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内閣支持率がまた下落!自民党は菅首相とともに沈むのか

安積明子政治ジャーナリスト
昨年の総裁選では、菅首相は圧勝したが……(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

最低の数字

 内閣支持率がまた下がった。毎日新聞と社会調査研究センターが8月28日に実施した全国世論調査では、菅内閣の支持率は前回(7月17日実施)の30%から4ポイント下落し、26%を記録した。各社調査方法は様々だが、数字の上では最低となっている。

 不支持率も66%となり、前回より4ポイント上昇している。原因は新型コロナウイルス感染症だ。8月28日23時55分現在で、感染者数は前日比5622人増の25万4382人。新規感染者数こそ前週同曜日比で2742人減の2万2741人で「高止まり」している感があるが、連日のように医療現場の惨状が報道され、「医療崩壊」さえ危ぶまれている。

自民党支持層が逃げた?

 8月22日に行われた横浜市長選では、菅義偉首相が応援した小此木八郎前国家公安委員長が立憲民主党推薦の山中竹春元横浜市立大学教授に18万票も差を付けられて大敗した。しかも市内にある18区のうち、小此木氏の地元である鶴見区を除いた17区全部で、山中氏に負けていた。菅首相が8回連続で当選している神奈川2区内の西区、南区、港南区でさえ、山中氏の得票数が小此木氏の得票数を上回ったのだ。

 原因は、49.05%と前回(2017年)を11.84ポイント上回った投票率だ。「無党派層が動いた」と分析するのが多数だが、それだけではない。ある関係者はこう言った。

「結果を分析すれば、今回の市長選で投票しなかった自民党支持者がかなりいる。それでも投票率は12ポイントも上昇した。ということは、想像以上に無党派層が動いたことになる」

 その原動力となったのが、小此木氏の背後にいた菅首相に向けられた“嫌悪”に違いない。そしてそれは、9月29日に行われる自民党総裁選の決め手となりそうだ。

「選挙で勝てる顔」であるべき次期総裁

 自民党総裁選挙管理委員会は8月26日、次期総裁選を9月17日告示・29日投開票と発表した。同日午後に岸田文雄元外務大臣が出馬を表明。「今回出馬しない」と言明していた石破茂元幹事長も27日、地元で「白紙に戻す」と意欲を見せた。

 昨年9月の総裁選では、いち早く派閥の支持を固めた菅首相が377票も得たのに対して、岸田氏は89票、石破氏は68票で大敗した。しかし今回の総裁選は議員票と同数の地方票が加わる「フルスペック」で行われ、より国民に近い結果となる見込みだ。もっとも重要なファクターは10月21日に任期満了となる衆議院で、次期総裁は「選挙で勝てる党の顔」でなければならない。

 そういう意味でもっとも有利なのは、各社世論調査での「次の首相」として常にトップを走る石破氏だろう。2012年9月の総裁選では、165票もの党員算定票を獲得し、第1回投票では安倍晋三前首相らを抑えて1位に躍り出た。

 岸田氏の台頭も予想できる。今回の毎日新聞の世論調査では、774人中75人が「自民党総裁に相応しい政治家」として岸田氏を挙げている。1月の調査では711人中12人しか岸田氏を挙げなかったことと比較すれば、かなりの浮上だ。

「次は『菅』とは書かない」

 こうした世間の動向を自民党党内はどのようにとらえるのか。安倍前首相や麻生太郎財務大臣兼副総理はいちはやく菅支持を表明し、二階俊博幹事長も派閥ぐるみの応援姿勢を崩していない。しかし細田博之会長が菅支持を表明した清和会で自由投票が決まり、他の派閥でも締め付けが緩められつつある。

 ある議員がこのように打ち明けた。

「前回の総裁選では派閥で決まった通りに『菅』と書いて後悔した。次回は絶対に書かない」

 自民党本部が8月21日と22日に行った調査では、自民党が失う議席数は「50±10」とされたが、「実際にはもっと多いはずだ。80や100の数字を見たとの話もある」(某紙記者)とも囁かれている。またある自民党関係者は「8月14日15日に実施した調査では、比例での投票先を自民党と回答したのがわずか16%になった」と教えてくれた。

「その前には37%だったのが、21ポイントも下落した。あまりの悪化に、この調査は『なかったこと』になったようだ」。

 9月に入れば状況はさらに悪化する可能性は大きい。それを好機ととらえて総裁選に挑戦しようとするのが、高市早苗前総務大臣と下村博文政調会長だ。いずれも自力では20名の推薦人を獲得するのは困難で(「25名を確保した」とする下村氏は昨年の総裁選でも「20名を確保した」と述べていたが、実際に出馬できなかった)、頼りにするのは「個人として菅首相を応援する」と限定的な菅支持を表明している安倍前首相。安倍前首相にとってもキングメーカーとなれるかどうかが、この総裁選にかかっている。

2009年より壮絶?

 こうした動きが「菅降ろし」に発展するかどうかだが、2009年の政権交代前には壮絶な「麻生降ろし」が発生した。旧民主党の関係者は次のように述べる。

「2009年はなんとなく民主党が浮上したという感じだったが、今回は確実に野党側に追い風を感じる。これで野党が勝てなければ、野党自身がおかしい」

 国民の意識は完全に変わりつつある。それを与野党がどう受け止めるか。自民党にとっては9月の総裁選は、その運命を決するものとなるかもしれない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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