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【衆参ダブル選はあるのか】解散を目論む安倍首相が無視する2人の大物

安積明子政治ジャーナリスト
安倍首相が目指すのは次の勝利に他ならない(写真:ロイター/アフロ)

「悪夢のような民主党」発言の背景とは

 衆参同日選が噂される中、自民党の派閥のパーティーが大型連休の後に次々と開かれている。平成研(竹下派)だけはすでに3月に開催済みだが、5月9日に志帥会(二階派)、13日に水月会(石破派)、翌14日には志公会(麻生派)がホテルニューオータニで最大の「鶴の間」でパーティーを開催。それぞれ5000名、4000名、2400名を集めた。

 15日は東京プリンスホテルで宏池会(岸田派)がパーティーを開催。21日の清和会(細田派)、29日の近未来研究会(石原派)と続く。

注目されるのは安倍晋三首相が挨拶で何を話すのかという点だ。9日と14日には「悪夢のような民主党政権」発言で、パーティー会場は笑い声がさざめいた。安倍首相は今年2月10日に開かれた自民党大会でも「悪夢のような民主党政権」と言及し、翌々日の衆議院予算委員会ではかつて民主党代表だった岡田克也衆議院議員から苦言を受けている。

安倍首相にはその民主党に12年前の2007年の参議院選で敗退したという苦い過去がある。

「総裁だった私の責任だ。こういうことは1日たりとも忘れたことはない。あれからいわば二重国会になって、政治的な安定性を失い、民主党政権が誕生。混迷を極めたのは事実だ」(9日二階派のパーティーで)

 各マスコミはこの発言を「安倍首相が民主党政権を揶揄した」と報じたが、むしろ強いトラウマが感じられる。今年の夏には2007年と同じ「亥年の参議院選」が行われるが、安倍首相は議席を減らす恐怖に駆られているに違いない。

 参議院選で勝つためには、与党に有利な衆参同一選が一番だ。その口実となりえるのが消費税増税凍結で、安倍首相の側近の萩生田光一自民党幹事長代行が観測気球を上げている。

外交力を背景に解散か

 実際にその条件は整っている。5月25日から28日までアメリカのトランプ大統領が令和最初の国賓として来日し、6月28日と29日に大阪で開かれるG20にはロシアのプーチン大統領や中国の習近平主席などもやってくる。すでに北朝鮮の金正恩委員長には「前提条件なしの会談」を呼びかけて返事待ち。まるで世界が安倍首相を中心にまわっているように見えなくもない。安倍首相はすでにG8ではドイツのメルケル首相に次ぐ古株で、国際社会における安倍首相の存在感はいやがうえでも増している。

 その一方で、日本に対して数々の不義理を尽くした韓国の文在寅大統領とは、現在のところ首脳会談を行う予定はない。文政権が日本に加えたダメージは、竹島上陸問題や慰安婦問題など従来からの問題に加え、日韓請求権協定違反が明らかな元“徴用工”判決問題やレーザー照射問題、海軍観艦式の日章旗拒否問題など、新たな問題も数多い。韓国側は首脳会談の可能性を探っているが、西村康稔官房副長官は13日のBSの番組で、「しっかりと韓国が対応してくれないとダメだと思う」と斬り捨てた。そのような韓国との溝は、たやすく埋まるはずがない。

もうひとつのトラウマ

 さらに総裁選も安倍首相のトラウマになっているのかもしれない。2012年の総裁選では第1回目の投票で石破茂元幹事長がトップを占め、安倍首相(87票)のおよそ2倍の地方票(165票)を獲得した。

 2018年の総裁選では安倍首相は石破氏を553票対254票のダブルスコアで下したものの、党員票は224票対181票と差が縮まった。「地方に強い石破」を見せつけた。

 そうしたことを嫌っているのか、13日に都内のホテルで開かれた水月会のパーティーには、安倍首相の姿は見られなかった。

「昨日までおいでになるとかならないとかという話があったので、よほど大事な公務があったか。あるいはお考えがあったか。それは私に聞かれてもわからない」

 石破茂会長はパーティー後、記者団の質問にこう答えたが、安倍首相はちょうどこの頃、地元関係者と会食中だったのだ。

首相動静によると、安倍首相は13日午後6時過ぎに全米商工会議所のトーマス・J・ドナヒュー会頭と面談した後、恵比寿の居酒屋で山口県東京事務所長と下関市東京事務所長と会食。1時間40分ほど過ごした後、午後8時半すぎに帰宅した。関係者はこう証言する。

「実はその3日前まで、5月13日の夜の予定は空いていた。地元関係者との会食予定はその後に入ったものだが、果たして水月会のパーティーより重視すべきものか」

 実は石破派のパーティーに安倍首相が参加しないのは、今回に限っていない。昨年も一昨年もその前も、そして4年前のパーティーにも、安倍首相はメッセージすら出していないのだ。

 他の派閥と比べていささか寂しい感じが否めなかったが、石破氏は「派閥は総裁候補を立てるところだ」と次期総裁選への果敢な意欲を見せた。

 また石破氏は「批判をする者を許さないという考えは民主主義のためにけっしていいことではない」と安倍首相を批判。こちらの溝の方がもしかしたら、韓国との溝よりも深いものかもしれない。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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