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正月第二弾の公開映画は秀作ぞろい!1月におすすめの「絶対面白い映画」5本!

渥美志保映画ライター

皆さま、明けましておめでとうございます~!

旧年中はご愛顧いただきありがとうございました。今年も面白い映画をご紹介していきますので、よろしくお付き合いくださいませ!というわけで早速、1月の「絶対面白い映画」5本をご紹介します!『スターウォーズ』も引き続き公開していますが、年が明けるといろーんな映画が公開されてきます。2月頭にかけてはオスカーに絡みそうな映画や、絡むけど受賞はどーかなー?な映画も徐々に公開されてきます。そうです、面白い映画が多い時期ですよ~。というわけで、大作からコメディからシリアスなアート系まで、5本をピックアップしてご紹介!なぜか「怖い」映画が多いけども!イチオシは――あああ、今月はどれも甲乙つけがたい~!

感染する5秒前
感染する5秒前

セックスを媒介に感染したが最後、どこにいても自分を殺すまで追いかけてくる謎の存在を描いたホラー。最近付き合い始めた彼氏ヒューと初めてセックスした後、「きみに“それ”を感染させた」と告白されたジェイ。その「それ」とは、感染者にしか見えず、その姿自体は人間ではあるものの、現れるたびごとに姿が異なり、動きはのろいけど感染者を殺すまでずっと諦めず、どこまでも追いかけてくる謎の存在です。へ、どういうこと?意味わからん?って思いますよね~。どこにいても不気味に追いかけてくる「それ」に悩まされ、恐怖におびえるジェイですが、そもそも「それ」は彼女にしか見えないから、最初は周囲に全然信じてもらえません。友達は「疲れて変なもんが見えちゃってるのかな」なんて思いつつ、「大丈夫私たちが守るから」と一緒に逃げてくれたり匿ってくれたりするんですが、当然「それ」はどこまでも追いかけてきます。彼らがやがてその存在を信じはじめると、効いてくるのが「誰かとセックスして感染させれば助かる」っていう設定です。「俺に感染させればいい」なんつって、セマって来る男がいるわけです。セックスしたい、でもすることに罪悪感がある、どうすんの、するの?しないの?って部分が、ハイティーン女子の心の揺れにうまい具合に絡み合います。もちろん怖さも抜群。そのうち画面の中でジェイに近づいてくる人すべてが「それ」に見えてきて、これが不気味この上ありません。全米4館公開から1600館まで拡大したという、エンタメかつ不条理という秀作ホラーです~。詳しくはこちらも!

公式サイトはこちら

1月8日(金)公開

『ブリッジ・オブ・スパイ』

東ベルリンってすっげーところだな、って感じのトム・ハンクス
東ベルリンってすっげーところだな、って感じのトム・ハンクス

冷戦時代を背景に、秘密裏に行われた米ソ東独の人質交換の実話を描くサスペンス。「死刑確定」が出来レースの裁判でソ連のスパイを弁護し、その関わりから彼を使った東ベルリンでの「人質交換」の交渉をすることになった民間の弁護士ジェームズ・ドノヴァンを、トム・ハンクスがいつも通りの安定のクオリティで好演。監督もスティーブン・スピルバーグですから、これはもう鉄壁の布陣というほかありません。わずかな誤解ですら戦争が始まりかねない冷戦下の緊張感の中で、一歩も譲らない強さと根気を保ち、敵すらも信頼させる人間的魅力にあふれるドノヴァンを、最強の説得力で演じられるのはトム・ハンクスならでは。ギリギリの交渉のサスペンスもたまりません。マーク・ライランス演じるソ連のスパイ、アベルとの交流を通じて描かれる、国家対立とは異なった部分で貫かれる「自分自身の正義」にもヒューマニズムが溢れます。壁によって仕切られた東ベルリン(というか、壁に囲まれていたのは西ベルリンなんですが)という、今となっては「おとぎ話」のようにしか思えない世界が実際に存在していたことも、あらためてすごくビックリ。

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1月8日(金)公開

『エージェント・ウルトラ』

鼻血垂らしてる、オバカ系ジェイソン・ボーン
鼻血垂らしてる、オバカ系ジェイソン・ボーン

田舎町の客の来ないコンビニで働くマイクは、同棲中の恋人フィービーがいなければ何もできない気弱なダメ男。ある日突然現れた暗殺者に命を狙われたマイクは、大パニックの中でも自然に身体が動き敵を倒してしまう自分に、さらに大混乱に陥り……。『ソーシャル・ネットワーク』を始めオタク役一筋のジェシー・アイゼンバーグと、『アクトレス 女たちの舞台』でセザール賞受賞のクリスティン・スチュワートが主演。この作品選びにセンスのあるふたりが選んだB級テイストのアクションは、CIAに秘密裏に作られ記憶を消されて放たれたスーパー工作員と、彼を抹殺する暗殺部隊の戦いをコミカルに描くおバカ版『ボーン・アイデンティティ』。敵を瞬殺しながら泣きべそをかくヘナヘナ男はどこか可愛く、でも、ダブダブ服で隠してはいるけど「これは鍛えたな」と思わせる身体が繰り出すアクションはなかなかのハードさ。彼を助けるアネゴな彼女へのプロポーズの行方もキュートで、意外にもデートムービーにぴったりなんじゃないかなと思います。

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1月23日(土)公開

『サウルの息子』

画像

第二次大戦中のアウシュビッツの強制収容所。ガス室の「ゾンダーコマンド」(死体処理に従事する収容者の特殊部隊)のハンガリー人、サウルは、ガス室で死にきれなかった少年を発見し「自分の息子だ」と助け出す。ナチスの医師は無情にも少年を殺し解剖するように指示を出すが、サウルは「息子」の葬儀をするために遺体を隠し、ラビ(ユダヤ教の聖職者)を捜して奔走し……。昨年のカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した、ハンガリーの新人監督の長編デビュー作。撮影のカメラは、ほぼ全編でサウルの目線の高さに張り付いて、収容所を描いてゆきます。特に冒頭、サウルの背中に張り付いたカメラが映し出す映像を見ていると、まるでサウルの後ろについて作業している収容者のような感覚を覚えるに違いありません。サウルの背中で半ば隠し、また距離感によってボケながら描かれても、ガス室の衝撃には余りあるものがあります。そんな世界の中で、「息子」のために次々と危険を冒すサウルもまたある種の狂気で、でも「人間としての尊厳」がそんな狂気でしか保てないことに、アウシュビッツの狂気の底知れ無さを感じます。マジでめっちゃ怖いんですが、すごい映画。

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1月23日(土)公開

『残穢(ざんえ)―住んではいけない部屋―』

「私」役の竹内結子が、淡々としてるから余計に怖いんですよ~
「私」役の竹内結子が、淡々としてるから余計に怖いんですよ~

「誰もいない部屋で奇妙な音がする」。実話怪談を書いている小説家の「私」は、部屋の住人「久保さん」とともに、奇妙な音の謎を解明するために、その地に隠された過去を探ってゆく。『ゴールデンスランバー』など伊坂幸太郎作品で知られる中村義洋監督作品ですが、実はホラーでデビューした監督さん。もうホラー演出さえまくりの、ここ10年見た中で最高のホラーです~。「残穢」というのは、その場所に「残された穢(けが)れ」という意味で、浄化されぬまま土地に残ってしまった「死」などを指しています。ふたりが引き当てたその土地の「穢れ」はまさに芋づる式で、追っても追ってもさらにその先に底の見えない暗闇が広がる感じ。いわゆるホラー描写、スラッシャーもスプラッターも、唐突な効果音も悲鳴も何もないのに、ものすごーく怖い。雰囲気としては「横溝正史シリーズ」的な、過去の因縁や後ろ暗い家族の秘密など、昭和初期の「忌まわしさ」の記号が満載です。部屋の隅にあるやけに暗い一角に何かが動いている気がする、天井にある黒い染みは何の染みだろう、背後に何かが蹲っているような――といった「幽霊の正体見たり枯れ尾花」的な日本的な恐怖の感覚が見た後もずーっと残り、夜中に原稿書くのが怖いくらい。いやでもほんとに傑作。

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1月30日(金)公開

それではみなさま、楽しい映画ライフを!

(C)2015 DREAMWORKS II DISTRIBUTION CO., LLC and TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION.

Photo Credit: Alan Markfield

(C)2014 It Will Follow. Inc, 

(C)2015 American Ultra, LLC. All Rights Reserved.

(C)2015 Laokoon Filmgroup

(C)2016「残穢 住んではいけない部屋」製作委員会

映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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