お医者さんと話が通じない?医療におけるコミュニケーション・エラーの原因と対策 前半

(写真:アフロ)

医療の現場では様々なコミュニケーション・エラーが起きています。

コミュニケーション・エラーは医療事故と直結するため、システムとして対策が取られつつあります。一方、患者さんの気持ちに配慮したコミュニケーション・エラーに関しては、いまだ十分に対策が取られていません。

今回は、医療コミュニケーションに関して積極的に情報発信をしている2人の医師(山本健人先生、堀向健太先生)にお話を伺いました。医療の現場では、どういったコミュニケーション・エラーがあるのでしょうか?そして、どうやって解決すればいいのでしょうか?全2回にわけてお送りします。

左から順に、山本健人医師、堀向健太医師、筆者本人
左から順に、山本健人医師、堀向健太医師、筆者本人

大塚:今回は医療現場でのコミュニケーション・エラーについて、お話をお聞きしたいと思います。山本先生、医療現場におけるコミュニケーション・エラーはどういうものがあるでしょうか。

山本:一昔前と違って、患者さんは病院に来る前に自分の症状や病気を、自分である程度調べていると感じます。その調べる手段が膨大になっているというところが一つのリスクになっていると感じるんですね。その調べる情報源の最たるものがインターネットで、大半の方は病院に来る前に自分の症状や病名、「症状名+原因、治し方」といったワードで検索して、自分なりに解釈してから病院に来る方が多かったりします。

他にも週刊誌や書籍などさまざまな情報源が膨大すぎるぐらいあるので、そこで何がしか誤った情報が入っていた場合に修正が少し難しかったりします。

患者さんも、われわれが説明することと、事前に得た情報を同価値として対等に見て評価した上でどれを採択しよう、というような考え方をします。

そういう意味では、われわれが診察室で患者さんを見る前に、既にある程度、勝負がついてしまっているんですよね。

それだけならいいんですが、事前に情報収集した結果、「病院に来ない」という選択に至る人もいますよね。そうなってしまうと、もうわれわれが出会うことすらできない。病院に来る人にしか治療を提供できない、現代の医療はそういう設計になっていますから。

ですから、これが一つのコミュニケーション・エラーの原因になり得ます。

大塚:堀向先生は小児科でアレルギーを専門にされていますけれども、先生から見たコミュニケーション・エラーはどういうものがありますか。

堀向:現在の医療現場では、医学の進歩によってお話をしなければならないことが増えている一方で、おひとりおひとりの時間がなかなか確保できないというところがあります。例えば、アレルギーの分野だけでも話をしないといけないことが膨大に増えてきています。

そんな中で、患者さんもいろんな話を聞きたいと受診されるので、それのギャップが大きくなっているのですね。できることはたくさんあるしお話しできることはあるんだけれど、時間は限られているんです。

そこでコミュニケーションがうまくいかなくて話がうまく伝わっていかない、もしくは不満が生まれてしまう、そういった部分が例えば患者さんにはあると思います。

そして、患者さんだけではなくて、どの医療もどんどん発達している分、コメディカル(注:看護師や薬剤師など医者以外の医療スタッフ)の方々に対してお話をするのもますます広がってきています。

自分自身が小児科範囲内でも、すべてを自分自身がアップデートできているわけではありません。ですので、多くの分野をカバーしなければならないコメディカルの方々はさらに大変な状況だと思うんですよね。

新しい話題とか、こうなっているんだという話をしたとしてもそこがうまく伝わらなくて、それがまた今度患者さんにうまく伝わらなくてというところがあってといった、コメディカルに対するインフォメーションも難易度が上がっているというところはあるんじゃないかなと思います。

大塚:がん患者さんを診察する上で、治療が思うようにいかない患者さんとどのような関係を築いていくか難しい場面が多くあります。緩和ケアの先生たちはしっかりと勉強をされトレーニングを積まれてきていますが、がん治療医がそこできっちりと患者さんとコミュニケーションを取れているかというと、ギャップがあるように感じます。

例えば、がん治療の途中で緩和ケアを紹介した場合に、さじを投げられたと思って離れてしまう患者さんが残念ながら一定数います。これは医療者側のコミュニケーションに大きな問題があるのですが、そういった患者さんたちが民間療法だとかサプリメントなどの根拠が乏しい方法に走ってしまい、本来であれば使わないで済むはずのお金と時間を浪費することがあります。

また、本当はもう少し健康に過ごせる時間が長く続くはずだったところに、急にそういった民間療法に走ってしまったせいでガタガタと具合が悪くなり、有意義な時間を過ごせなかったという話も聞きます。

写真AC
写真AC

大塚:医者と患者さんのコミュニケーション・エラー以外に、医者と看護師さんのコミュニケーション・エラーも問題ですよね。

山本:そうですね。医療現場で患者さんと直接的に接する時間が長いのは看護師なので、医師が看護師から上手に情報を引き出すことによって、患者さんの情報をより効率的に知ることができると思っています。

そういった看護師との上手な関係を築くことで、患者さんに間接的にいい治療を与えられたり、いい情報収集ができたりする。ただ、看護師との接し方を、医師があまりトレーニングされていないですよね。それは一つの課題になっているなと思っていて。

看護師が医師のお手伝い、などという風に誤解している若手の先生もいます。看護師は看護のプロフェッショナルであって、われわれとは違う専門性を身に付けている人たちですから、上手に分業しないといけません。われわれは、自分たちができないけれど看護師ならできる、というようなところで、きちんと仕事を任せるというのが理想です。

そこが少しうまくいっていないケースが多くて、効率的に協働できていないという印象はありますね。

大塚:堀向先生はコメディカルの方とのコミュニケーション・エラーで気になるところはありますか?

堀向:例えば診療の真っ最中、患者さんとお話をしているときに、別の患者さんのご家庭から電話がかかってくるのを対応されるのは看護師さんが多いと思うんです。そのときにその情報を吸い上げていただく必要が出てきます。

でも、大学の外来の看護師さんはどこも少なく、いつも同じ看護師さんというわけでもありません。ですので、うまく話を吸い上げることが難しい、そして我々も話がうまくできなくてという話がでてきます。

ですので、外来が終わって今日はこういった電話がありました、こういった理由があってこういう話をしているんですよと、話をもう1回しないといけないと考えています。

そして電話で話をしたような内容は、本当は私たちが吸い上げていないといけない部分を看護師さんや、もしくは事務の方がやってくださっている部分があるので、そこは申し訳ないなと思いながら、共感して一緒に患者さんと向かい合っているんだと伝えるように気を付けています。

大塚:コミュニケーション・エラーが起きると最後、患者さん側に迷惑がいくし、混乱として伝わるわけですよね。

堀向:そうですね。人間が出来ることはやっぱりシングルタスクであってマルチタスクはできないですから。

ですので、多人数でマルチタスクができるようにしていくために、普段していることをコミュニケーションして相互の理解をしておかないと困るだろうと思うんです。だからその終わったときのフォローというか、そういったものは重要かなと思っています。

コメディカルとの話だけでなく、若い先生方と外来をしているときには、外来が終わったときに今日困ったことはなかったかとまず話を聞きに行くことから始めています。今日困ったことはこういったことなんだという話が出てくれば、そこに関してその場で5分ぐらいのレクチャーをします。これは話を一致させておくためです。それを繰り返していると別の先生はこんな話をしたというのが少なくなってくるのかなと思います。

大塚:確かに、同じ病院の医者なのに、それぞれ話が違うというのは困りますね。

また、薬の説明にしても病院で聞いた医者の説明と、薬局の薬剤師さんの説明が違ったという話も聞きます。看護師さんも違うことを言ってたとなると、患者さんにとってみたら誰を信じていいか分からない。病院内部でのコミュニケーション・エラーが患者さんに迷惑をかけているということは、残念ながらよく聞く話です。

山本:だから僕自身は、スタッフによって患者さんに違う説明がされないように、ということは結構気にしていて、看護記録や診療記録を上手に利用する必要があると思っています。

「ここに戻ればお互いのコンセンサスが得られた情報が手に入る」という、ホームみたいなところを決めておくということは結構大事だと思っているんですね。

この辺りはシステムで解決していかないといけません。やっぱり大勢の人が関わっていると、それぞれが気を付けていたって絶対に情報は分散しますよ。

(後半に続きます)