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「なし」ばかりが続き、今や四面楚歌! 支持率急落の岸田政権になすすべ「なし」!

安積明子政治ジャーナリスト
政権の防衛をどうする?(写真:つのだよしお/アフロ)

内閣支持率10ポイント減の衝撃!

 岸田政権には、いったいいくつの「なし」が続くのだろうか。11月6日に公表されたJNNの世論調査では、内閣支持率は前回比10.5ポイント減の29.1%まで下落した。不支持率は10.6ポイント増の68.4%で、いずれも過去最悪の数値を記録。「国民の人気なし、支持なし」が伺える。

 その大きな原因は11月2日に発表された、生活困窮家庭に対する1世帯7万円の追加支援と課税世帯に対して1人あたり4万円の減税を行うことを盛り込んだ経済対策だろう。通常なら支持率アップに寄与するはずの施策に対して、実に64%が「評価しない」と答えたからだ。

 この“減税政策”について岸田首相は、10月23日の所信表明で「国民の努力によってもたらされた成長による増収の増加分の一部を、公正かつ適正に還元する」としてアピールした。あてにしているのは最近の税収の上振れ傾向で、たとえば2022年度の税収は71.1兆円を超え、当初の見通しより6兆円ほど多かった。

岸田首相の減税案に閣内と党内、財務省まで“造反”か?

 しかし鈴木俊一財務大臣はこの“税収の上振れ”について、11月8日の衆院財務金融委員会で「政策的経費や国債償還に充てられてきた」と述べ、「減税の財源なし」と明言した。さらに自民党の宮澤洋一税制調査会長も、7日付けの日経新聞で岸田首相が主張する「税収増の還元」を否定した。閣内と党内から「なし」が出たわけだ。しかも宮澤氏は岸田首相の従兄でもある。

 だが減税施策は岸田首相の独断ではないと見るべきだろう。留意すべきは岸田首相の“懐刀”と言われる木原誠二前官房副長官が9月19日に出演した動画で、「減税やりゃいいんだよ」と発言したことだ。木原氏は同月13日の内閣改造でその職を外れたが、岸田首相に先んじた発言が注目された。

岸田首相に常に付き添ってきた木原氏
岸田首相に常に付き添ってきた木原氏写真:つのだよしお/アフロ

 また木原氏は9月13日に官房副長官を解任されて以降も、頻繁に官邸に出入りしていた。日経新聞が10月25日に、「改造後、茂木・麻生両氏に次ぐ7回」と報道したほどだ。

 これらを考えると、岸田首相の減税案は木原氏が関与していた可能性は高く、その背後に財務省の影が垣間見えるが、結果的に財務省が岸田内閣を見放したことになるだろう。

諦めムード漂う?

 さすがにこれではやりきれないということだろう。岸田首相が11月9日、記者団に対して「まずは経済対策、先送りできない課題ひとつひとつに一意専心取り組んでいく。それ以外のことは考えない」と述べ、年内の衆院解散総選挙を見送る意向を事実上表明した。岸田首相は2024年9月に予定される自民党総裁選に勝ち抜くため、その前に衆院選を行いたいという意向だが、高支持率が見込まれた広島サミット直後の6月には麻生太郎元首相らに阻止されたことがある。その後、内閣支持率は下落の一途で、とうとう2012年に自民党が政権を奪還して以来の数字にまで悪化した。岸田首相のその言葉には、首相の専断事項である解散権を行使できないもどかいさとともに、他になすすべがない総理大臣の孤独さえ漂っている。

 そして、水面下では密かに“岸田降ろし”が始まっているようだ。岸田首相が「解散諦め発言」をした9日夜、“非主流派”の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長、森山裕総務会長らが都内で会食し、意見交換したのだ。二階氏の「備忘録役」と言われる林幹雄元幹事長代理や二階派事務総長の武田良太元総務大臣も同席した。

非主流派の二階氏は、岸田降ろしを画策?
非主流派の二階氏は、岸田降ろしを画策?写真:ロイター/アフロ

 もっとも武田氏はこの日、インターネット番組に出演して「十分な経済対策を果たしていない状況で、岸田降ろしなんて言語同断」と述べたが、このままでは来年の総裁選で「挑戦者に有利になりやすい」と“岸田政権の終焉”の可能性についても言及した。

イチかバチか。それとも……

 内閣の低支持率が続く限り、岸田政権の出口が見えない状況だが、このまま年を越しても状況が好転する要素がない。唯一の頼みは「野党の政党支持率がおしなべて低いこと」だが、岸田首相としては総裁選前に衆院解散に打って出て、求心力を回復したいところだろう。

 しかしそれには、その前に党内で岸田降ろしが加速化する危険性もあり、自分で自分の首を絞めることにもなりかねない。野党から「検討使」と揶揄された岸田首相だが、政権の今後も「検討」するに終始するのだろうか。何も生み出さない「検討」の結果、「なし」が増えるばかりの岸田政権だが、国民にとって「将来の展望なし」という事態になるのなら、その前にさっさとご退場願いたい。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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