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立憲民主党と国民民主党の合流を阻むもの~このままでは小池知事に排除された反動にすぎない

安積明子政治ジャーナリスト
玉木代表を悩ませる立憲民主党への合流急進派の背後には、小沢一郎氏の影が見える(写真:アフロ)

合併は平行線

 立憲民主党と国民民主党の合流劇は、果たして決着するのだろうか。国民民主党の玉木雄一郎代表は1月15日に両院議員懇談会を開き、立憲民主党との政党間協議の進捗状況を説明。引き続き全国幹事長会議・自治体議員団等合同会議が開かれた。10日に行われた党首会談では、党名・人事・政策の丸呑みを求める立憲民主党に、国民民主党の玉木代表が拒否。党名に「立憲」を入れないこと、党綱領に「改革中道」の文言を盛り込むことなどを提唱したため、両者の意見は平行線で終わっている。

 実はこの点が重要だ。両党が祖とする民主党は中道左派政党として自民党に対峙した。2009年の衆議院選で政権交代を果たしたが、その原動力となったのは、堕した自民党政権に国民が愛想を尽かしたことだった。いわば「自民党にお灸をすえる」という意味で、民主党に票が投じられた。民主党が国民に積極的に評価されたとは言い難い。

中道左派ではいけない理由

 立憲民主党の路線も民主党と同じで、中道左派そのものだ。彼らが国民民主党を飲み込もうとするのは、民主党の復活を目指しているに他ならない。そして中道左派でいる限り、かつての社会党や民主党のように一定の割合の支持を得ることもできる。なによりも政党支持率がそれを示している。とりわけ安倍1強といわれる現在の政治状況で、野党で甘んじている限りは安泰というわけだ。

 しかし政権を獲ることにはとうてい結びつかない。「自民党に代わる選択肢となる政党を作る」「大きなかたまりを作る」などと掛け声は勇ましいが、中道左派の方向性では政権を獲る以前の民主党にも及ばないだろう。

 実際にNHKが1月14日に公表した世論調査を見ても、「自民党」が40.0%、「立憲民主党」が5.4%、「国民民主党」が0.9%、「公明党」が3.4%、「日本維新の会」が1.6%、「共産党」が2.9%、「社民党」が0.7%、 「れいわ新選組」と「NHKから国民を守る党」が0.2%で、自民党が突出しているが、立憲民主党と国民民主党を合わせても10%にも及ばない。

 一方で「特に支持している政党はない」が38.5%を占めている。もし野党が政権を狙うならこの層を取り込む必要があるが、中道左派の立憲民主党が果たしてその任を担えるのか。

自分の生き残りを優先する獅子身中の虫たち

 そうした懸念とは裏腹に、国民民主党内では立憲民主党への早期の合流を求める声もある。15日には副代表の津村啓介衆議院議員ら21名が、早急の立憲民主党への合流を求めるための両院議員総会の開催を要求した。彼らの多くは比例復活組で、次期衆議院選に不安を抱えている。確かに立憲民主党の方が政党の獲得票数が多い。昨年の参議院選での比例票数を見ても、国民民主党が348万票だったのに対し、立憲民主党は800万票と2倍以上にものぼる。

 しかし野党の勢力の拡大を目指さない限り、それでは同じパイの奪い合いに過ぎないのではないか。彼らが目指す「大きなかたまり」とは、立憲民主党と国民民主党を単に足しただけのものではないだろう。そもそもそれだけなら、野党勢力の拡大という意味で合併する意味はあるだろうか。

いまも息づく小池知事の恩讐

 こうした本質を見えなくしているのは、2017年の衆議院選での恩讐だ。前原誠司民進党代表(当時)は「民進党のままでは戦えない」と、人気絶頂だった小池百合子東京都知事に頼った。ところが小池知事が作った希望の党の「排除の理論」によって、民進党は2つに分裂。希望の党に入れなかった人たちが寄る辺としたのが枝野幸男代表が立ち上げた立憲民主党だった。

 その立憲民主党が今度は国民民主党に合流の条件を突き付けている。いわば2年3か月前の仕返しをしているように見えるのだ。

「この時に真っ先に希望の党に駆け込んだのが、いま立憲民主党との合流を叫んでいる津村さんたちだ。今度は立憲に駆け込もうとしている。ただ選挙のために右に左にただ走っているに過ぎない」

 ある国民民主党の幹部がため息をついた。ただ自分の生き残りのための政治家の行動ほど、国民をしらけさせるものはない。そこには国民目線がないからだ。

 もし立憲民主党と国民民主党が合併するのなら、「支持政党なし」の層をどのように取り込むのかという視点が必要になる。民主党政権の失敗は左派の限界を示したものだ。そういう意味では立憲民主党がただ膨張するだけでは、国民の多数の支持は得られない。

 そこで「改革中道」の意味が重要になる。立憲民主党も変わらなければならないということだ。代表選規定を作らないといけないし、場合によってはリコール規定も必要だろう。何よりもさらに保守層へウイングを広げないといけないが、それを拒否するように合併条件を突きつけるということでは、国民民主党を飲み込むどころか、「大きなかたまり」にも「政権選択肢」にもなれやしないだろう。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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