肌が乾燥してかゆいあなたに

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

肌は乾燥するとかゆくなる

秋から冬にかけて、空気は乾燥します。

特に暖房をかけた部屋では、相対湿度(飽和できる水分量に対する割合)の低下に加えてエアコンの影響により、部屋の中の絶対湿度(空気中に含まれる水蒸気の量)も下がります。

そのため、肌からの水分蒸発はすすみ、乾燥肌(ドライスキン)になります。

ドライスキンで困るのが肌のかゆみです。

この季節、お風呂上がりに肌がかゆくなる人も多いのではないでしょうか。

背中や腰回り、すねなどにかゆみが出て、かき続ければ湿疹となります。湿疹も長引けば皮膚に黒っぽい色がついてしまい、色が落ちるまで時間がかかります。

肌が乾燥して困ることは、かゆみだけではありません。

ドライスキンがきっかけでアレルギーになる

こともわかってきました。みなさんが思っている以上にドライスキンはいろんな病気に関係しています。

まずは肌の乾燥を防ぐことです。ドライスキンを予防し、かゆみやアレルギーを引き起こさない方法を3つ紹介します。

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(写真AC)

1. 湯船の温度は38℃から40℃

まずお風呂のお湯は温度を低めにすることをおすすめします。適温は38℃から40℃です。

熱い湯船やシャワーを浴びると、そのあとにかゆみが起きやすく、ひっかいた結果として肌の乾燥につながります。

皮膚には末梢神経が伸びてきていて、ここからかゆみが脳に伝わります。皮膚にある末梢神経は、43℃以上の熱刺激が反応してかゆみや痛みとして認知します。

熱いお湯は、その温度によってかゆみが誘発されてしまいます。お風呂の温度設定を38℃から40℃にしておくのが大事です。

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(写真AC)

2. 保湿剤を塗る量はケチらない

保湿剤を塗るときに、みなさんどれくらいの量を使ってますか?最近、病院で塗り薬を処方するとき、患者さんに「どれくらいの量を塗るか」きちんと指導するようになってきました。

Finger Tip Unit(フィンガー・チップ・ユニット、FTU)

という考え方があります。

人差し指の第一関節までチューブで薬をしぼり出します。この量が手のひら二枚分の範囲で塗る薬になります。

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やってみていただくとわかるのですが、結構な量です。

おそらく多くの人が思っていたよりもたくさんの保湿剤を塗らなければいけないことに気がつくと思います。

FTUは慣れてくれば、目分量でわかってくるのですが、面倒くさがりの方には別の方法があります。

保湿剤を塗った部分に、ティッシュペーパーを貼り付けてみてください。このとき、ティッシュペーパーが落ちなければ十分な量を塗れてます。

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(写真AC)

3. とにかく先手必勝

赤ちゃんの段階から保湿を行うとアトピー性皮膚炎が予防できるという研究報告があります。(1)

保湿はお子さんが生まれてからすぐ、はじめた方が良いでしょう。そして、今の乾燥する時期は先手必勝で保湿をすべきです。

ドライスキンはアトピーの原因になります。そして、その後、喘息やアレルギー性鼻炎、食物アレルギーなどを引き起こします。

こういった一連のアレルギー疾患をアレルギーマーチ(アトピーマーチ、アトピックマーチ)と呼びます。

ドライスキンは物理的に皮膚のバリアが弱くなった状態です。この隙をついて、外からはアレルゲン(アレルギーのもととなる物質)が体の中に侵入してきます。

皮膚から侵入した異物は、体の免疫システムが敵と認識し、アレルギーを引き起こします。

例えば、ピーナッツアレルギーの場合、ピーナッツのゴミが皮膚から侵入することでピーナッツを体の敵と認識します。

ピーナッツをアレルゲンとして認識した体の免疫は、次にピーナッツを食べたとき、敵の侵入と勘違いをし、体の外へ排出しようとします。結果、吐いたり下痢をしたり、ひどい場合は咳が出て呼吸困難となります。

もっと細かく知りたい人のために

そもそも皮膚が乾燥するとなぜかゆくなるのでしょうか。この理由については、実はあまりよくわかっていませんでした。

ところが最近、皮膚の乾燥とかゆみの関係について興味深い論文が出ました。(2)

理研のグループは、皮膚のバリアが弱まるとかゆみを感知する神経に異常が生じることを発見し報告しています。

もともと皮膚の最外層にあたる表皮では、体の中の水分を蒸発させないように、がっちりテーピングされています。

お風呂のタイルのようなものが敷き詰められた構造が皮膚の表皮です。このタイル一枚一枚は、ゴムパッキンのようなもので目張りされており、体の中の水分を外に逃さないように働いています。

肌の乾燥は、このゴムパッキンがボロボロになった状態に近いものと想像してください。

タイルの間から水分は通過し、うるおっていた皮膚の水分は簡単に空気中へと蒸発します。

理研のグループが発見したのは、このゴムパッキンの部分に末梢神経が伸びており、ときどき”ぶちっ”と切れるということです。

この神経が切れるというのは正常(なんのために神経が伸びるのかは未だ不明)で、ゴムパッキンがボロボロとなり、神経が切れない方が皮膚としては異常です。

皮膚の外側と伸びていってしまう神経が切れることで、外界からの刺激が安易に中枢に伝わらないようにできています。

ドライスキンはそれだけで、末梢神経の興奮をかゆみとして脳に伝えてしまう可能性が明らかとなりました。

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(筆者作成)

まとめ

肌の乾燥とかゆみを防ぐためには、熱いお湯に浸からず(38℃から40℃)、お風呂上がりはすぐにたっぷりの保湿剤を塗り、ドライスキンが始まる前に先手必勝で保湿することが重要です。しっかり保湿をしてアレルギーを防ぎましょう。

参考文献

1. Horimukai K. et al. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allergy Clin Immunol. 134(4):824-830.2014

2. Takahashi S. et al. Homeostatic pruning and activity of epidermal nerves are dysregulated in barrier-impaired skin during chronic itch development. Sci Rep.13;9(1):8625.2019

注:FTUの写真筆者撮影