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【韓国・平昌オリンピック】安倍首相は参加すべきではない理由

安積明子政治ジャーナリスト
平昌オリンピックのメダルプレビュー式典(写真:ロイター/アフロ)

安倍首相の平昌五輪出席は韓国の悲願

 2月9日に韓国・平昌郡で開かれる冬季五輪の開会式に、安倍晋三首相に出席してもらいたい―韓国の康京和外相は昨年12月に来日した時、そのように要請した。韓国にとってこのオリンピックが成功するか否かは、国運がかかっている。とりわけ開会式は華やかに盛り上げるべく、有力国の首脳の参加を期待している。

 ところがアメリカはトランプ大統領は参加せず。中国の習近平首席も不参加で、派遣するトップは党内序列7位の韓正政治局常務委員。なので日本の安倍首相には是非とも参加してもらいたいという韓国の思惑も理解できなくはない。

 一方で文在寅大統領は、2015年12月の日韓慰安婦合意を事実上無効化しようとしている。JNNの1月の世論調査によると、こうした文大統領の態度に日本側は85%が「理解不能」と回答した。官邸もこれを理由に、安倍首相のオリンピック出席について「国会日程があえば」と事実上の拒否を示している。

「安倍首相は出席」と二階幹事長が主張するわけ

 ところが自民党の二階俊博幹事長が「安倍首相は平昌オリンピックに出席すべき」と言い出した。17日には公明党もこれに同調。しかしそれに乗るべきではない。

 そもそもこういうのはかつての自民党議員がよくやる手で、あくまで「社交辞令」と見るべきだろう。本心から思っているのかといえば、そうでもなかったりする。「日本はいろんな意見があって、多様性のある国だ」ということを示したい思惑や、今後の事情が変わった時に備えてという“保険”を買って出るということもある。

 もっとも二階氏の場合、全国旅行業協会会長としての顔もある。2016年の韓国からの旅行客数は中国に次いで2位で約509万人。インバウンド効果は「爆買い」の中国人旅行者に及ばないものの、小さくはない。2017年には北朝鮮による核実験・ミサイル発射によって訪韓する日本人旅行者の数が減少したが、平昌オリンピックを盛り上がらせて、その傾向に歯止めをかけたいというのが本音だろう。

韓国政府の本音とは

 近隣国として平昌オリンピック成功に協力を惜しむ気はないが、日本の国益を考えると果たしてどうだろうか。前述した通り、朴槿恵前大統領時代の慰安婦合意は文大統領によって覆されようとしている。これは政治的傾向が異なる前政権の業績を否定したいという政治的な事情もあるだろう。実際に朴前大統領にとっても、慰安婦問題は父である故・朴正煕大統領の時代の1965年の日韓基本条約で決着済みの話だが、再燃させてもいた。

そもそも歴代の韓国政府は、日本との約束を反故にすることが多かった。慰安婦問題については1993年の河野談話の前提として、金泳三大統領側(当時)が「認めてくれたら、今後は問題を蒸し返さない」と伝えてきたが、炎上し続けているのは周知の通りだ。

日本は毅然とした態度をとるべきだ

 日本側にも非はある。河野談話を出した河野洋平元官房長官は韓国が裏切ったとわかった時点で、談話を撤回すべきだったが、いまだにこだわっている。河野氏の長男である河野太郎外相も、外相就任会見で河野談話についての質問に正面から答えていない。日本が毅然とした態度をとらなかったために、それに歴代の韓国政府が乗じてきたというのが実情だ。それを止めるには日本が変わるしかない。

 とすれば、安倍首相は平昌オリンピックに出席すべきではないということになる。ただその前に韓国側が慰安婦合意についての態度を変えるなら、応じてもいいだろう。これはひとつの外交のカードである。そのカードの持つ意味は、平昌オリンピックで旅行業界が得る利益よりもはるかに大きいものだ。

 

政治ジャーナリスト

兵庫県出身。姫路西高校、慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格後、政策担当秘書として勤務。テレビやラジオに出演の他、「野党共闘(泣)。」「“小池”にはまって、さあ大変!ー希望の党の凋落と突然の代表辞任」(ワニブックスPLUS新書)を執筆。「記者会見」の現場で見た永田町の懲りない人々」(青林堂)に続き、「『新聞記者』という欺瞞ー『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)が咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を連続受賞。2021年に「新聞・テレビではわからない永田町のリアル」(青林堂)と「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)を刊行。姫路ふるさと大使。

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