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安倍首相のステルス遊説作戦は成功したのか

安積明子政治ジャーナリスト
7月7日に吉祥寺駅前で支援者に手を振る安倍首相

立憲民主党の枝野代表の党名をわざと間違った!

 選挙戦序盤の世論調査の数字が入ってきている。意外にも自民党が強いのだ。自民党は2013年の参議院選で65議席をも獲得したが、調査の中には「獲得予想議席数64」と、それに迫るものもある。

 そうしたことに気を良くしているのか、安倍晋三首相(自民党としては総裁)の口調は軽妙だ。選挙演説には民主党政権への批判と野党第一党である立憲民主党の枝野幸男代表への揶揄が混じる。

「民主党の枝野さん、あ、すみません。立憲民主党でした。毎回毎回ころころ変わるから、覚えるのが大変なんです」

 ちょっと前までは派閥のパーティーなどで「悪魔のような民主党政権」を口にしていた安倍首相だが、批判が多かったために変更したようだ。だが自民党の支持率は他の政党に比べて圧倒的で、たとえば6月の時事通信による調査では自民党が27.7%に対し、野党第一党の立憲民主党でさえ3.3%。にもかかわらず、わざわざ安倍首相が野党を意識する必要はあるだろうか。

首相の演説日程は非公表

 自民党は安倍首相の選挙日程をホームページに掲載していない。公示日前後は九州南部の大豪雨への対応などで総理の日程変更がありえただろうが、現在でも総裁の応援日程の掲載はない。これは安倍首相への野次や抗議活動を懸念したためと思われる。2017年の東京都議選最終日では、1時間以上も続いた「アベやめろ」コールに対して安倍首相が「あんな人たちに負けるわけにはいかない」と反応したシーンが拡散され、都議会自民党は大きく議席を減らしたからだ。

 そういう意味で7月7日に千葉県と東京都で予定されていた安倍首相の応援演説について、混乱が懸念された。というのも、非公表のはずの日程が事前に新聞に掲載され、批判者たちが押し寄せる危険があったからだ。当初は中野駅前商店街では安倍首相の練り歩きなども予定されていたが、警備上の理由で中止されている。

中野駅北口では混乱したが……

 千葉県内2か所で行った街宣や、安倍首相が昼食を摂ったお台場、蒲田駅前での演説会で大きな混乱は起こっていない。しかし中野駅北口での演説会は騒然とした雰囲気に包まれていた。「自民党は恥を知れ」や「蚊帳の外 ネトウヨ総理は辞任せよ」などのプラカードを掲げた人たちが歩き回り、安倍首相が演説を始めると野次が飛んだ。

 これに対して自民党支持者側も応戦。応酬合戦の声で安倍首相の演説はほとんど聞き取れない状態となった。さらに演説の終盤には聴衆の後方から罵声が飛び、警官が駆けつける場面も。もっとも安倍首相はこれらを気にする様子もなく、吉祥寺と立川に移動して聴衆にG20サミットでの成功や雇用状況の好転をアピールし、「強い経済を作らなければならない」と力説。こちらでは大きな混乱とはならなかった。

楽勝ムードに緩みも?

 なお自民党は東京都選挙区から現職の丸川珠代氏と武見敬三氏の2名を擁立。いまのところは両名とも当選圏内だが、一抹の不安もある。

「自民党が東京都で確実に持つ120万票をうまく分ければ2人とも当選。一方に偏らないようにしないといけないけれど……」(自民党関係者)

 実際に2013年の参議院選では、序盤に武見氏が丸川氏よりも優勢だったが、「蓮舫氏よりも票を獲れ」などの指令を受けた丸川氏が武見氏の票を喰った結果、武見氏が最下位を民主党(当時)の鈴木寛氏と争ったという経緯がある。

 だが今回は平穏ムード。公示前に新宿駅西口で開いた街宣でも、動員をかけながら集まった聴衆は約150人だった。

 自民党優勢とはいえども、その差が小さい選挙区が多く、風向きが少しでも変わると将棋倒しになりかねない。投開票日まであと2週間。参議院の選挙期間は17日間と、衆議院の選挙期間よりも長い。最後の最後まで気を引き締めなければ、勝利の女神はつなぎとめられない。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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