2020年の政局は全て読み直しに 秋元逮捕の衝撃度

秋元氏の選挙には、安倍首相も応援に(写真:中尾由里子/アフロ)

解散説が吹っ飛んだ

 いつ衆議院解散になってもおかしくはない―。そんな雰囲気が年越しを前に一気に吹き飛んだ。12月25日に自民党の秋元司衆議院議員が東京地検特捜部に逮捕されたからだ。19日には地元事務所や議員会館に家宅捜査が入った。議員会館の事務所が家宅捜査を受けるのは2013年11月に「徳洲会」事件以来で、国会議員の逮捕は2010年1月に陸山会事件での石川知裕元衆議院議員以来となる。

 秋元氏の容疑は収賄罪。日本国内のIRを狙う中国企業から現金300万円と北海道旅行代70万円を受領したという容疑だ。秋元氏は2019年9月まで、IR担当副大臣を務めていた。

司法取引されたのか

 だが奇異な印象は否めない。これまでなら議員会館の事務所が家宅捜査されると、間もなく議員は逮捕された。しかし今回は6日間もブランクがある。

「秋元本人は全面否認。検察は証拠を掴めず、秋元の逮捕はないんじゃないか」

 そんな意見も聞かれたが、筆者は検察が相当の証拠を持っていると思っていた。というのも、特捜部は中国企業と「司法取引」した可能性がある。実際に特捜部は日産ゴーン事件で、日産幹部と司法取引をしたという“前歴”がある。

「細部にわたる情報が特捜部に渡ったのだろう。そうでないと『(300万円を)議員会館の議員室で羊羹の紙袋に入れて渡した』など報道されているが、事実がわかるはずがない」

 自民党のある秘書がこう言ったが、もっともだ。議員会館の事務所内でのやりとりなど、当事者以外がわかるはずがない。さらにいえば、2018年2月に秋元氏が視察のために家族とともに北海道旅行した費用を中国企業が払ったとする話も出ていることもそうだろう。

北海道が狙われたワケ

 しかもその内容が突飛なものだった。政府が認めるIRは3か所までで、鈴木直道知事が11月29日に「とりあえずの誘致断念」を表明した北海道では、その候補地は新千歳空港に隣接した苫小牧市植苗。中国企業が予定していた留寿都村とは直線距離で数十キロ離れている。よってここに空港を誘致し、プライベートジェットを飛ばす構想だったと言われている。そのために観光立国及び航空行政などを担当する国交副大臣を務めた秋元氏をターゲットにして近づいたのだろう。

 もっともIR誘致の実現可能性は小さく、「背景に原野商法があるのではないか」と見る永田町関係者は数多い。背景にあるのは北海道の地価のいびつな現状だ。2019年の基準地価はニセコ町や蘭越町とともに「ニセコ観光圏」を形成する倶知安町では樺山地区の地下上昇率が66.7%に達して4年連続で全国トップとなった。その一方で北海道は全体として地価が低迷。実際に全国ワースト10に住宅地で7地点、商業地で6地点入っている。

 要するに地価の二極化が進み、投機目的で購入したものの、処分に困るということだ。

「そうした土地に関する儲け話を持って、怪しげな人物が議員会館を出入りしていたこともある」

 ある秘書はそう言ったが、実際に中国企業が接触した議員として、秋元氏の他に12名の現職議員と1名の落選議員の名前が出ている。

「秋元氏はよく仲間を飲み会に誘っていたようだから、その多くはそういう仲間だろう」(永田町関係者)

補選を見据えて動きが始まっている

 なお秋元氏の逮捕とほぼ同時に、議員辞職の可能性を見込んだのか、対抗馬の柿沢未途衆議院議員が街宣活動を活発化。もし補選となって柿沢氏が出馬のために議員辞職すれば、「希望の党」の若狭勝前衆議院議員が繰り上げ当選となる。また柿沢氏には「自民党入りを希望している」との噂もあり、今後の勢力構図に影響しそうだ。

 いずれにしろ、秋元逮捕は2020年の政局を読み直さなければならないほどの影響力のある事件だ。