【2020ドラフト候補】指名漏れの悔しさをバネに!打率4割超(OPS1超)、小山一樹の驚異的な進化

今年こそはドラフト指名をと意気込む小山一樹捕手(兵庫ブルーサンダーズ)

■ドラフト指名漏れからの切り替え

とてつもない数字を記録している小山一樹選手
とてつもない数字を記録している小山一樹選手

 打率.444、出塁率.516、長打率.574、OPS1.090。とてつもない数字だ。

 関西独立リーグ・兵庫ブルーサンダーズの正捕手、小山一樹選手の今季9月まで消化した時点の打撃成績である。

 NPB球団の入団テストや頭部のけがなどで4試合抜けたが、それ以外はすべて「4番・キャッチャー」として出場し、チームを牽引してきた。

 しかし、これだけの数字を刻んでもなお、「まだまだです」と上を向く。圧倒的な数字を残さねばならないわけが、小山選手にはあるのだ。

指名漏れに涙を飲んだ
指名漏れに涙を飲んだ

 昨年はNPB数球団のスカウトが熱心に訪れ、一定の評価を得ていた。もちろん調査書ももらっていた。

 ドラフト当日、三田市内のショッピングセンターで開催されたパブリックビューイングには、チームメイトのほかファンや知り合いも大勢かけつけてくれた。祈るような気持ちでドラフト会議を中継するテレビ画面に見入った。

 しかし、「小山一樹」の名前はコールされることはなく、一気に失意のどん底に突き落とされた。

 指名漏れ―だ。

悔しかった…
悔しかった…

 「悔しかった…。一番はじめに、悔しいっていう気持ちがきた」。

 自分の力のなさを痛感させられ、もっとやれることがあったのではないかという思いが押し寄せてきた。

 しばらくは何も手につかなかった。チームの練習ももうなかったので、数日は「ボーッと過ごした」と体をゆっくり休めた。

 やがて「来年こそ、けがもなく、誰もに認められるように」と気持ちが切り替わり、「一から始めよう」とスイッチが入った。悔しさは胸の奥にそっとしまって…。

昨年は肩が完治していなかった
昨年は肩が完治していなかった
連戦に耐えられなかった
連戦に耐えられなかった

 「プロの若手捕手と比べても引けを取らない」と、その力を高く評価していた前監督の山崎章弘氏(現読売ジャイアンツ巡回コーチ)は、“敗因”に肩の故障を挙げた。

 大学時代に肩の痛みを訴えた小山選手は、完全に治してプロを目指そうと退学した。自身で調べて病院を回り、大学時代の診察では判明しなかった診断名やリハビリ法にもたどり着いた。

 昨年はまだリハビリ途上だった。シーズン中も連戦などで酷使すると度々不調に悩まされたため、監督もファーストや指名打者で起用するなど配慮してくれた。だが、スカウトの目はごまかせなかった。

 肩のコンディショニング不良…それが、どうやら指名を回避させたようだった。

司令塔
司令塔

 そこで、まずは肩を完治させること。そして自身が感じた「攻撃面も守備面も全然力不足だった」という技術的なところのレベルアップを誓った。

 大学4年生の歳を迎える。大学生のドラフト候補と渡り合っても負けないだけの力が必要だ。

 「絶対に、なにがなんでもプロに行くんだ」という鬼気迫るほどの覚悟を固めた。

■肩は完全に癒え、強さを取り戻した

開幕が遅れたことが追い風に
開幕が遅れたことが追い風に
開幕時には肩は完全に治っていた
開幕時には肩は完全に治っていた

 まずは肩のリハビリだ。メニューは多岐にわたり、すべてをこなすのに連日3時間は要した。それでも地道に取り組み、ようやく4月ごろに「大丈夫かな」と手応えを感じ始めた。そのころにはリハビリメニューだけでなく、しっかりと投げることもできるようになっていた。

 そこへコロナ禍による開幕延期だ。2カ月遅れは小山選手にとって追い風となった。

 「開幕が遅れるのはプロ野球もBCや四国もそうで、僕らだけじゃないから。逆にありがたいというか、100%にもっていける時間があるなととらえられた」。

 さらに強化するための時間の猶予が与えられたことで、6月13日は万全の状態で開幕を迎えることができた。

 そして、ここから小山選手の快進撃が始まる。昨年も打率3割を超えたが、今年はそれとは比較にならない成績だ。月別に見ても安定…いや、どんどん上昇しているのがわかる。

 6月 打率.222・出塁率.385・長打率.333・OPS 0.718

 7月 打率.417・出塁率.462・長打率.500・OPS 0.962

 8月 打率.526・出塁率.625・長打率.684・OPS 1.309

 9月 打率.500・出塁率.500・長打率.643・OPS 1.143

 通算 打率.444・出塁率.516・長打率.574・OPS 1.090

■進化の裏にある3つの取り組み

1つめは自己分析
1つめは自己分析
自身の動画を見て研究も
自身の動画を見て研究も

 要因はいくつかあるという。まず1つめは自己分析だ。

 「1試合1試合の成績に満足しないというか、去年だったら『今日は打てた』『今日は打てなかった』って、ただただ感想で終わっていた。でも今年は『なんで打てたのか』『どの球を打てたのか』『なんで追い込まれてから、あそこでヒットが打てたのか』って、自分なりに分析ができている」。

 さらに撮影してもらった動画を見ながら、いいときの打撃とそうでないときの打撃を見比べ、何がよくないのかをその都度しっかり把握できるようになった。それが安定した結果に繋がっている。

これまでは「右方向を意識しているふう」だった
これまでは「右方向を意識しているふう」だった

 2つ目は右方向への意識だ。

 「今年は右方向を意識しだしてから、すごくよくなったと感じている。長打も増えるようになった」。

 昨年までも指導者からは言われていたが、今振り返ると「右方向を意識してるふうだった(笑)」と、実際にはできていなかったという。それがなぜ今年はできるようになったのか。

幅が広がった
幅が広がった

 「やっぱり外の変化球が弱いなと自分で感じていて、どうしたら打てるかなって考えたときに引っ張るだけじゃダメだなと。食らいつくじゃないけど、そういう打撃もできないと幅が広がらないなと思って」。

 さらには、たまたま見た動画サイトも後押しした。

 「筒香(嘉智)選手が左方向にホームランを打ちだしてから、打率とホームラン数が上がったというのを見て、より意識するようになった」。

 たしかに今年の小山選手のヒット方向の内訳は左翼から左中間が54%、中堅から右方向は46%とほぼ変わらない。バッティング練習から徹底するようになり、逆に引っ張れるようにもなったと語る。

欣勝寺で必勝祈願
欣勝寺で必勝祈願

 3つめは配球の読みだ。キャッチャーというポジションの特性もあるのだろうが、配球を読みながら、打席で駆け引きをしているという。

 「おっつけてファウルが打てるようになりだしてから、簡単に三振しないぞっていう心の余裕ができるようになった。2ストライク追い込まれてからのほうが、逆にゆとりを持って入れているような気がする」。

 自身でカウントを整えられ、打者有利に運べるようになってきたのだ。それもあって三振が極端に少なく、打席数に対する三振率は9%である。

■肩のコンディショニングと体のメンテナンスもバッチリ

必勝祈願で絵馬を書いた
必勝祈願で絵馬を書いた

 そして、肩の状態の良さも打撃に好影響を与えている。

 「やっぱり肩の不安がないので、打撃に集中できている。去年はずっと肩が不安だったんで、投げられる日は打撃中も考えなくてよかったけど、痛いときは…それを言い訳にはできないけど、多少は考えてしまってたんで」。

 なんの心配もなく思いきりプレーできる喜びを感じる日々だ。

書いた絵馬はこちら。野球のボールの絵がかわいい
書いた絵馬はこちら。野球のボールの絵がかわいい

 完治した現在も、肩のメニューは自宅で継続して取り組んでいる。痛みのあった昨年は3時間かかっていたが、今では1時間で消化できるという。

 「チューブトレーニングだったり、可動域を広げるような動き。しんどくはないけど、けっこう種類があるんで時間がかかる」。

 それでも試合のある日以外は毎日欠かさずやるのは、「やらないと不安で。去年の投げれんときの思いがあるから。ああなるのは嫌なんで、それならやったほうがいい」と、二度と苦しまないためだ。

 また、今年から橋本大祐監督が院長として施術する「だいすけ整骨院」が三田市に移転し、いつでも体のメンテナンスをしてもらえることも、コンディション維持に非常に役立っている。

■プロに近い選手とは・・・

スカウトの注目が高まっている
スカウトの注目が高まっている

 そんな小山選手に熱視線を送るNPB球団は日に日に増えている。先日はNPB球団のテストで高評価を得た。また関西独立リーグ選抜チームの一員として、先月は読売ジャイアンツ3軍千葉ロッテマリーンズのファームと試合を重ねてきた。

 「キャッチャーにおいて肩とかボールの強さだけなら、そんなに変わりはないかもしれないけど、ボールまでの速さだったり正確さだったり…そのへんはまだまだ全然足りないなと感じた」。

 同じくテストを受けた他の独立リーガーや対戦相手のNPB選手を見て、冷静に自身を省みた。守備だけでなく打撃でも課題は見つかった。

 「1球でとらえる能力かな。僕はしとめきれなかったのが多かった。打席の中で1球くらいはしとめられるボールが来るんで、それをファウルにしてしまっていた。ついていけないとかじゃなくて、1球でしとめないと勝負にならない」。

 結局、そこだ。その「1球」を打ち損じせず、安打にできるか。来月もまた東北楽天ゴールデンイーグルスのファームとの2連戦が予定されている。それをより意識し、集中して臨むつもりだ。

1球でとらえる
1球でとらえる

 立て続けにNPB球団との試合、そしてテストがあったことで、よりプロ野球選手になるんだという気持ちが高まった。

 「課題がもう浮き彫りになってるんで。ここは大丈夫っていうところと、まだまだっていうところがハッキリ出てきた。その差がないのがいい選手だと思うし、その差ができるだけ少ないほうがプロに近い選手ってことになる」。

 冷静に自己分析できるからこそ、向上できる。少しでも差を埋めるべく、ここからさらに自己研鑽を積む。

■今年こそは最高の報告を

みんなに笑顔を届ける
みんなに笑顔を届ける

 昨年のドラフト会議の日、パブリックビューイングに駆けつけてくれた人々に深く謝意を表した小山選手。

 「一番はじめに悔しいっていう気持ちが来て、次にああいう誰でもが見られるような会を開いてくださった関係者の方々、親も含めて感謝の気持ちが出てきて…」。

 悔しくて悔しくてたまらない。しかし、そんな中でも自分の感情に流されることなく、周りに気を配ることができる。感謝することができる。それが小山一樹という男の人間性だ。

 今後の残り少ないシーズンで、自ら見出した課題を一つ一つ潰していく。そして10月26日、お世話になった人たちに、今年こそ心からの笑顔でいい報告をする。

小山 一樹(こやま かずき)*プロフィール】

1998年12月16日生(21歳)/兵庫県出身

180cm・85kg/右投右打/O型

済美高校→上武大学→兵庫ブルーサンダーズ(2019~)

(撮影はすべて筆者。数字はリーグおよび球団の公式記録、公式成績が公表されていないため、筆者の計算によるもの)

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