこうご提案すると悲しまれるのですが、こと、梅雨時の部屋干し時には、できるだけお控えくださいということです。

 なぜか。残り湯にはフケ、アカ、皮脂などのほか、人間の皮膚にいる数多の常在菌が溶け込んでおり、その菌の中には部屋干し特有の臭いといわれる「酸っぱい」臭い(イソ吉草酸)を代謝の際に産生するモラクセラ菌などがあります。

 細菌は1ミリリットルあたり80個が一晩寝かせた残り湯内では120万個にまで増えたという実験結果(※衛生微生物研究センター)もあるので、どうしても残り湯を使って洗濯をしたいならば、入浴直後のお湯にし、濯ぎには水道水を使用するようにしましょう。

 

3.粉末状の合成洗剤と粉末状の酸素系漂白剤を使用する

 現況おそらくもっとも洗濯水を、安全にアルカリ性にできる組み合わせ。それが「粉末洗濯洗剤」と「粉末酸素系漂白剤」の併用です。

 部屋干し臭というもの。その正体は、先に挙げた「モラクセラ菌」、また黄色ブドウ球菌や大腸菌など、人の皮膚、粘膜に常在する細菌が洗濯物内で分解、代謝してしまう際に出る臭気だけではありません。

 洗濯物に付着して落としきれていない汚れ、例えば酸化した皮脂、アポクリン腺などから出た分泌物、多少の排泄物、血液、などタンパク質や脂質なども臭い源に含まれています。これらをしっかり落とすためには、洗濯水の洗浄力が高いこと、アルカリ性であることが望ましいのです。

 アルカリということで、流行りの「重曹」や「セスキ炭酸ソーダ」はどうか、使えないのか? と思う方もいるかも知れませんが、これらの洗浄剤だけでは、界面活性剤が含まれていないので、泥汚れなどにはうまく効果を発揮しません。

 「粉末酸素系漂白剤」というのは主成分が「過炭酸ナトリウム」なので、これもアルカリ剤であり「重曹」「セスキ」に近しいものです(より強く、また発泡します)。

 ただ強めのアルカリで洗濯をすると、木綿やポリエステルなど比較的強い繊維でもそれなりに傷みますし、ウールやシルクなど動物性タンパクでできた繊維は不可逆的に硬化してダメになります。

 すでにやや臭うバスタオルやスポーツタオル、体育着、柔道着、綿パンツ、靴下など、気になる衣類をまずはこのペアで通常通り洗濯して干し、様子をうかがってみてください。

 3つのワザとも、市販の洗剤を購入するだけ、あえての残り湯利用をしない、など、あまり手間暇はかからないけれども効果は高い方法です。まずはここから、生活に取り入れていってみてください。

ライター、住生活ジャーナリスト

「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『人生が整う 家事の習慣』(西東社)、『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。2020年1月より東京中日新聞にてコラム『住箱のスミ』連載中。

藤原千秋の最近の記事