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水虫や虫刺され、汗、紫外線…夏場に増える皮膚のトラブル、医師が対策を解説

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

夏になると皮膚科の待合室は混雑します。それは夏は様々な原因で皮膚病が起きやすくなるからです。今回の記事では、夏場に起きやすい肌トラブルの原因を分類して、それぞれの対策について解説していきます。

1.虫や細菌、かび、ウイルスによる肌トラブル

水虫:夏場のトラブル一番手

夏場に増える肌トラブルとして、まず一番多いのは水虫でしょう。みなさんご存知の通り、水虫は足の指の間がじゅくじゅくして猛烈にかゆみを伴う皮膚病です。原因は白癬菌。つまりかびです。かびですので、ジメジメして暗くて不潔な場所で繁殖します。サンダル、共用の足拭きマット、靴下などで増加する菌です。そのため、家族の中に水虫の人がいると他の人も感染しやすく、家族全員が治すことが重要です。次の夏に水虫を持ち越さないように、皮膚の症状が治まっても2週間から1ヶ月は薬を塗り続けるようにしましょう。治療は病院に行かずとも市販の水虫薬が良く効きますが、まずは診断が水虫であっているかが大事なポイント。足の指の間にできるじゅくじゅくは湿疹でも起こりうるため、水虫の薬を使っても良くならない場合は自己診断が間違っている可能性があります。また、水虫の薬はかぶれることも多く、薬を塗った範囲に合わせてブツブツとかゆみが広がって来た場合は薬を変更する必要があります。

虫さされ:外で遊ぶ機会も増えるから気をつけたい

虫さされも夏によく見かけます。例えば毛虫皮膚炎。これから秋にかけて増えてくる皮膚病ですが、毛虫を触った記憶がない人でも起きるのが特徴です。小さなチクチクした強いかゆみを伴うブツブツが体の広い範囲に広がります。毛虫皮膚炎の原因はチャドクガの幼虫が持つ毒針毛。この幼虫はツバキやサザンカなどの庭木にいるので注意が必要です。毒針毛は服に付着して、それがかゆみを引き起こすこともあります。この季節は洗濯物を庭木の近くで干すのは控え、草木の多い公園で遊んだ際はすぐに体をシャワーで洗い流し、チャドクガの毒針毛を皮膚に残さないようにしましょう。

自然の多い地域ではムカデ咬傷を診察することも多々あります。ムカデに噛まれた場合、多くの人は痛みを感じるのでわかります。噛まれた部位を中心に、徐々に赤みは広がり腫れ上がります。ムカデ咬傷は市販の薬で抑えるのは難しいので、皮膚科を受診してしっかり治療することが重要です。

マダニに噛まれた場合も注意が必要です。マダニは唾液に麻酔様物質を含んでいるため噛まれても気がつきません。良くあるケースは、「こんなところにほくろが?」と良く見てみるとマダニが皮膚にくっついた状態でありびっくりすることが多いです。ここでマダニを無理やり引き剥がすと挿し口が皮膚の中に残ります。病院でとってもらうようにしましょう。また、マダニはリケッチア感染症という病気を媒介します。リケッチア感染症とは、つつが虫病や日本紅斑熱などの病気を指します。マダニに刺されたあと1週間から2週間後に熱が出て、体に赤いブツブツが広がってくるのがリケッチア感染症です。マダニに噛まれた直後から抗生剤を飲んでいれば防げるので、そういう意味でもマダニに噛まれた後は油断せず皮膚科を受診することが重要です。

蜂に刺された場合、すべての人がアレルギー反応を起こすわけではないのでまずは落ち着いてください。蜂アレルギーは蜂に2回目以降刺された人が起こしやすい病気です。ゼイゼイと息が苦しくなったり、咳が出るようなことがあればアナフィラキシーを起こした可能性があります。蜂アレルギーのある人は注射薬エピペンを病院で処方してもらい、症状が出たらすぐに自己注射をするようにしましょう。

水いぼ:広がってからだと大変

水いぼも夏場に増える皮膚病です。ウイルスが原因のこの病気は触ったりひっかいたりすると周りの皮膚に広がるので注意が必要です。水いぼは自然に治ることも多くあり、いまだに取るか取らないかの判断は病院の医師によって異なります。私自身は、数の少ない段階でなるべく取ったほうが良いと考えています。体中に広がってしまってから水いぼを取るのは大変ですし、水いぼがあるとプールにはいれない学校もあります。病院ではシート状の麻酔薬を水いぼに貼って、痛みが出ないように工夫することが多いでしょう。小児科や皮膚科で治療してもらってください。ヨクイニンという飲み薬もよく使われますが、効果は限定的です。2週間から1ヶ月飲んでも治らない場合は病院を受診しましょう。

飛び火:皮膚トラブルをさらに悪化させないために

飛び火の多くは黄色ブドウ球菌と呼ばれる細菌が皮膚に感染しておきます。あせもや湿疹の部分をかきむしって、じゅくじゅくしたところからばい菌がはいることで飛び火になります。飛び火にならないように、汚い手で湿疹をかきむしらないこと。毎日石鹸でしっかり洗うことが大事です。飛び火になってしまったら、病院で治療を受けつつ患部を毎日よく洗うようにしましょう。

2.汗による肌トラブル

写真:ideyuu1244/イメージマート

あせも:汗をかいたらふきとろう

代表的な病気があせもです。あせもは汗疹(かんしん)という病名が付きます。大量に汗が出ることで汗の管がつまり、皮膚の中に汗がつまって起きる病気です。汗をかいたら表面をふきとって、汗の管の出口を塞がないようにする工夫が必要です。

脂漏性皮膚炎:黄色いフケのようなものに注意

汗が直接の原因ではないですが、汗をかくことによって悪化する皮膚病もあります。脂漏性皮膚炎という病気です。脂漏性皮膚炎は乳児の顔や頭にできやすく、黄色いフケのようなものが赤いブツブツと一緒に広がります。汗をかいたら濡れタオルでやさしくふきとってあげることで脂漏性皮膚炎を防ぐことができます。

マスク皮膚炎:夏でもマスクをする今だからケアを

マスク皮膚炎も汗が大いに関係している病気でしょう。マスクの下は蒸れやすく、湿疹やニキビの原因となります。女性の場合、マスクの下のお化粧はやめるか薄くすること、使い捨てのマスクは汗や化粧で汚れたら変えることが必要です。

3.紫外線によるトラブル

写真:アフロ

日焼け:サンスクリーン(日焼け止め)の塗り方・選び方は

日焼けによる肌トラブルは短期的な問題と長期的な問題があります。短期的な問題としては、極端な日焼けによるものです。サンスクリーンを塗らずに1日中海水浴を楽しんだその夜、肩から背中にかけての日焼けが痛くて夜も眠れない。そんな患者さんが救急外来にいらっしゃいます。日焼けも度を過ぎればやけどです。長時間直射日光に当たる場面では、サンスクリーンは2度塗りし、3時間経過したらもう1度塗るようにしましょう。

肌が弱い人はサンスクリーンの選び方も大事です。サンスクリーンには紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2種類があります。一般的に紫外線吸収剤の方がかぶれやすいため、肌が弱い人は紫外線散乱剤(ノンケミカル)を選ぶようにしてください。

皮膚がん:ダメージの蓄積は避けたい

長期的な肌のトラブルとしては、皮膚がんの発症です。紫外線は皮膚の細胞のDNAにダメージを与えます。若い頃はDNAのダメージも修復できますが、年齢とともに修復の力は衰え、いずれがん化します。紫外線を浴びやすい部位には、日光角化症というがんの一歩手前の病気や、基底細胞癌とよばれる皮膚がんができやすいことが知られています。また、日本人には少ないですが、ほくろのがんとも呼ばれる悪性黒色腫(メラノーマ)は紫外線の影響が大きいがんの一つです。若い頃からできる限り直射日光は避けるようにしてください。

 まとめ

以上、夏場に増える皮膚病とその対策をまとめてみました。夏は肌を露出する機会が増えますので、皮膚病に気がつくことも多いと思います。予防できる皮膚病はしっかり予防して、綺麗な肌を保つようにしてください。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとしてAERA dot./BuzzFeed Japan/京都新聞「現代のことば」などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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