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ユーザーの行動や消費を“格付け”「Yahoo!スコア」の作成・利用を拒否する方法

藤代裕之ジャーナリスト
Yahoo!スコアの作成・利用ページ=筆者がキャプチャし画像を加工

ヤフーは6月3日、オークションやショッピングでの取り引き実績やカード利用金額のデータを算出した信用スコア「Yahoo!スコア」を7月から企業向けに提供すると発表しました。「Yahoo!スコア」の利用を希望する人はそのままでいいのですが、希望しない場合は、ログインして自分で「オフ」手続きをしない限り、スコアが作成・利用される設定になっているので注意が必要です。

現状、自分のスコアは確認できない

「Yahoo!スコア」がどのようなデータを利用しているかヘルプセンターで確認できます。「本人確認」「信用行動」「消費行動」「Yahoo! JAPANサービス利用」4カテゴリーのデータを利用しているとのこと。報道によると、スコアは900点満点ということですが、今のところ自分ではスコアを確認することはできません。

https://www.yahoo-help.jp/app/answers/detail/p/533/a_id/155977

ヘルプセンターのYahoo!スコア説明ページ=筆者がキャプチャし画像を加工
ヘルプセンターのYahoo!スコア説明ページ=筆者がキャプチャし画像を加工

「オフ」手続きをする場合は、赤枠で囲ってある「こちら」をクリックすると、Yahoo!スコアの作成・利用のページが出てきます。

デフォルトで「オン」になっている

Yahoo!スコアの作成・利用のページ(Yahoo! JAPAN IDでログインが必要です)

https://accounts.yahoo.co.jp/privacy/optout/score

以下の画像の赤枠で囲んだボタンのように、設定はデフォルトで「オン」になっています。

Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工
Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工

企業としてはユーザーを獲得するために、デフォルト「オン」にしたい気持ちは理解できますが、個人の信用スコアという非常にセンシティブなデータですから、ユーザーが説明を納得した上で「オン」にするという手続きが必要ではないでしょうか。

Facebookの診断アプリが世論操作の引き金になった、ケンブリッジ・アナリティカ問題も、Facebookのデータ利用のデフォルトが「オン」になっていたことが大きな要因です。デフォルト「オン」のままでは、使われていることをユーザーが「知らなかった」ということが起き得るでしょう。

ボタンを左側にスライドすることで「オフ」手続きを行うことができます。以下の画像のようにボタン部分が白くなれば「オフ」手続きは完了です。

Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工
Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工

信用スコアに求められる透明性

中国での普及が話題の信用スコアは、スコアが高ければ買い物が優遇されるなどのメリットがある一方、格差拡大や監視社会化が問題になっています。

国家レベルで信用スコアを運用する中国と、一企業が提供する「Yahoo!スコア」を同列に扱うことはできませんが、ヤフーは日本で最も使われているインターネットサービスであり、様々な企業に提供されていくとなると社会的な影響が大きくなることが考えられます。

例えば、このような記事を書いたらスコアが下がる(らしい)となれば、インターネット空間の言論をコントロールすることも可能になります。スコアがどのように計算されているか、恣意的なスコア化が行われていないか、ユーザーへの説明責任と透明性が求められますし、企業側が適切に運用しているかを監査する方法なども議論していく必要があるでしょう。

パートナー企業での利用と停止について

Yahoo!スコアの作成・利用のページに「パートナー企業における利用と停止」が追記されました。企業向けの提供は7月からと発表されていますが、2018年10月から実証実験を行っていた、ランサーズ、HELLO CYCLING、クラウドワークス、TableCheckの4社、については既にユーザーが「同意」した場合にはスコアの提供が行われています。

https://accounts.yahoo.co.jp/privacy/optout/score

Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工
Yahoo!スコアの作成・利用のページ=筆者がキャプチャし画像を加工

パートナー企業のサービスをYahoo!IDの連携でログインする場合に以下の画像のように、スコアに関する同意確認が行われます。名前やメールアドレスなどと一括しての「同意」となっているので気付かなかった方もいるかもしれません。もし、スコア提供を拒否したい場合は「各アプリケーションでのデータ利用」から無効にすることができます。

ヤフー広報によると、連携時にスコアのみ提供しないという選択は無いとのことです。

Yahoo!ID連携時にスコアを提供したくない場合は、スコアの作成・利用のページで「オフ」にしてからID連携を行うとスコアが提供されないという説明が広報からありましたので訂正します。

パートナー企業でYahoo!IDを連携する際に同意が行われる=筆者がキャプチャし画像を加工
パートナー企業でYahoo!IDを連携する際に同意が行われる=筆者がキャプチャし画像を加工

また、リリースでスコアの活用事例が具体的に記載されるようになりましたのでリンクを掲載しておきます。

追記:パートナー企業での利用と停止についてとプレスリリースを6月8日に追記しました。ID連携時のスコア提供について6月10日に追記しました。

<Yahoo!スコアに関する問題点を下記記事にまとめ直しました>

ジャーナリスト

徳島新聞社で記者として、司法・警察、地方自治などを取材。NTTレゾナントで新サービス立ち上げや研究開発支援担当を経て、法政大学社会学部メディア社会学科。同大学院社会学研究科長。日本ジャーナリスト教育センター(JCEJ)代表運営委員。ソーシャルメディアによって変化する、メディアやジャーナリズムを取材、研究しています。著書に『フェイクニュースの生態系』『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』など。

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