2019年 レギュラーシーズン終了、そしてプレーオフへ《BC・石川ミリオンスターズ》

レギュラーシーズンの最終戦で完勝した石川ミリオンスターズ

■前後期とも目標の「20勝」をクリア

最終戦後のミーティング
最終戦後のミーティング

 2019年、BCリーグ・レギュラーシーズンの全日程が終了。石川ミリオンスターズは9月8日の最終戦で「通期勝率2位」の強さを見せつけ、9-4と圧勝した。

 エース・永水豪投手は11勝5敗で白星締めし、この日は出番が訪れなかったがクローザー・矢鋪翼投手は13セーブで最多セーブに、神谷塁選手は43盗塁で盗塁王にそれぞれ輝いた。

三塁ランナーコーチを務める武田勝監督
三塁ランナーコーチを務める武田勝監督

 西地区5チーム中、前期は20勝14敗2分けで3位、後期は20勝13敗1分けで2位と、シーズン前の目標であった「20勝」は前後期とも達成した。

 前期は引き分けを挟んで7連勝が一度、後期にいたっては開幕から引き分けを挟んで8連勝とスタートダッシュに成功した。

 しかしずっと優勝争いに絡みながらも、最後の最後での5連敗が大きく響き、V逸した。

長谷川潤投手
長谷川潤投手

 「“信濃一強”という状態を続かせてしまったのは、ミリオンスターズを含めた4球団の力不足のせいだと思う」と悔しさを滲ませる武田勝監督北海道日本ハムファイターズ)。

 ただその中で、「ウチらしさは出ていた、前期も後期も」と非常に大きな手応えを掴んでいた。

 シーズン当初に掲げた「守りから攻撃に」という指針に、ナイン一丸となって取り組んだ。特に投手陣は永水豪、内田幸秀長谷川潤という3本柱がしっかりし、リードしたシチュエーションでは守護神・矢鋪翼が控えた。

■エースとクローザー

守護神・矢鋪翼投手
守護神・矢鋪翼投手

 今季の収穫として、まず「ミリオンスターズらしい勝ちパターンができた」ことを武田監督は挙げる。それはつまり、いかに守護神・矢鋪投手につなぐかということだ。

 矢鋪投手がセーブ王を獲得できたということは、しっかりとその形が確立されたということにほかならない。

 ただ、逆に言うと「負け方がハッキリしていた」と眉根を寄せる。

 「接戦で負けるというよりは、ピッチャー陣が打たれて試合が決まってしまう。矢鋪の準備もせずに…というね。負けるときはハッキリして負けるというのが多かった。少し疲れからウチらしい戦い方ができなかったっていうのが、今後の課題になってくる」。

エース・永水豪投手
エース・永水豪投手

 エースがリーグ4位タイとなる11勝を挙げたことも誇れる。中でもダントツの8完投は賞賛に値する奮闘だ。

 「永水は2ヶ月間ずっと完投してきてくれた疲れの反動というのが出た」と、終盤で3連敗した永水投手を思いやる。

 「より負けられない戦いが続く中で、初めての緊張感、エースとしての新しい感覚、その中で勝ち負けを味わった一年だったと思う。それは勝ち続けることより、本人にとって今後NPBに行くにあたっても大事なことだったと思う」。

負けたことで収穫があった
負けたことで収穫があった

 計算できるはずだった永水投手の終盤での敗戦は、チームとしては痛かったであろうが、それよりも武田監督は本人の成長にとってプラスになったと捉えている。

 「逆にそれがよかったって思ってほしい。エースとなると背負うものはもちろん大きいけど、それを乗り越えるとまた、その先も見えてくる。そういう課題が本人にも見えたんじゃないかと思う」。

■攻撃陣の進化

最終戦後の挨拶は真面目かと思いきや、やはり笑いをとる
最終戦後の挨拶は真面目かと思いきや、やはり笑いをとる

 一方、攻撃陣にも手応えが深まったシーズンだったという。

 「野手が各々どんな打順でも、また追い込まれても最低限の仕事ができるようになった。進塁打が打てるようになったり、常に相手の嫌がる野球ができるようになった」とうなずく。

 「いかに得点圏に進めるか。そうすることで相手ピッチャーにプレッシャーをかけられた。それがチーム一丸となってできるようになった。

 去年はただ振ってるだけとか、『できなかった、ヘコむ』の繰り返しだったけれど、それがバントにしても進塁打にしても細かな自己犠牲ができるようになった。

 選手たちも『野球をしてるな』っていうのを感じながらやれていたと思う」。

 打線が点でなく、しっかりと線として機能していた。

■正捕手の新たな一面を引き出す

右打ちもバントも自在な喜多亮太捕手
右打ちもバントも自在な喜多亮太捕手

 また、選手個々の能力を伸ばすことにも腐心した。

 “NPBにもっとも近い”と目される正捕手・喜多亮太選手については、8月14日から2番に据えた。それまでは6番以降の下位を打ってきた選手だ。

 その意図を武田監督はこう明かす。

 「喜多はキャッチャーとしては誰もが認めるくらい優れている。ただ打撃に関して、本当は右打ちがうまいのに引っ張ってしまったりとか、バントもうまいのに強引にゲッツーを打ってしまったりとか、チームプレーのバッティングができるのに前期はしていなかった。その制限をかけるために2番に置いた」。

打撃が守備に好影響をもたらす
打撃が守備に好影響をもたらす

 キャッチャーとしての良さを、打撃のミスで消してほしくないのだという。さらにはNPBスカウトに、これまで見せていなかった部分を見せることで評価を高めたいと考えたのだ。

 そしてそれはNPBに行ったとしても役に立つことだ。

 「見られているということを意識して、アイツにはちょっと変わってほしかった。肩も強いしインサイドワークもいい。打撃でミスったら守りにも影響する。逆にバントや進塁打でチームの勝利に貢献することで自信にもなるし、より守りにも集中できる」。

 実際、得点に絡むことで気分も乗り、リードも冴えたようだ。

■4番で完走した今村春輝選手

4番・今村春輝選手
4番・今村春輝選手

 今季、シーズンを通して4番に座り続けたのは今村春輝選手だ。武田監督は、打てなくても絶対に外さなかった。

 「打てなくてもずっと…という4番はいないでしょう。それもやはり選球眼がいいから。フォアボールが取れるので。打てなくてもアイツが4番にいてくれたのは大きい」。

 ほかの打順は組み替える中、打線の核であり続けた。それは周りの戦力が充実していた証しでもあるだろう。

喜多選手と今村選手
喜多選手と今村選手

 「初めてのBCリーグの中で、学生野球からすると経験したことのない疲れもあったと思う。1年の辛さを学べたというのは大きい。まずは経験の1年。本人もだけど、チームも我慢できた1年だった。彼も来年は余裕をもって打席に立ったり、守備のリズムができたりができる」。

 武田監督が語るとおり、今村選手の経験は自身にとってはもちろん、チームにとっても大きな収穫となった。

 「今季はチームでカバーし合えた。チーム全体の成長の意味合いがある」と、納得顔で総括した。

■信濃グランセローズと戦う地区チャンピオンシップ

いつも明るくチームを盛り上げる武田監督
いつも明るくチームを盛り上げる武田監督

 さて、レギュラーシーズンは終了したが、西地区の通期で勝率2位ということで今週末、前後期ともに優勝した信濃グランセローズとの戦いが待っている。

 石川はこの地区チャンピオンシップで3戦全勝すれば、東地区とのBCLチャンピオンシップに進出できる。つまりは1つも落とせないというわけだ。

 「負けたら終わりなので、いいピッチャーをどんどんつぎ込む。そして、やっぱり調子のいいバッターをどんどん入れていく。それしかもうないので。まずは初戦に勝つことしか先はないので、そこに全力を注ぐ」と武田監督。

ノック?いえ、フリーバッティングです(笑)
ノック?いえ、フリーバッティングです(笑)

 石川にとって信濃は前期3勝5敗、後期3勝5敗と西地区で唯一、負け越した相手だ。

 武田監督は「敵地なのでね。(開催球場の)中野ってあんまり勝ったイメージがない。やっとこないだ初めて勝った」と9月7日、0―3で4安打完封勝ちしたことをアドバンテージにしたいという。

 「あの1勝で自信つけてもらってね。あれがプレーオフのための1勝だと思って、そのまま4連勝する気持ちでやると、いい流れでいけると思う」。

 ポジティブなイメージで入れそうだ。

■信濃の強力な左3枚

 ただ、やはり信濃は強敵だ。

 「いい左ピッチャーが多いというのは武器だと思う。福地、佐渡、ギジェン。この3枚がしっかりしてるっていうのが、信濃の強さの秘訣。崩れないんでね」。

福地元春投手
福地元春投手

 福地元春投手(元横浜DeNAベイスターズ)は今季、21試合の登板でリーグ2位タイの13勝(2敗)、防御率は2.72(リーグ9位)だ。

 社会人以来5年ぶりに先発で回り、BCリーグで新境地を開いた。

 「あらためてコントロールだと思う。NPBではコントロールで苦しんでいたのが、モデルチェンジして成功した。NPBでは“遊び”がなかったから」と、武田監督もその変貌ぶりに驚く。

小林恵大選手
小林恵大選手

 対石川戦は4試合に投げて2勝1敗、防御率は2.84だ。

 福地投手に対して石川のチーム打率は.217とかなり低いが、その中でもっとも相性がいいのが入谷直登選手で.400だ。

 続いて小林恵大荒川顕人金山開の3選手がそれぞれ.333である。

佐渡俊太投手
佐渡俊太投手

 永水投手の明星大の1年後輩にあたる佐渡俊太投手は今季、16試合に登板して7勝4敗で防御率は2.14(リーグ5位)と好成績を収めている。

 「いいピッチャー。たぶん一番いいんじゃないかな、左で。クセもないしキレがいい。常に一回から七回、八回くらいまで淡々と投げ続ける。リズムを崩さずに。メンタル(が強い)なんでしょう」と、武田監督も舌を巻くルーキーだ。

安藤ケビン選手
安藤ケビン選手

 対石川戦は5試合に先発して3勝1敗、防御率は0.56だ。完封勝利を1つ記録している。

 チーム打率が0.198とがっつり抑え込まれている中、荒川選手が1.000、安藤ケビン選手が.750と大健闘し、喜多選手も.417、荒谷勇己選手も.333と相性のよさを見せる。

 トータルで見ると対信濃戦はケビン選手が.571、荒川選手が.400、荒谷選手が.333、喜多選手が.308と打率上位を誇る。

■絶対に負けられない

ミリオンスターズ投手陣
ミリオンスターズ投手陣

 永水投手は対信濃戦に5試合投げて2勝3敗、防御率は3.28だ。

 佐野悠太選手に.412、ネルソン・ペレス選手に.389、山本雄大選手に.353とレギュラーシーズンでは決して分が良くはなかったが、この“あとがない戦い”でギアを上げ、エースの意地を見せてもらいたい。

最後を締めるのは矢鋪投手
最後を締めるのは矢鋪投手

 矢鋪投手はシーズンでの対信濃戦は1試合のみだった。田島光選手に四球を1つ与えただけで、3選手を抑えて無失点で終えている。

 おそらくこの大一番でもいつもと変わらずニコニコと登場し、飄々と仕事をするだろう。

 矢鋪投手がフル回転できるような展開に持ち込みたいところだ。

 絶対に負けられない戦いに挑む石川ミリオンスターズナイン。

 このヒリヒリした戦いからきっと、とてつもなく大きなものを得るに違いない。

 信濃グランセローズ対石川ミリオンスターズの地区チャンピオンシップは9月14~16日、中野市営野球場にて13時プレーボールだ。

(撮影はすべて筆者)