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コロナ禍でもV字回復した「スシロー」が12月2日から破格のお値打ちフェアを行う狙いとは

千葉哲幸フードサービスジャーナリスト
「もう二度とできないほど、お値打ちの限界に挑戦した」という意味。(筆者撮影)

回転すし店の「スシロー」を傘下とする株式会社スシローグローバルホールディングスの2020年9月期が売上高2049億5700万円(対前期比2.9%増)と過去最高を記録した。この好調を支えたのはテークアウト需要を開拓したことで業績がV字回復したことが挙げられる。

そのスシローでは、これから年末年始にかけてのすしやテークアウトの思い切ったキャンペーンを行う。ちなみにスシローの店舗数は2020年9月末現在で国内559店舗(前年度比31店舗増)となっている。

「超」が付くお値打ち商品の限界に挑戦

このスシローを展開する株式会社あきんどシローは、11月30日に37期(2020年10月1日~2021年9月30日)のプロジェクト発表会を開催した。

ここで披露されたことは「Go To 超スシローPROJECT」を12月2日から(一部11月30日から)スタートすること(2021年2月末まで)。

同社代表、堀江陽氏はこう語った。

「このプロジェクトのイメージは『これまでのスシローを超える』ということ。もともと月2回キャンペーンを行っているが、それをさらに磨いていく。われわれのパートナーである全国の生産者と一緒になってこのコロナ禍を乗り切っていこうという構えで、多分これから二度とできないほどの思い切ったお値打ち商品になっている」

このプロジェクトで投入される商品は以下の通り。

第一弾では、まず「これまでにないネタ登場!」ということで、11月30日から「超大切り!寒ぶり」2カン100円(税別、以下同)。12月11日から「国産とらふぐ皮湯引き」2カン100円、「国産とらふぐ食べ比べ」2カン300円。次に「圧巻のフェア商品登場!」ということでは、12月2日から「濃厚うに包み」1カン100円、「本鮪とろ」1カン100円、「天然生車えび」1カン100円、「生キングサーモン」1カン100円、「炙り生キングサーモン」1カン100円を販売。

「100円の限界に挑戦」というキャッチコピーで、お値打ち感の高さを訴求。(筆者撮影)
「100円の限界に挑戦」というキャッチコピーで、お値打ち感の高さを訴求。(筆者撮影)

第二弾では、12月14日から「超大切り!真鯛」2カン150円、12月16日から「気仙沼フカヒレのにぎり」1カン300円、「倍とろ」(普通のとろの2倍のボリューム)1カン100円、「大切り生あわび」1カン150円。12月14日から、ふぐのにぎり・皮湯引き・アラの唐揚げの3種を盛り合わせた「国産とらふぐ3種盛り」480円を販売する。

これらに一貫していることは「お値打ち商品の限界に挑戦」ということだ。

さらに、第一弾、第二弾とネタ別に6カンずつ盛り込まれた持ち帰り商品も予定している(300円~750円)。これらの販促のためにテークアウトのCMをはじめて作成した。

今回のフェアに合わせて、同社としてははじめて「テークアウト」のCMを作成した。(筆者撮影)
今回のフェアに合わせて、同社としてははじめて「テークアウト」のCMを作成した。(筆者撮影)

堀江氏はこう語る。

「年末からお正月というと多くの方々が集まって、みんなでワイワイ言いながらおすしを食べるタイミングです。今年の場合は例年通りとはいかないかもしれませんが、テークアウトを強化することで、お店に来くることができなくても、お宅でスシローを楽しんでいただきたいということで、あえてこのタイミングで行うことにした」

この発表会ではオンラインでスシローに鮮魚を供給する生産者の中から3者が登場し、自分たちの魚に対する熱い想いと、スシローへの感謝を述べた。これまで生産者と膝を突き合わせて会話をし交流を深め、信頼関係をつくり上げてきたことから、今回のプロジェクトを発動することができたものと言えるだろう。

外食の存在意義を徹底することでテークアウト需要も狙う

スシローの客数の回復が早かったのは「非接触サービス」が充実していることも要因として挙げられる。これはコロナ禍以前から積極的に進めてきたことだ。

それはまず「自動案内」。お客が専用システムでチェックインすると、機械がお客を席まで案内してくれるもので、席は店内アナウンスで教えてくれる。待ち時間が発生する場合は、システムの近くにあるモニターに順番が表示される。

さらに「セルフレジ」。お客が食事を終えて、席で皿の数をカウントした後に渡される会計札(QRコード)をレジにかざすことによって無人で支払いができる。

また、店舗の中に「自動土産ロッカー」を順次導入している。これは、温度管理機能が整ったロッカーを使用しているもので、お客が「店内で予約」「電話ないしFAXで予約」または「アプリ・ネットで予約」すると、お客にメールでQRコードが届き、そのQRコードをかざすことによってロッカーから商品を取り出すというものだ。

堀江氏は今後の活動のポイントについて以下のように述べた。

「1つ目は外食の存在意義を徹底して追求していく。外食という非日常の価値を磨いていく。次に、2つ目はテークアウトの強化。アプリやメニューも進化させていくことに加えて、試験的に行ってきたサテライト店舗や自社デリバリーを推進していく。3つ目は未来に向けての設備投資。セルフレジは全店に入れている。今進めている自動土産ロッカーなどの非接触サービスを整えていく」

前期のV字回復を支えた要因をこれからより強く打ち出してく方針だ。

「外食の存在意義を徹底して追求することによって、さまざま可能性が切り開かれていくと」語る、あきんどスシロー代表の堀江陽氏。(筆者撮影)
「外食の存在意義を徹底して追求することによって、さまざま可能性が切り開かれていくと」語る、あきんどスシロー代表の堀江陽氏。(筆者撮影)

外食の感動を追求するため生産者と一貫して圧倒的なお値打ち商品をつくる。この商品力によって外食することに抵抗を感じている人にもテークアウトの利用動機を喚起していく。消費者の生活動線に寄り添う。非接触サービスを充実させる設備投資を行う。――このようなスシローの取り組みは、ウィズ・コロナ時代を生き抜いていく外食企業の在り方を示している。

フードサービスジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆、講演、書籍編集などを行う。

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