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【自民党総裁選】 ついに額賀派が竹下派に。影に石破氏か?

安積明子政治ジャーナリスト
かつて3名の総理を輩出した名門派閥の行方はいずこ…。(写真:Fujifotos/アフロ)

派閥分裂はとりあえず回避

 いよいよ額賀派も“世代交代”のようだ。2月8日昼に開かれた派閥の定例会には“反旗を翻した”参議院からの参加者はいなかったが、衆議院議員たちは安堵した。

「来週の派閥の定例会には参議院からも参加してくれるようだ」

「来月の派閥のパーティーのチケットも、売ってくれるらしい」

 報道によると会長の額賀福志郎氏は名誉会長になり、後任の会長には竹下亘氏が就任。副会長の茂木敏充氏が代表代行に“昇格”するという。額賀派のルーツはかつて日本を制し、自民党を牛耳った旧田中派。竹下登、橋本龍太郎、小渕恵三と3名の首相を輩出したかつての“総裁派閥”は、額賀氏が継承してからは総裁候補を出すことなく、55名の“小所帯”に甘んじてきた。

 とはいえ次期会長の竹下氏は71歳で、74歳の額賀氏とほぼ同年齢で、厳密には“世代交代”とは言い難い。また竹下氏を総裁候補に押す動きも見られない。要するに現状への不満が額賀氏を引きずり下ろした形だが、その背景には今年9月に予定される自民党総裁選の影響が見てとれる。

石破氏と青木氏が手を組んだ?

 その一報が報じられたのは、昨年の暮れのこと。石破派の中西哲参議院議員が参議院平成研(額賀派)に参加したことが話題になった。中西氏は2016年に参議院比例区で当選したが、もともとは参議院高知県選挙区の候補だった。

 しかし合区により高知県選挙区と徳島県選挙区がひとつになったため、選挙区を麻生派の現職の中西祐介参議院議員に譲って比例区から出馬。全国的には無名の中西氏が比例区で39万2433票もの個人票を獲得したのは、合区の候補が比例名簿で目立つように優遇されたことと、麻生派が全面的に支援したことが原因だ。

 よって麻生派は中西氏の派閥入りを期待したが、中西氏は翌年9月に石破派入りした。そして参議院では平成研という二重籍になったのだ。

 これを「石破派と額賀派の合流への布石か」と大手紙が報じた。次期総裁選に意欲を示す石破茂氏は、かねてから「青木詣で」していたというが、これも合区と関係があると見られている。

 2016年の参議院選で、青木幹雄氏の長男である一彦参議院議員が2選目を狙った。しかし島根選挙区は鳥取選挙区と合区になり、青木ブランドは鳥取県では通用しない。そこに“助け舟”を出したのが石破氏だった。鳥取県は「石破王国」とも言われている。

 そして1月25日には、参議院側の21名が派閥の定例会をボイコット。彼らを牛耳る自民党参議院幹事長の吉田博美氏は青木氏の腹心だ。

かつての総裁派閥はどこへ行く

 とはいえ、平成研が石破派と一緒になっても75名。94名の細田派にも及ばない。しかも平成研を飛び出た石破氏らを、平成研が全体的に受け入れるのか。かつて“鉄の団結力”を誇り、「一致結束・箱弁当」と揶揄されたこともある総裁派閥が目指す方向は、まだ定まっていないようだ。

 “自称ナンバー2”の茂木氏も、総裁候補を狙っているとされる。茂木氏は現在こそ線香事件で渦中にあるが、週刊新潮がこれを報じる前には参議院側に「出ていくのなら来年の参院選では公認を外すぞ」と影響力を示そうとしたと報じられた。よって線香事件が発覚した時、「ネタの出所は参議院平成研だ」とも囁かれている。

 次期総裁選では安倍3選が確実と言われているが、ポスト安倍はまだ空席のまま。何が起こるかわからない「夏の陣」を前に、未来の総理総裁を巡る動きはますます激しさを増していく。

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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