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コロナ不安が子供の夢を奪っている 不安を解消して前向きに生きるステップ

遠藤司皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー
(提供:アフロ)

 11月8日、京都新聞に「コロナ禍で将来に不安?「夢や目標ある」小6が大幅減少 滋賀県教委調査、学習意欲は向上」と題する記事が掲載された。

 滋賀県教育委員会が行った、4月の全国学力・学習状況調査によれば「将来の夢や目標を持っている」小学6年生の割合は、55.3%。昨年度の63.2%に比べて、7.9%も減少した。これまでも減少傾向だったが、減少幅の平均は1.7%。ここにきて「夢や目標を持っている」子供は、大きく減少したようである。

 おそらく原因は、今回のコロナ騒動であろう。しかし小学6年生が高校を卒業するまでには、あと7年近くもある。それまでにコロナは沈静化する可能性が高いはずなのに、子供たちの夢や目標を奪ってしまうのは、どういうわけか。滋賀県教委がいうように、子供は社会の不安を敏感に察知する傾向がある。県教委は、普段の学習で自己成長が感じられるようなきっかけづくりを意識しながら、キャリア教育を進めたいというが、それとともに、やるべきことがあるようだ。

 すなわち、子供たちは不安を解消する方法を知らないのである。その方法について、当記事では概説することにしたい。

不安の対象をみえる化する

 子供たちが夢や目標をもてないのは、まさしく将来に対して「不安」だからである。

 不安は恐れの感情に含まれるが、これと似たような感情に、恐怖がある。後者は、対象がはっきりしているときに抱かれるが、前者は、はっきりしないときに抱かれる。よって、猛獣が不安だとは言わない。人間に危害を加えることが予見される猛獣に対して抱かれるのは、恐怖である。同様に、将来が恐怖とは言わない。曖昧で実体のない将来に対して抱くのは、不安である。

 子供たちは、「将来」とかいう実体のない、漠然としたものに対して、不安を覚えるのである。あるいは、それが漠然としているがゆえに、具体的な目標も、はかなきものである夢すらも、抱くことができなくなる。そして、コロナによる社会の混乱、あるいは親や教師による怯えの態度が、さらにその傾向を強めている。

 ゆえにまた、人が前向きに対処することが可能なのは、すべて実体のあるものに限られる。そうであれば、子供であれ大人であれ、不安そのものは解消することが出来ない。解消できるのは、実体のあるものに対して抱かれる恐怖であり、その方法は、恐怖を呼び起こす原因を、取り除くことである。ようするに、不安の対象を実体化させて、それに適切に対処することが、不安を取り除くための方法である。

 昔、何かのテレビ番組で、動物園でライオンを目にした土佐犬の横綱が、一目散に逃げだした映像を観た。この理由は、自分よりも明らかに戦闘力が高いライオンに対し、恐怖を覚えたからである。一方で人間の場合、たとえ幼児であろうとも、そのようなことはない。ライオンには、鉄で囲まれた強靭な檻を突破することができないことを、周囲の大人の様子を見て、察知するからである。

 コロナや将来という実体がみえないものに関しても、同じように対処すればよい。つまり、コロナなどは手洗い、うがいを徹底し、普段からマスクを着けていれば、およそ罹患することはないということを、科学的見地から伝えることである。また、たとえ罹患したとしても、致死率は低い。確認された新型コロナウィルスの国内感染者10.7万人のうち、死亡者数は1,815人である(11月8日現在)。

 とはいえ、70歳以上の高齢者に関しては、致死率は大幅に高くなる。よって対処方法は、なるべく家に引き込もることとなろう。それでは買い物はどうするのか。この場合、Amazonなどのネット通販を教えてやるとよい。受け取り時はマスクを着け、手洗い等をお忘れなく。

 子供たちにも、新型コロナウィルスという実体のあるものは、檻の中に入れて対策が可能だと、教えてやればよいのである。その観点からみれば、今回のコロナ騒動は、子供たちに対する不安への対処の方法を教育する機会とみなすこともできよう。コロナは問題ではなく、あくまでも現象である。それを問題と捉えるか機会と捉えるかは、人の解釈次第なのである。

 来たるべき将来のほうにも目を向けよう。AIやロボットなどという英語やカタカナ語で表現される、得体の知れないものによって大きく影響を受ける「将来」は、どうやって対策を練ればよいのか。簡単である。それらのテクノロジーの進展に関する知識を、与えてやればよいだけだ。具体的には、大人が率先して新興テクノロジーを学び、子供たちに教えてやるのである。そうして、いかなる将来が訪れるのかを学習させ、対処可能と認識させるのである。

 そもそも、AIやロボットなどのテクノロジーは、可能性のかたまりである。人間から面倒な仕事を取り除き、誤った判断をしないようにと助言を与え、前向きに生きることを可能にする、人類の叡智である。これらを利用するか、それとも従えられるかは、当人の姿勢次第だ。だからこそ、小さいころから子供たちには、それらのテクノロジーに慣れてもらう必要がある。危険どころか、有益なものなのだということを、わかってもらうのである。

 以上が、子供たちに夢や目標をもたせる方法だ。つまりキャリア教育には、不安を恐怖へと変換し、払拭するステップが必要なのである。したがって大人は、変化を起こす様々な要因に関して、知識を習得する努力を怠ってはならない。子供が不安を覚えるのは、すべて大人たちの怠慢によるのである。

考える習慣を身につける

 同様のことは「日本人の7割以上が「何かに不安」だが、心配するだけムダっぽい」の中でも書いた。健全な恐れの感情は、迅速な危険回避のためには重要である。しかし問題は、それらの感情が行き過ぎたときに、人を誤った行動へと導いてしまうことだ。衝動的に動いてしまったり、パニックに陥って、身動きが取れなくなったりするのである。今回のコロナ騒動は、そういう人間の性質が起こしたものといえる。

 シンシナティ大学のロバート・リーヒは、心配性の人に対して、何が心配なのか、この先何が起こるのかについて、二週間記録してもらった。すると、心配ごとの85%において、実際には「よいこと」が起こった。さらには、悪いことが生じた残りの15%でも、そのうち79%は、予想よりもよい結果が生じている。すなわち、心配ごとのうち97%が、とり越し苦労なのである。

 子供たちを将来に悲観させないようにするには、不安を呼び起こす得体の知れないものの実体を、明らかにすることなのである。原因を調べ、何が問題となるのかを把握し、それを解決する方法を考えさせるのである。そのような習慣が身につけば、いかなる事態が訪れようと、対処の手段を選択することができるようになる。

皇學館大学特別招聘教授 SPEC&Company パートナー

1981年、山梨県生まれ。MITテクノロジーレビューのアンバサダー歴任。富士ゼロックス、ガートナー、皇學館大学准教授、経営コンサル会社の執行役員を経て、現在。複数の団体の理事や役員等を務めつつ、実践的な経営手法の開発に勤しむ。また、複数回に渡り政府機関等に政策提言を実施。主な専門は事業創造、経営思想。著書に『正統のドラッカー イノベーションと保守主義』『正統のドラッカー 古来の自由とマネジメント』『創造力はこうやって鍛える』『ビビリ改善ハンドブック』『「日本的経営」の誤解』など。同志社大学大学院法学研究科博士前期課程修了。

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