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【野党共闘】「共同会派」を結成するも、野党結集には遠い現実

安積明子政治ジャーナリスト
なかなか「結婚」には至らない立憲と国民(写真:アフロ)

“大きなかたまり”を作るものの……

 立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表、社会保障を建て直す国民会議の野田佳彦代表は9月19日に国会内で会談し、衆参両院で院内会派を組むことに合意した。10月4日から始まる予定の臨時国会では、衆議院で117名、参議院で61名という、野党の“かたまり”が出現することになる。

「政府に入って仕事をしていた閣僚経験者は、副大臣、政務官を入れると40人から50人になりますから、そういう野党が存在するということは、我が国の議会政治にとっては非常なことだと思いますよ。自民党の政権交代前よりも多いくらいの数になるからね」

 同日に立憲民主党に入党し、同党及び会派の国対委員長に任命された安住淳元財務相は、意欲を述べた。同日夕方には立憲民主党は両院議員総会を開き、会派結成についての報告を終えた。国民民主党は25日に開催予定の参議院議員総会の後に両院議員総会を開く予定だ。

なぜ「共同会派」にこだわるのか

 しかしながら、乗り越えるべき課題は多い。まずは一般的に使用される「統一会派」という名称を敢えて避けて、「共同会派」の名称を用いる点だ。「共同会派」は希望の党や民進党の党規約上で規定されているが、19日に交わされた第1回会派運営協議会の合意書で「統一会派は使用しない」とわざわざ確認した。しかし枝野氏も玉木氏もその理由について、「両党の規約に“共同会派”という名称があるから」という以外に積極的に説明していない。

 なぜ一般に使用する「統一会派」ではなく「共同会派」にこだわるのか。それは組織の構成と結束の程度にあるのではないか。たとえば国民民主党では衆議院では会派結成に意欲的だったが、参議院では反対意見が強かった。

 そもそも参議院の立憲民主党と国民民主党との関係は、良好とはいえない。参議院選が近づくにつれて民進党から離脱者が立憲民主党に流れ出し、野党第一党を巡る争いも起こっている。7月の参議院選では、立憲民主党は国民民主党の現職がいる静岡選挙区に刺客を放った。北海道、埼玉、東京、神奈川、大阪、愛知、福岡ではともに候補を擁立。大阪府選挙区では双方が敗退し、愛知県選挙区では双方が勝利したが、その他では国民民主党が数字の上では惨敗。これらが禍根となっているようだ。

 体質も全く異なる。2017年の衆議院選で枝野氏が設立した立憲民主党は、いわば枝野氏のオーナー政党で、代表選規定もない。それに対して希望の党の流れをくむ国民民主党は、立憲民主党を「排除した側」だ。

 そうした中で「共同会派」の名称が衆議院では「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」、参議院では「立憲・国民.新緑風会・社民」に決まったが、その順番などでもめたという。また参議院で会派の人事を独占したい立憲民主党に対し、国民民主党は幹事長ポストを死守。大塚耕平元民進党代表が就任する。当初は当選回数が最多の羽田雄一郎参議院議員が有力視されたが、文科省汚職問題の影響を懸念して消えたようだ。

れいわ新選組の存在感

 ともあれ、第2次安倍政権発足以来、最大規模の野党の“かたまり”をつくることになったものの、これだけでは次期衆議院選は勝つことができない。7月の参議院選で2名の議員を誕生させたれいわ新選組の存在だ。

山本太郎代表は「次期衆議院選で100人の候補を立てる」と宣言しており、れいわが独自候補者を擁立すれば、野党の票を喰うのは必至。これが自公を利することになりかねない。

 そこで野党の結集にれいわを巻き込み、野党の票の分散を防ぐことが必要になるが、現在のところ、山本代表と話し合いを行っているのは日本共産党のみの状態だ。志位和夫委員長は9月12日に山本代表と院内で会談し、野党連合政権を作るための協力、9条改憲に反対、消費税10%増税反対の3点で合意した。

 もっとも共産党とれいわと組むことで、野党共闘が容易になるという考えもある。そのヒントが1999年の自自公連立だ。当時は自民党と公明党が直接手を組むのは困難と見られ、そのリエゾンとなったのが自由党(当時)だった。

野党の「統一」には遠い現実

 しかし山本代表は「消費税5%で野党が一緒に戦えるのなら、れいわは捨て石になってもいい」という覚悟だが、消費税を巡る野党各党の思惑はバラバラだ。国民民主党は消費税減税法案を野党でまとまって提出したいが、立憲民主党の枝野代表は9月21日放映のCS番組で、「一度上げて混乱が生じたのを、下げたらまた混乱が生じる」と慎重な姿勢を崩さない。

 同床異夢という言葉があるが、そもそも同衾しているのかどうなのか。政権奪取という同じ夢を見るのは果てしなく先のことになりそうだ。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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