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いよいよ国民民主党分党を決断!玉木雄一郎の最も暑い日

安積明子政治ジャーナリスト
分党を表明した玉木代表(写真:つのだよしお/アフロ)

重要なやりとりが知らされていなかった!

 群馬県伊勢崎市で40.5度を記録し、北海道や東北でさえ体温を超える猛暑となった8月11日、国民民主党の玉木雄一郎代表は、党を分かつことを発表した。

「今日初めて幹事長から、この間、立憲民主党とのやりとりをしてきた規約、代表選規定、党名選定規定、また綱領、政策等について、文書の形で説明を受けました。これらの報告を聞いて、代表としての最終的な判断をいたしました。まず、党として合流の条件としては基本的に同意します。その上で私自身は合流新党に参加いたしません」

 党本部で開かれた臨時会見で、玉木代表が発した第1声は驚くべきものだった。合流に向けたこれまでの立憲民主党とのやりとりについて、平野博文幹事長から玉木代表に対して、きちんと報告されていなかったというのだ。

まずはコロナ対策を

 もっとも玉木代表が分党を決意したのはそれより前で、同日朝のこと。なかなか進展しない合流問題について、「これに時間をとっている場合ではない。一刻も早くコロナ対策をやらなければ」と腹を決めたという。

 直接のきっかけとなったのが、玉木代表の地元である香川県でも新型コロナウイルス感染症が広まっていることだ。8月上旬にクラスターを発生させた島根県の高校サッカー部と練習試合を行った県内の高校関係者155名が濃厚接触者とされ、すでに発熱症状が出た者もいると報じられた。

 全国的にも感染者数は増えており、経済にも重大な影響を与えている。にもかかわらず、野党が自らの生き残りだけに邁進するのは本末転倒ではないか。玉木代表のその決意をいっそう固めたのが、11日の執行役員会での出来事だった。かねてから憲法、消費税、コロナ対策など政策の一致を玉木代表が求めてきたのに、平野幹事長から提示された綱領案などにはそれらが反映されていなかった。同党のある議員がこう述べる―「平野幹事長は『これ以上、(立憲民主党と)交渉の余地はない』と言ったそうです。だから玉木代表は分党しかないと決意したのでしょう」。

羽交い絞めされた玉木代表

 では分党した場合、国民民主党はどうなるか。

 玉木代表が主張する分党方式は、「希望の党方式」だ。これによると、国民民主党は立憲民主党との合流組と非合流組に分かれるが、非合流組が事実上の国民民主党の後継政党となる余地が出てくる。すなわち国民民主党の財産の多くを受け継ぐことになる。

 しかしそれでは、立憲民主党と合流組が承知しないだろう。立憲民主党にすれば、国民民主党の保有財産をそっくり頂かずして、比例区の議席を奪われるかもしれない合流組を受け入れるわけにはいかないからだ。

 案の定、玉木代表の会見の後に泉健太政調会長がぶら下がりを行い、「玉木代表の分党案は役員全員が合意していない」と反論。また綱領案に消費税減税など政策が反映されなかった点についても、「玉木代表の指示がなかった」と述べている。

 だが玉木代表は常に「綱領は政策の裏打ちがなければならない」と述べてきた。そもそもどんな政策を重視する政党なのかを明らかにしないで、新党結成は可能なのか。

 執行役員会で採決はとらなかったものの、「メンバーひとりひとりの意見を聞いて、過半数は分党に賛成だと確信した」と玉木代表は筆者に述べている。また同党のある議員からは、「9名の役員のうち、少なくとも5名は分党に賛成のはずだ」との証言も得た。そもそも意見が分かれるから分党するのだ。一方で反対派は力づくででも分党を阻止したかったのだろう、記者会見を開こうとした玉木代表を羽交い絞めにしている。

心を合わせ、力を合わせ

 最大の問題は玉木代表に何人の議員が付いていくかだが、玉木代表自身は「10人ほどだろう」と推測する。実際に解散総選挙を控えている衆議院では合流組が多く、参議院では玉木代表に同調する議員が多いと言われているが、合流に積極的な連合の手前、参議院の労組の組織内候補は厳しい判断を迫られることになる。

 労組を支持母体とするある議員は「支持母体の意見には逆らえないが、支持母体の中にもいろんな意見がある」と態度を保留したが、別の議員は「我々は労組の代表でもあるが、その前に国民の代表だ」と明言した。

 「私は野党再編はこれからだと思っている」と、玉木代表は打ち明けた。「大事なことは心を合わせることで、そうでなければ力を合わせることはできない」。たとえ仲間は少なくなろうとも、大きく飛躍する希望は捨てていない。玉木代表にとって、暑い季節はこれからも続いていく。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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