Yahoo!ニュース

ついに中国からも汚染国指定か?後手後手対策と緩みが裏目に出ている安倍政権

安積明子政治ジャーナリスト
第201回通常国会は波乱ばかり(写真:Motoo Naka/アフロ)

消費税増税に新型肺炎

 弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂というのはこのことだろう。昨年の消費税増税に加えて昨今のコロナウイルス肺炎のせいで、日本はズタズタにされそうだ。

 2月20日に内閣府が公表した 2月の月例経済報告では、国内景気について「穏やかに回復」という言葉を残した。しかし「新型コロナウイルス感染症が内外経済に与える影響に十分注意する必要がある」「通商問題をめぐる動向等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響にも留意する必要がある」と懸念も示している。

「最悪の時期に安倍首相は最悪の判断をした」

 ここ最近、永田町で最もよく聞く言葉だ。ひとつは消費税増税の影響だ。昨年10月の消費税増税で弱体化した日本経済を、1月と2月のコロナウイルス騒動が打撃を加えたことになる。

後手後手が裏目に

 さらに新型肺炎への対策の遅さだ。新型肺炎が発生した武漢市がある湖北省と患者が出た浙江省からの入国者については制限(入国申請前に滞在していた場合、14日間の入国禁止)したが、中国のその他の地域については従前のまま。26日には韓国の大邱市と慶尚北道からの入についても入国制限をしたが、これも韓国の他の地域については制限をかけていない。

 しかし地域的制限で足りるのか。中国では武漢市が閉鎖される前に、500万人が市外に脱出したと言われている。大邱市や慶尚北道も同じだろう。たとえ閉鎖されなくても、ウイルスから逃げようという人は多いはずだ。

 後手後手の原因は危機感のなさ。そしてその危機感欠如の原因は、2009年の「新型インフルエンザ」での“成功体験”だという。初期対応が迅速に行われたため、感染経路がある程度特定でき、そのために死亡率が0.16%と世界最低となった。そのために今回も、「公衆衛生が整っている日本は大丈夫」という安心があったのだろう。

よりによって中国から「入国制限」?

 しかしながら日本は「新型肺炎汚染国のレッテル」を貼られつつある。新型肺炎の発生源である中国からですら、日本が入国制限を受けそうだ。

 中国外務省の副報道官は2月26日、「中国の他、日本と韓国は感染症と戦う最も重要な時期にある」と述べた。北京市は「状況が深刻な地域から来た人は、14日の経過観察を受けることになる」と日本からの入国を含めている。

 そして政府は27日夜、いきなり3月2日から全ての小中高の休校を要請することを発表した。もっとも総理大臣には学校の休校を命令する権限はない。よって「要請」ということになったわけだが、唐突の発表によって現場が混乱することは必至だ。

 国民民主党の玉木雄一郎代表もTwitterで、「やるならなぜ2日前の基本方針に書かなかったのか」と政府の場当たり的な対応に疑問を示している。

国民の危機を横目に緩みが次々と露見

 それまでの政府与党が緩んでいたのは周知の通りだ。安倍首相は21日夜、山口泰明自民党組織運動本部長らと都内で会食し、稲田朋美元防衛大臣の誕生日を祝った。自民党の杉田水脈衆議院議員は25日に都内でパーティーを開き、秋葉賢也首相補佐官は26日に宮城県仙台市内で出版記念パーティーを開いている。

 秋葉補佐官は「首相が自粛を要請したのは26日午後だった」と言い訳したが、すでに24日に新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解で、「会話などが一定時間以上続き、多くの人と交わされる環境」などを“感染リスクの高い行為”として例示。同会議副座長の尾身茂元WHO西太平洋地域事務局長は記者会見で、立食パーティーや飲み会などにはなるべく行かないように注意喚起している。

 昨年12月には8年目に突入し、異例の長期政権となった安倍政権だが、その神通力もそろそろ尽きたのか。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

安積明子の最近の記事