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3月10日に配信開始!大ヒット韓国ドラマ『ザ・グローリー』の後半の、気になるポイントは?

渥美志保映画ライター
(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

昨年末に配信され瞬く間に世界的な大ヒットとなった『ザ・グローリー ~輝ける復讐~』。高校時代にいじめられっ子だった主人公が、18年後、かつてのいじめっ子たちに復讐していくお話です。先の先を読んで計算し仕掛けていく緻密な計画と、その計画を自身の人生をかけて冷徹に大胆に実行してい主人公ドンウンを、息をのみながら見守っているうちに、前半8話を一気見してしまった、なんて人も多いんじゃないでしょうか。今回は3月10日に配信される後半を前に、前半のリビューと、後半のポイントを解説したいとおもいます。ポッドキャストも配信しておりますので、よろしければこちらもご参考ください。

ということで、まずはざっとしたストーリーを。物語は主人公ドンウンの高校時代から始まります。親にネグレクトされ一人貧しく暮らすドンウンは、学校ではお金持ちのお嬢様ヨンジンが率いるグループの標的にされ、壮絶ないじめを受けています。

担任教師は耐えかねて告発した彼女を暴力で黙らせ、ドンウンの母親は、いじめっ子の親たちから口止め料だけ受け取って姿を消します。高校から追い出され、たった一人になったドンウンは、ヨンジンへの復讐を胸にどうにか生き延びます。18年後、いじめっ子たちはそれぞれに華やかな社会の一員となっています。特にテレビ局の気象キャスターとして活躍するヨンジンは、大手企業の社長と結婚、一人娘イェソルを設け、豪邸で暮らしています。ドンウンはそんな彼女の前に、娘の担任教師として現れます。

気象キャスターとして活躍中のヨンジン。
気象キャスターとして活躍中のヨンジン。

【ポイント1】ミステリアスなソン・ヘギョに引き込まれる!

ドラマの最大の魅力は、なんといっても主演女優のソン・ヘギョです。ここ数年は『愛の不時着』のヒョンビンの元恋人として、または『ヴィンチェンツォ』のソン・ジュンギの元妻として知られている人ですが、もう少し古くからのファンにはイ・ビョンホンの元恋人としても知られています。大物俳優の名前ばかりでてきますが、全員がドラマで恋人役を演じた人で、共演者キラーとして知られる人でもあります。

私が考える彼女の魅力は、なんといっても笑わない表情の強さ、吸引力というんでしょうか。他人を寄せ付けない孤高な空気と、でも誰かを求めているような寂しさが漂って、目が離せなくなってしまうようなところがあるんですね。特にシリアスなドラマでは、登場するだけで画面にドラマティックな空気が漂います。『ザ・グローリー』で演じるドンウンは、そんな彼女にぴったりのはまり役です。

アンチさえもドラマに引きずり込む貫禄の大女優、ヘギョ様とよびたいです。
アンチさえもドラマに引きずり込む貫禄の大女優、ヘギョ様とよびたいです。

【ポイント2】復讐の成否を分ける存在=ヨンジンの夫ドヨン

ドンウンはいじめの主犯ヨンジンを最大のターゲットとしているんですが、「将を射んとする者はまず馬を射よ」という感じで、彼女の夫ドヨンに近づきます。ドヨンの唯一の趣味である囲碁を10年計画くらいで学び始めた彼女は、ドヨンが通うおじさんだらけの囲碁クラブに出入りし、「賭け勝負」で彼らから撃破し、評判になってゆきます。ドヨンはそんな彼女が気になり、来るたびに彼女の姿を探すようになり、やがては自分から声を掛けるようになります。

ドンウンの計画のすごさは、この夫が自分から妻の過去の真実にたどり着くよう、ちょっとずとちょっとずつ事実を仕込んでゆくこと。いじめっ子グループの「パシリ」であるミョンオを取り込み、その名前で二人が一緒にいる写真をドンヨンに送り付け、ドヨンとヨンジン一味をつなぎ、さらに「娘イェソルの秘密」へと導いてゆきます。夫ドヨンがその秘密を知れば、最終的にヨンジンからすべてを奪い取ることができる、という寸法です。ドヨンの動きは後半の展開を握る大きなカギとなります。

ストイックで神経質な印象のドヨンは、「炭水化物は食べないので」というセリフが衝撃でした…
ストイックで神経質な印象のドヨンは、「炭水化物は食べないので」というセリフが衝撃でした…

【ポイント3】実はドンウン以上にヤバい人?訳ありの年下男子ヨジョン

もうひとつのカギを握るのは、大学時代からドンウンのことが好きで、彼女に最初に囲碁を教えた年下男子ヨジョン。ドンウンに「私に必要なのは白馬の王子ではなく、一緒に剣舞を踊ってくれる処刑人」と言われたヨジョンは、彼女の復讐を手伝うことになります。ドンウンは大病院の跡継ぎ息子である医師ヨジョンを「明るい世界しか知らないお坊ちゃま」と思い込んでいるのですが、彼は父親を殺害されたトラウマを抱えており、さらに刑務所にいるその犯人から今も手紙による陰湿な嫌がらせを受けて居ます。精神科のカウンセリングを受けているのは、彼が「刃物で犯人を刺し殺し、父の復讐をする」というくらい衝動を抱えているから。前半には父親から受け継いだメスがご丁寧に登場しており、これがどこかで使われてしまう局面もあるかもしれません。ドンヨンはこのことを全く知らず、彼女の復讐における最大の不確定要素と言えそうです。

「陰のある年下男子」を演じてひっぱりだこの人気俳優イ・ドヒョン
「陰のある年下男子」を演じてひっぱりだこの人気俳優イ・ドヒョン

【ポイント4】復讐の相棒ヒョンナムに、号泣させられそうな予感…

最後の一人は、ひょんなことからドンヨンの復讐の相棒となった、中年主婦ヒョンナムです。彼女はヨンジンの家の近所に住む主婦で、娘ともども夫からひどいDVを受けて居ます。ドンウンの計画を知った彼女は、「私の夫を殺してくれるなら」という交換条件で復讐を手伝うことに。関係者を尾行しその行動を報告するのがヒョンナムの仕事なのですが、彼女は「自分はスパイの才能があるんじゃないか」と自慢げに言うほどのいい仕事をします。同時にユーモアたっぷりの彼女は、この辛くてヘビーなドラマで唯一、無邪気な笑いを提供してくれる存在です。

でもこの関係は、おいおいドンウンの弱点となっていく可能性があります。「最初から地獄に落ちるつもり」のドンウンは人間的な感情を禁じているようなところがあり、だからこそヒョンナムとも直接顔を合わせずに連絡を取る方法をとっていたのですが、人懐っこいヒョンナムはその掟をちょくちょく破ります。その上「ピクニックみたい」なんていいながら、ゆで卵持ってきたりキムチ持ってきたりする。実はこのドラマでドンウンは笑顔を浮かべないと同時に、ほとんどものを口にしません。それは誰かと一緒にものを食べることは、韓国の人間関係の根本にあるもので、そこで楽しさを味わうことで、復讐という自分の目的を忘れてしまうことを恐れているんです。事実、ヒョンナムにつられて笑いそうになる場面では、顔背けて必死でこらえているわけです。

ヒョンナム役を演じるのは『賢い医師生活』で視聴者を号泣させたヨム・ヘラン。後半はこの人に号泣させられそうな…。
ヒョンナム役を演じるのは『賢い医師生活』で視聴者を号泣させたヨム・ヘラン。後半はこの人に号泣させられそうな…。

でもこの素人スパイのヒョンナムは非常に危なっかしく、例えば祈祷に入れ込んでいるヨンジンの母と、彼の犬たる元警察官、さらにおそらくミョンオを手にかけているヨンジンにつかまりでもしたら、ドンウンはヒョンナムを見捨てることができるのか。ヒョンナム役を演じるのは、大ヒットドラマ『賢い医師生活』でも視聴者を号泣させた名女優ヨム・ヘランで、今回もそういう展開になりそうな気も。

もちろんその他にも気になる点は多く残されています。

ドンウンは本当にヒョンナムの夫を殺害することができるのか。ドンウンの前にいじめの標的だった少女を殺したのは誰だったのか。ドンウンの復讐リストにあるドンウンの母親はどんなふうに登場するのか。さらにドンウンにとっての復讐のゴールはどこなのか、相手を殺すことなのか、それとも別のことなのか。復讐を成し遂げた後のドンウンは、どんな地獄へと落ちてゆくのか。人間として生きていくことはできるのか。

こうしたポイントを抑えつつ、後半の配信をお楽しみいただければと思います!

『ザ・グローリー ~輝かしき復讐~』Netflixにて3月10日より

Graphyoda/Netflix

(C)2023 Netflix, Inc.

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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