1月18日、togetterに「NHKの英語学習の知見がたった500円に濃縮されたNHKラジオ英会話を使わないのはもったいなさすぎる」と題する記事が掲載された。

 NHKは、中学校までの基本的な英語学習を終えた高校生や、改めて英語を学んで話せるようになりたいと考えている人のために、英語を話すポイントをわかりやすく伝えるためのラジオ講座を開設している。放送時間は、月曜日から金曜日の午前6:45から7:00の15分。あわせて毎月495円(税込)で、テキストが発売されている。いまでは、スマホで音声を聴きながら、スクリプトも見られる。

 togetterのつぶやきによれば、とくにビジネス英会話の教材のクオリティの高さは、昔から英語業界では有名なほど高い。外語大の教授陣のお墨付きでもあるようだ。アメリカ大学留学の夢が叶った者までいる。格安&国内最強クラスの英会話教材と評するコメントもある。どんなものかと調べてみたが、たしかに相当クオリティが高い。これならば、英語学習を継続できそうである。言語学者の大西泰斗先生のメッセージが涙ものなので、紹介したい。

 人はいつでも自分が望むように変わることができる、と私は思います。特に学習においては。自宅で学ぶ機会が増えたみなさんにお願いしたいのは、今まで自分で足りないと思っていたこと、自分に欠けていた力を、この機会に集中して補ってもらいたいということです。

 もしみなさんが「英語を話したい」「英語力が足りない」と思っているのなら、潤沢に時間があるこの機会を逃さず「変わって」ください。NHK語学には、みなさんの英語力が大きく「変わる」ためのあらゆる教材が揃っています。やる気になれば「変わる」ことができる、のです。

 人が変わる重要な転機は、友達と楽しく過ごしているときよりも孤独に耐えながらそれでも前を向こうと決心したときに生まれます。しっかりと努力して休み明けに素晴らしく変身を遂げたみなさんを級友たちに見せてあげてください。

 応援しています。

 そう、人はいかなる環境においても、自分次第で変わることができる。放送やインターネットが普及したおかげで、僻地に住む者や貧しい者のために学習環境が整えられ、充実した人生を送ることができるようになった。だが、少なからぬ人は、その事実に気づいていない。その理由は、気づくきっかけが得られなかったことによるのである。

NHKは「営業」が下手

 1月3日の弁護士ドットコムの記事によれば、NHKの営業経費のうち、訪問員にかかる費用は約300億円である。しかし現在、NHKの訪問員は、多くの人びとの嫌われ者である。いまのやり方では、契約を「押し売り」しているように感じられるからだ。ようするにNHKは、自社にネガティブな印象をもつ国民をつくる施策に対して、年に300億円も支払っているのである。

 そのためNHKは、訪問によらない営業活動の拡大を打ち出している。全日本放送受信料労働組合の勝木吐夢書記長は、「ごまかしや脅し」による営業に対して、批判的なコメントを残している。NHKの訪問員の営業スタイルについては、よくご存じのようだ。しかしどうやら、「NHKは不要」と考える人に「真摯かつ繰り返し、受信料の必要性を説く訪問営業」については、書記長は肯定しているようである。

 それでは考えてほしい。豊かな放送文化を創造するために公共放送は必要なのだと、NHKは訴える。しかし例えば、コピー機の営業は、豊かなドキュメント文化の創造のために必要だから、コピー機を買ってくれなどと、顧客に訴えるであろうか。あるいは、利用によるメリットも理解していないのに、国の定めた義務だからコピー機を買えなどと言われたら、顧客はどのような気分になるであろうか。顧客にとって、文化の維持のために金を払う必然性はない。

一方でNHKは、特定の勢力、団体の意向に左右されない、公正で質の高い番組や、社会的に不可欠な教育・福祉番組をお届けすることを目指している。そして実際に、NHKの番組コンテンツの質は、国民に高く評価されている。そうであれば、国民一人ひとりに有益なコンテンツを配信していること、とりわけ教育や福祉の番組には力を入れており、視聴することが役に立つのであると、訴えかけることが必要である。実際に価値を認めてもらったときに、晴れて契約を結んで頂くようにと、活動方針を変えるのである。

 同様のことは、すでに過去の記事の中で書いている。何やかんやと義務化することを主張したり、安易に受信料を下げたりする前に、NHKは営業の体制と手法を変えることから始めるべきなのである。視聴者にとって、数万円の価値があるものに支払う2170円は、破格に安い。反対に、視聴しないものに支払う2170円は、収奪としかみなされない。

NHKの営業の使命を問う

 多くの企業において、営業はたんに金銭的な利益を上げることが仕事と思われている。あるいは、NHKの訪問員のように、一件いくらの歩合によって高い収入を得ることを目指して、営業の仕事に就く者がみられる。

 筆者は問いたい。たんに数字を上げるばかりの仕事を選んで、心から満足することができるのか。顧客を金づるとばかり思い、脅したり、ごまかしたりして金銭を稼ぐ日々に、誇りをもつことができるであろうか。それよりも、人びとの支えとなり、感謝の気持ちとしてお金をもらうような仕事についたほうが、ずっとよい。そのほうが、充実した人生を送ることができる。

 NHKの番組には、たしかに人びとの喜びを創造し、あるいは人生さえも変えてしまうような、有益なコンテンツが存在する。それらのコンテンツを、ラジオもテレビもひっくるめて、視聴者一人ひとりの要求に沿った形で紹介していけば、訪問員に会ってみようという気持ちにもなるであろう。そのときNHKの訪問員は、番組を通して視聴者の生活を支援するための、アドバイザーへと変わるのである。

 訪問員の皆さんにおすすめしたいのは、例えば家族構成や興味・関心を踏まえて、視聴者ごとに将来像を踏まえた学習プランを提示する仕掛けだ。個人にせよ企業にせよ、あるべき姿と現状とが乖離している場合、そこには問題が生じている。NHKは、その問題を解決するコンテンツを提供しているのだと、訴えるのである。取り扱う商材の価値を気づかせることから、顧客の満足は生み出される。

 そのような営業プロセスを実現するためには、やはりスクランブルをかけることが必要である。つまり、一定の無料期間の後は、受信料を支払わない人には観られなくするのである。価値に見合うコンテンツが提供されるとき、人は自ずとお金を支払う。普段から視聴しているのに、受信料を支払わない人がいるのであれば、その人は泥棒と同じである。

 とはいえ、NHKには防災・減災報道という、災害対策基本法で定められた使命がある。この部分は、国民の生命を保障するために必要であるから、義務として受信料を徴収してもよいであろう。かくしてスクランブル化する場合は、一律の安い基本料に加えて、個々の視聴したいコンテンツのカテゴリごとに、受信料を徴収するのである。このような制度こそ、公共放送の使命に合致した、すべての国民に公平な制度といえるであろう。

 営業の仕事は、もの売りではない。ものを受け取るべき人のために、有意義な情報や知見を提供し、気づきを与えることである。なるほどと納得してもらったとき、顧客は契約を結び、金銭を支払う。営業とは、ものの価値と顧客の満足とをつなぐための、架け橋となる仕事なのである。