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東京で断絶した自公関係! しかし公明党関係者は「平沢と萩生田以外は人物本位で応援する」と断言した!

安積明子政治ジャーナリスト
山口代表が胸に秘める“第2弾”とは(写真:つのだよしお/アフロ)

次期衆議院選に向けて準備は進むが……

 公明党は石井啓一幹事長が5月25日に「東京での信頼関係は地に落ちた」と宣言し、自民党との関係断絶を宣言してから1か月余りが経過した。衆議院の6月解散は免れたものの、秋の政局は波乱含みだ。秘書への暴力事件で自民党の高野光二郎参議院議員が6月22日付けで辞任し、10月22日での参議院補欠選挙が決定したため、この日に衆議院選挙も行われるのではないかとの噂も流れている。

 岸田文雄首相と山口那津男代表は6月27日に官邸で面談し、次期衆議院選での協力関係を確認。その後に両党の幹事長と国対委員長が合意文書にサインしたが、これには東京は含まれていない。

 東京での自公関係は、決裂したままなのか。公明党の北側一雄副代表は29日の会見で、「東京でも協力関係を構築できるようにようになればいい」と述べたが、同党の石井啓一幹事長は翌30日に「それは北側氏の個人的感想」と打ち消した。

 だが山口代表は27日の合意を“第1弾”として、今後の展開に含みを残している。「今後の自民党の出方を見る」という意味なのか、またはそれ以上のものなのか。

関係修復を図ろうとする自民党

 これに対して自民党側は、なんとか公明党の機嫌をとろうと必死だ。茂木敏充幹事長は6月19日に都連会長の萩生田光一政調会長や高島直樹幹事長らと会談し、都連側に新29区に出馬予定の公明党の岡本三成衆議院議員を支援することを要請。23日には茂木氏が埼玉市内で県連幹部と面談し、公明党の石井幹事長が出馬予定の埼玉14区での選挙協力を求めた。また同日に森山裕選対委員長が愛知県に入り、愛知16区に出馬予定の伊藤渉政調会長代理の支援を呼びかけている。

 新設された東京28区を公明党に譲らず、東京での自公断絶の原因を作った萩生田氏は、6月24日に名古屋市内の会合で、公明党との関係修復を訴えた。「夫婦は離婚の危機があるが、兄弟喧嘩は仲直りをしなければならない。我々は夫婦ではなくて兄弟だ」と、萩生田氏は述べたが、「兄弟は他人の始まり」という言葉もある。

 一方で東京を巡る公明党の態度は明確だ。ある関係者は「人物本位で応援する。平沢勝栄と萩生田光一以外は協力してもいい」と打ち明けた。

創価学会から“仏敵”と言われた平沢勝栄氏は、選挙にめっぽう強い
創価学会から“仏敵”と言われた平沢勝栄氏は、選挙にめっぽう強い写真:アフロスポーツ

 平沢氏は1996年と2000年の2度の衆議院選で、旧東京17区を巡って山口代表(当時は代表でなかったが)と闘って勝ち抜いた。公明党から「仏敵」との烙印を押され、自公連立した後の2000年の衆議院選では、党本部から公認がなかなか下りなかった。

 もっとも山口氏が2001年に参議院に転じた後、公明党は同選挙区に独自候補を擁立していないが、とはいえ、平沢氏を支援しているわけではない。

 それでも平沢氏は毎回、10万票以上を獲得している。同選挙区内には3万票余りの「公明票」が存在すると見られるが、それが平沢氏の勝利に影響することはない。

都内にある80万票の公明票の行方は……

 しかしその他の選挙区では、自民党にとって都内に80万票ほどあると見られる「公明票」は、まさに喉から手が出るほどほしいものだ。その多くは自民党の候補者に流れ、僅差で議席を得させてきた。

 たとえば旧東京23区の小倉将信少子化担当大臣は、2021年の衆議院選では立憲民主党の伊藤俊輔氏との票差はわずか6474票で、しかも2017年の衆議院選での3万4072票差から大きく縮まっている。

 前回の衆議院選で立憲民主党の海江田万里衆議院副議長(在任中につき党籍離脱中)に9090票差まで迫られた東京1区の山田美樹衆議院議員も、公明党の動向に気が気ではないだろう。同区には公明党の支持母体である創価学会の本部の他、数々の施設が立ち並び、八王子と並ぶ公明党の牙城である。「公明票」の数こそさほど多くないものの、その影響力は非常に大きいからだ。

 都内で「公明票」が最も多いのが八王子市のほとんどをカバーする旧東京24区で、2021年の衆議院選では4万3736票が比例区で公明党に投じられた。八王子市には創価大学や東京富士美術館など創価学会の施設が建ち並び、多くの創価学会員が住居を構えている。市名を「創価市にしよう」という動きもあったほどだが、ここから出ているのが萩生田氏だ。

生稲候補を応援する萩生田氏
生稲候補を応援する萩生田氏写真:アフロ

 萩生田氏は八王子市議を3期務めた後、都議を経て2003年の衆議院選で初当選を果たした。2009年の衆議院選で落選し、復活当選も叶わなかったが、その後に順調にキャリアを重ね、清和研の将来のリーダーのひとりと目されるようになった。岸田政権では経済産業大臣を務めた他、現在は党政調会長に就任している。

 しかし公明党との関係は今回に限らず宜しくない。昨年の参議院選で萩生田氏が東京選挙区に自民党から出馬した生稲晃子候補(当時)を地元の旧統一教会施設に連れて行ったことが発覚し、これに創価学会が猛反発したからだ。新東京28区をめぐる確執といい、こうした問題を抱える萩生田氏に「公明票」が入る可能性は極めて低くなったといえる。

 だがそれには、徹底した「告知」が必要になるだろう。「公明票」が大きな組織票であればあるほど、そのコントロールは難しい。

 これはある選挙のベテランから聞いた話だが、ある保守系候補同士の戦いで、一方の候補のために創価学会の県本部に協力を依頼したことがあったそうだ。なお相手方は先代から公明党から支持を得てきた世襲候補だったが、それでも県長は「大丈夫だ。うちの票は100%、そちらに回す」と断言したという。

 だが投票箱を開けてみると、「公明票」の8割は相手方に投じられていた。「急に指令を変えても、組織の隅々まで浸透しないのだろう」とそのベテランは述べた。

 よって「関係断絶」を宣言した東京でも、実際には多くの「公明票」は以前と同じように自民党の候補に投じられる可能性もある。しかしそれでは、公明党は単なる「下駄の雪」に落ちぶれる。

 それでなくても支持母体の高齢化という問題を抱えている。大阪や兵庫では日本維新の会が票も議席も侵奪しつつあるが、今こそ党の存在感を見せつける好機だろう。山口代表が胸に秘める「第2弾」は、それなのかもしれない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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