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東京地検が起訴したN国党首の公訴事実

江川紹子ジャーナリスト・神奈川大学特任教授
(写真:西村尚己/アフロ)

 東京地検刑事部は4月9日、NHKから国民を守る党(N国)の立花孝志党首(52)を脅迫、不正競争防止法違反、威力業務妨害の罪で起訴した。立花被告は、昨年4月の統一地方選にN国公認で当選し、その後同党を脱退した東京都中央区議を脅迫した疑いで昨年10月に警視庁から書類送検され、さらに、NHK受信料の契約者情報を不正に取得し、それをインターネット上に拡散させると脅してNHKの業務を妨害した容疑でも、今月7日に書類送検されていた。

 立花被告は、不正競争防止法違反の起訴事実の当時、立花被告は参議院議員だった。これまでに、脅迫と受信料情報の不正入手に関しては無罪を主張すると発言している。

 同地検は、NHKの受信料の契約・収納業務の委託先会社の元社員も不正競争防止法違反の罪で起訴した。

 2人の起訴事実の要旨は次の通り。

【公訴事実の要旨】

第1 被告人立花は、令和元年6月29日に同党を脱退した被害者A (当時25歳)を脅迫しようと考え、同年7月3日午前0時57分頃から同日午前2時41分頃までの間、東京都千代田区内において、携帯電話機を使用して、被害者Aが使用する携帯電話機宛てに、

「今からお前が議員辞めるまで徹底的にYouTubeで叩き続けるから覚悟しておけよ!」

などと記載したショートメールを送信した上、動画投稿サイトYouTubeに、

「こいつはもうほんと許しません。」

「俺、もう許さないですからね。親父の方は、もう先が無いからあれだけど、Aは、これからもね徹底的に叩き続けますから。俺、奥さん、この人、この子のお母さんも彼女も知ってますよ。徹底的にこいつの人生、僕が潰しに行きますからね。」

「A親子、特に息子、覚悟しとけ。お前ら許さんぞボケ、俺どんだけ怒ってるか分かってるか。」

「徹底的にしばくからな。」

などと発言する様子を撮影した動画を投稿して不特定多数の者が閲覧可能な状態にするとともに、被害者Aが使用する会員制交流サイトのアカウント宛てに、

「おまえ、中央区で歩けないくらいYouTubeでディスりまくり続けるからな!」

などと記載したメッセージ及び前記YouTubeに投稿された同動画のリンクを送信し、さらに、前記YouTubeにおける同動画のタイトル欄に、同人の住所及び電話番号を入力して不特定多数の者が閲覧可能な状態にし、同日午前7時頃から同日午後6時頃までの間、東京都中央区内等において、被害者Aに順次同動画等を閲覧させて了知させ、同人及びその親族の生命、身体、名誉等に危害を加える旨告知して、脅迫し

第2 被告人両名は、共謀の上、不正の利益を得るとともに、日本放送協会に損害を加える目的で、営業秘密の管理に係る任務に背き、同年9月14日午前11時19分頃、東京都杉並区内において、被告人高久において、日本放送協会から前記株式会社Xに貸与された業務用携帯端末に記録された受信契約者等情報50件(以下「本件情報」という。)を同携帯端末の画面に表示させ、被告人立花において、これをビデオカメラで撮影し、その複製を作成する方法で、日本放送協会の営業秘密を領得し

第3 被告人立花は、同年11月19日午後1時20分頃、東京都渋谷区内路上において、携帯電話機を使用して日本放送協会に電話をかけ、応対した日本放送協会職員Bに対し、

「NHKさんが僕にくれた個人情報をまき散らしていいかな。」

「NHKさんから預かっている個人情報を社会、世間に拡散すると言ってるんですよ。」

「東京都世田谷区のエリアの人の個人情報を私は、NHKが委託した会社の社員から預かっております。映像もあります。住所やお名前、どこの金融機関でNHKのお金を払っているのか、そういった情報まであります。」

「今からインターネット上で、個人情報保護法違反をします。」

などと申し向けるとともに、同時にその内容を同路上に駐車した街頭宜伝車の拡声器を使用し、不特定多数の日本放送協会職員に対し、了知させ、同日午後1時32分頃から同日午後1時57分頃までの間同区内において、日本放送協会職員Cらに対し、

「私のところに個人情報が来ていますよね。」

「あれ、出したらまずいんでしょ。」

「俺会長と話したい。」

「やっぱり個人情報出すってのはこちらも犯罪になりますからね。」

「14日以内に何のリアクションがないようでしたら先ほどのこちらの人質となっている個人情報を拡散します。」

などと申し向け、さらに、同日頃東京都内又はその周辺において、前記YouTubeに、前記第2記載の撮影に係る動画の一部に修正を加えたもの(以下「本件動画」という。)を

「国会議員がNHKから個人情報をもらっている証拠動画1 2月4日までにNHKから連絡がない場合は、モザイクをはずして、個人情報を公開します。」

とのタイトルを付して投稿して不特定多数の者が閲覧可能な状態にし、同年11月20日頃、同区内において、前記日本放送協会職員Cらに本件動画を閲覧させて了知させ、同人らに本件情報の公開・拡散防止に向けた対応、本件情報に含まれる受信契約者等に対する訪問謝罪等を行わせるなどして、日本放送協会の正常な業務の遂行に支障を生じさせ、もって威力を用いて人の業務を妨害したものである。

ジャーナリスト・神奈川大学特任教授

神奈川新聞記者を経てフリーランス。司法、政治、災害、教育、カルト、音楽など関心分野は様々です。2020年4月から神奈川大学国際日本学部の特任教授を務め、カルト問題やメディア論を教えています。

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