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【2023年 政治を憂う】~派閥のパーティー券をめぐる疑惑は終わらない

安積明子政治ジャーナリスト
年末の餅代は支給されず…(写真:アフロ)

派閥の事務所にガサ入れ

 まったく2023年がこのような1年になるとは、昨年の今頃は誰も想像すらしなかったはずだ。たとえば前年に始まったウクライナ動乱が収まる気配がないまま、10月にはガザ地区を支配するハマスがイスラエルに侵攻。こうして「世界最大の火薬庫」が付けられた。

 国内においては、派閥のパーティー券をめぐる「裏金問題」が発覚した。きっかけは昨年11月のしんぶん赤旗の報道で、神戸学院大学の上脇博之教授がさらに調査を行い、関与した派閥を次々と刑事告発に踏み切った。

 そして第212回臨時国会が閉会した後の12月19日、東京地検特捜部は清和会(安倍派)と志帥会(二階派)の派閥事務所を家宅捜索した。もし現職の国会議員を逮捕するなら、来年1月に通常国会が開催されるまでに限られる。国会議員は憲法で不逮捕特権が保障されており、いったん通常国会が開会されてしまうと逮捕許諾請求がなされない限り、少なくとも150日間(延長がない場合)は検察は手出しできなくなるからだ。

 さらに注目すべきは、通常なら28日に「仕事納め」するはずの検察だが、29日に大野泰正参院議員の地元事務所と自宅を家宅捜索し、30日には西村康稔前経産相と下村博文元文科相に事情聴取した点だ。いずれも検察の本気度が伺える。

「政治とカネ」の問題は終わらない

 ロッキード事件にリクルート事件など、自民党内の「政治とカネ」の問題は非常に根深い。もっともその都度、法を改正するなど、国民に対しては「反省の意」を示してきたが、実際には「喉元過ぎれば熱さ忘れる」となっていたわけだ。何度も繰り返すその根源には、民主主義の歪が存在する。

 「今太閤」と呼ばれた田中角栄が権力を握ったのには、「8分の1の法則」の存在がある。国会の過半数を維持する政党は、その過半数を占める派閥に牛耳られる。すなわち、最高権力の地位に就くには、国会の8分の1を掌握すればいいということになる。

 その論理は形を変えて、現在にも通用している。すなわち多数のトップを占めれば、最高権力に最も近くなるという意味だ。

 自民党の派閥のパーティー券をめぐる裏金疑惑を東京地検特捜部が追っているのは、まさにその構図ではないか。カネと権力の流れは一致するため、カネの流れをたとっていけば、明確な権力の構図が見えてくるからだ。

「清和会は私が作った」

 実際に2022年の清和会のパーティーで、森喜朗元首相は「(清和会は)私が作った」と豪語。派閥のパーティー券のノルマを越える売上のキックバックについても、森元首相が会長を務めていた1998年に始まったと言われている。

 もっとも「神の国」発言や「えひめ丸」事故直後の手際の悪さなどによる自らの不人気がたたって、森元首相は在任1年ほどで首相の座を降りなければならなかったが、総裁選で都道府県票を1から3に増大させ、小泉純一郎首相誕生に大きく寄与した。

 以来、森元首相は清和会を牛耳り、キングメーカーを気取り続けた。派閥の会長になりたがった下村元文科大臣の希望を退け、「5人衆」を指名したのも森元首相だ。

 要するに清和会では、森元首相に覚えさえめでたければ、派閥の幹部になれるという仕組みが、ここで完成したことになる。とりわけ歴代最長の首相在任記録を有した安倍晋三元首相が昨年7月に凶弾に倒れて以来、森元首相の影響力はますます増大している。

国民とは無縁の権力決定システム

 その反面、きちんと会長を置かなくなった清和会は、所属議員の数こそ100名近くを擁して党内最多勢力となっていても、党内での影響力を相対的に弱めていった。内閣支持率が低下し、「岸田降ろし」の声が高まる中で、清和会から「ポスト岸田」の有力候補の名前が上がってこないことからも、それは見てとれる。

 政党とは別に派閥のヒエラルキーがあり、それに基づいて党の人事が選ばれ、さらに政権の陣営が決まるとしたら、それは民主的な方法とはいえないはずだ。検察には徹底した捜査を行い、問題の根源を明らかにしてもらいたい。そうでなければ凋落する一方の日本を、誰も止めることはできなくなる。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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