【PC遠隔操作事件】弁護側土壇場の混乱。鑑定の証拠請求を急遽取りやめに…

PC遠隔操作事件の片山祐輔被告について、弁護側の依頼で行われた精神鑑定の結果が、急遽証拠請求されないことになり、鑑定人の尋問もとりやめることが分かった。

10月8日の公判後に記者会見する佐藤弁護士
10月8日の公判後に記者会見する佐藤弁護士

片山被告が自作自演の「真犯人メール」を送ったことが判明し、保釈を取り消されて以降、弁護側は「なぜ事件を起こしたかについて専門家の心理分析が必要だ。片山さんの『心の闇』の解明がなければ、事件の本質は分からない」(佐藤博史主任弁護人)と繰り返し主張してきた。そして、臨床心理士の長谷川博一・こころぎふ臨床心理センター長を鑑定人として、裁判所の職権による精神鑑定を行うよう、強く求めてきた。正式な鑑定が行われない場合は、それを理由に控訴も辞さない、と公言するほど、長谷川鑑定を重視していた。しかし、8月に東京地裁(大野勝則裁判長)は、裁判所としての鑑定は行わないことを決めた。その際、佐藤弁護士は「鑑定を行わなければ事件の本質は分からない」などとして裁判所の判断を強く批判している。

その後も、弁護側は長谷川氏に弁護側鑑定を依頼。長谷川氏は東京拘置所に在監中の被告人との面会を続け、専門的な分析を行ってきた。鑑定書も作成した。当初、長谷川氏の証人尋問は10月17日に行われる予定だったが、弁護側の事情で、11月4日になった。ところが、その直前になって、鑑定書の証拠請求をとりやめる通告が長谷川氏側になされた、という。

なぜ、このような事態になったのだろうか。

弁護団の対応を受けて、長谷川氏はツイッターで「職権発動の本鑑定でない限り、真実を書けば書くほどその鑑定書は依頼主によって破棄される。依頼主のニーズに沿ったものでなければ、そうなる運命」とつぶやいた。さらに、「葛藤している被告に、いくら弁護方針だからと言って『虚偽』のほうを誘導して言わせるのはよくないと思う」と、弁護団の方針に疑問を呈している。

佐藤弁護士に鑑定書の証拠申請取りやめの理由を問い合わせたが、「お答えできません。何故、片山さんのプライバシーに遠慮なく、切り込もうとされるのか、まったく理解できません」などとして、回答は得られなかった。なお、江川は、片山被告の「プライバシーに遠慮なく、切り込もう」としているわけではなく、佐藤弁護士自身が記者会見などで真相解明には長谷川鑑定が必須であると盛んに強調していたのに、それを突然、とりやめにした理由を尋ねただけなのだが…。

このところの裁判で、弁護側は、被告人質問で片山被告の反省や謝罪の言葉を引き出してきた。4日の裁判では最後の被告人質問が行われるが、ここでも反省と謝罪が強調されることになろう。被告人の反省の深まり方について、悩んでいる弁護人もいたが、厳しい判決も予想される中、刑の軽減を求めるには、反省の態度を強調するしかない、弁護側の苦しい事情がうかがえる。被告人が未だ反省の途上にある現実を踏まえて、その原因を分析し、更生に向けてのアドバイスをしてきた長谷川氏の指摘が、そうした弁護方針には合わなかった可能性がある。

ただ、通常の事件では、弁護人が弁護側証人申請など、弁護側の立証に関して公表する前に、鑑定人の意見を充分に聞き、打ち合わせを重ねているのが普通。土壇場に鑑定の証拠申請をとりやめるというどたばたぶりからは、弁護側が鑑定人とのコミュニケーションを欠いていたのではないか、対外発信の前に弁護団内部での議論が充分果たされてきたのか、という疑問を禁じ得ない。

長谷川氏は、「刑事裁判は真実を追求する場と言うには程遠い」ともツイートしている。一般的には、「真実」より被告人の裁判上の「利益」(と弁護人が考えることがら)を優先するのは、弁護人としてありうる選択ではある。とはいえ、片山被告の弁護団は、これまで長谷川氏の鑑定が事件の「真相」を明らかにするために必要であると、再三にわたり積極的に訴えてきた。それだけに、土壇場になっての今回の判断についての弁護団としての説明が注目される。弁護団は、4日の裁判の後に記者会見を開く予定だ。