宝塚の男役も顔負け!ケイト・ブランシェットの華麗なるイケメンぶり

今回はケイト・ブランシェット&ルーニー・マーラという美女二人の恋愛もの『キャロル』をご紹介します。「美女ふたりがそれぞれに」じゃなく「美女二人が恋愛関係に陥る」お話、大雑把に言うとレズビアンものなんですが、そういう言い方をしてる自分が恥ずかしくなっちゃうような、純粋な恋愛もの。胸がきゅーんとなる作品ですー。

美しいベッドシーンにも挑戦した二人は、29日に発表されるアカデミー賞で主演女優&助演女優でそれぞれのミネートされております。女子はもちろん、男子にも見てもらいたいのは「こんな人なら女子はメロメロ」というキャラクターが登場するから!女子×女子の恋愛なのに、なぜなのかな~?

マジで恋する5秒前(MK5)のテレーズ
マジで恋する5秒前(MK5)のテレーズ

さて、まずは物語。始まりは1952年のクリスマス。デパートの売り子として働くテレーズは、客として現れた美しい年上女性キャロルに一目惚れ。あるきっかけで二人は仲良くなり、クリスマスを前にしたある日、キャロルはテレーズを家に招きます。

そこにたまたま訪ねてきたキャロルの離婚調停中の夫は、テレーズを見るや大激怒。まだキャロルに未練がある彼は、キャロルが離婚を求める理由が「女性を愛したいから」だと知っているんですね。

夫はイブまでキャロルの家にいる予定だった娘を連れ帰り、「道徳的条項」を持ち出して裁判所に単独親権を主張、キャロルは娘としばらく会うことができなくなってしまいます。その寂しさを紛らわそうと、キャロルはテレーズをドライブ旅行に誘うのですが――これが思わぬ事態を引き起こし、キャロルは窮地に立たされてしまいます。

「肉食系ハンター」モードのキャロ様
「肉食系ハンター」モードのキャロ様

いろんな見どころのある映画ですが、個人的に押したいのはなんつってもケイト・ブランシェットのイケメンぶりです~。どんだけかってことを、キャロルが最初に登場するデパートのシーンで解説してみましょう。

2人の距離は結構あります。キャロルは遠くの売り場で商品を見ていて、テレーズがこれを人波の中に見つけます。キャロル、ちょっとやらかして“あら、どうしましょう”とあたりを見回し、テレーズの視線に気づき、一瞬目があって、とまあこれで15秒くらい。別の客に遮られるうちにキャロルが消え、テレーズがっかり……と思いきや、キャロルは目の前に。

キャロルがテレーズの前のショーケースの上に、自分の皮手袋を荒っぽく、ポン!、と投げ出したのは、これを「印象的な忘れもの」にするため。わざわざ配達対応の商品を買って住所を伝票に残し、帰り際に振り返って「あなたの帽子、可愛いわ」と笑顔で一言。一瞬の視線でロックオンして即座に餌を蒔き、サッとキレイに帰ってゆく、なんという華麗なる肉食系ハンターぶり。てか、宝塚のトップスターか!と思うような流し目ぶりで、これテレーズじゃなくても、まんまと食いついて手袋を送り届けてまうに違いありません。

「ジェントルマン」モードのキャロ様
「ジェントルマン」モードのキャロ様

そんなキャロ様(キャロ様?)ですが――まあこれは当時の同性愛が今とは比べ物にならないくらい秘匿されていたせいでもありますが――物理的な距離の詰め方は、すごーく慎重です。

テレーズが可愛いので思わず触れちゃうこともありますが、彼女が身を固くすると、いかんいかんと距離をとります。この辺も宝塚のお芝居のキャラっぽい。言葉が少ないテレーズが何が好きなのかを観察し、趣味で写真を撮っていると知れば、がんばってと勇気づけ、今度見せてねとついでに家に遊びに行く算段をつけ、カメラをプレゼントしながら、合間には「男なら誘わない」とか「離婚できてすっきり」と自分の方向性もさりげなくアピールし、相手から落ちてくるのを根気よく待ちます。ハンターでジェントルマンって、なんなの、カッコよすぎじゃないのさあ~!“マン”じゃないけども!

フォトグラファーになりたい私の気持ち、ボンクラは全然わかってくれないのよね
フォトグラファーになりたい私の気持ち、ボンクラは全然わかってくれないのよね

実はテレーズには男性の恋人もいて、コイツ(最初からコイツ呼ばわり)も悪いヤツじゃないんですが、「君のために」とやることがいつも明後日の方向で、なんつうか、もろ男なんですね(当たり前かw)。

いやいや、コイツがやることは世間一般の女に対しては有効かもしれませんが、少なくともテレーズは望んでない。自分との旅行には行かないくせに!と怒る恋人に「彼女を好きなのは話ができるから」と言い返すテレーズの思いが、さらにキャロルへと向かってゆくのは当然のことです。

悪い奴じゃないが、ちょっとボンクラ
悪い奴じゃないが、ちょっとボンクラ

ふたりは女性同士だし肉体的な部分も描かれてはいるんですが、実のところ、そこにある恋愛の機微は性別なんて無関係な普遍的なもの。そしてふたりの旅から始まる試練もまた、恋の障害に悩み苦しんだことのある人なら誰でも知っている切ない胸の痛みです。

ケイトの話ばっかりしちゃいましたが、この関係を通じて成長してゆくテレーズ役のルーニー・マーラもすごくいい。あのひたむきな瞳の説得力がなければ、あのラストまでもっていけなかったかもしれません。

実は保守的なハリウッドで作られた「同性の恋愛もの」ではあまりないラストなんですが、もし「え?普通じゃん」と思ったなら、この映画は「同性の恋愛もの」でなく「恋愛もの」として成功しているということじゃないかなーと思います。

さて最後にちょっと別の面から。

この映画、50年代のファッションもすごく素敵なんですが、それだけじゃなく画面の粒子の粗さとか、色調とかもすべて50年代のクラシック映画風にこだわった、すごく凝った映画です。

監督トッド・ヘインズは時代の空気を切り取るのが上手で、『キャロル』と同じ50年代を舞台にした『エデンより彼方に』が有名ですが、30~40代ならデヴィッド・ボウイをモデルにした『ベルベット・ゴールドマイン』がおすすめかも。お時間あれば、是非合わせてごらんくださいね~。

『キャロル』

2月11日(祝)より

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