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球春みやざきベースボールゲームズ開幕。「浪速の轟砲」、韓国チャンピオンを粉砕

阿佐智ベースボールジャーナリスト
昨年の韓国チャンピオン、斗山戦で豪快なアーチをライト場外に叩き込んだT-岡田

 プロ野球キャンプもそろそろ打ち上げを迎える時期にさしかかった昨日24日、恒例となった「球春みやざきベースボールゲームズ」が開幕した。これは宮崎県内の自治体や観光協会が立ち上げた実行委員会によるエキシビションマッチ・シリーズで、いわゆるNPB管轄下のオープン戦とは違い「練習試合」扱いであるものの、オープン戦が本格化するのを前にして、仕上げの段階に入った各チームが、有望株を試す見ごたえのあるシリーズである。6回目となる今回は、宮崎県内でキャンプを張るオリックス、西武、ソフトバンク、韓国・斗山に、2月中旬以降沖縄本島、高知と試合をこなしてきたロッテが加わり、7試合が実施される。ファンにとっては、「一軍」の試合が連日無料観戦できるとあって、初戦となるSOKKENスタジアムで行われたオリックス対斗山戦には内野スタンドをほぼ埋める2700人の観衆が集まった。

試合場になったSOKKENスタジアム。オリックスの後は、斗山がキャンプを行う
試合場になったSOKKENスタジアム。オリックスの後は、斗山がキャンプを行う

韓国チャンピオン、斗山ベアーズ

 過去には複数チームが参加していた韓国だが、今年は前年に続き斗山のみの参加となった。この球団は、韓国プロ野球KBOの中でもいち早く国外キャンプを実施した球団で、現在はオーストラリア・ジーロングで1次キャンプを張った後、オリックスと入れ替わりで宮崎・清武運動公園で最後の調整を行っている。昨年は、1次キャンプ地を沖縄にしたのだが、連日雨にたたられたこともありオーストラリアに戻したらしい。

 現在KBOの球団は、その多くが米国アリゾナと沖縄でキャンプを行っている。日米韓多くの球団が集まるこれらの地では練習試合の相手にこと欠かないのが利点だが、斗山はあえてオーストラリアで1次キャンプを張っている。他に2球団もオーストラリアでキャンプを張っているが、互いのキャンプ地が離れているので韓国チームどうしはオーストラリアで練習試合をすることはない。斗山とサムスン・ライオンズは、オーストラリアでは主に体づくりをし、実戦は日本の2次キャンプで行った上で、韓国でのオープン戦に臨む。 

 また斗山は、オーストラリアでのキャンプの最後に東京五輪最終予選を控えたオーストラリア代表チームとエキシビションマッチを実施、10対5で圧勝し昨年の韓国シリーズチャンピオンの貫禄を見せつけた。

斗山の4番、キム・ジェファン。昨年のプレミア12でも韓国代表に名を連ねた。東京五輪でも侍ジャパンの脅威となるだろう
斗山の4番、キム・ジェファン。昨年のプレミア12でも韓国代表に名を連ねた。東京五輪でも侍ジャパンの脅威となるだろう

T-岡田、韓国チャンピオンにパワーを見せつける

この日、ほぼレギュラーでスタメンを固めた斗山に対し、前日のオープン戦で「ガチメンバー」で臨みながら「Bチーム」で臨んだ日本のチャンピオンチーム、ソフトバンクに敗れたオリックスはこの日は「Bチーム」仕様。前日のスタメンのうち、4人が残っていたものの、前日センターの宗は、この冬オーストラリアウィンターリーグで取り組んでいたサードでの出場、そして今年の補強の目玉である「現役メジャーリーガー」、ジョーンズにモヤという「飛車角落ち」でこの試合に臨んでいた。 

オーストラリアウィンターリーグでサードに取り組んでいた宗はこの日サードで軽快な動きを見せていた
オーストラリアウィンターリーグでサードに取り組んでいた宗はこの日サードで軽快な動きを見せていた

 試合前のバッティング練習では、斗山の各打者がスタンドをわかせていた。韓国の野球関係者は口をそろえて日本野球の緻密さを讃えるが、こと打者のパワーにおいては、韓国が日本を上回っている。なにしろ控えクラスでもフェンスを軽々と超える打球を連発するくらいだ。だがそれが、レベルの高い投手との対戦ではもろさを露呈することはこの日の試合でも垣間見ることができた。

斗山のバッティング練習を興味深そうに眺めるオリックスナイン
斗山のバッティング練習を興味深そうに眺めるオリックスナイン

 先攻の斗山打線は、オリックス先発・田嶋に対し初回3三振。二回はヒットと四死球で満塁まではもっていったものの、結局アウトはすべて三振と、まさに1点を取る野球ができていない印象だった。

 しかし、3回。初回は見逃し三振に倒れた、昨季3割をマークしホームランも10本記録した1番バッターのパク・ゴンウがセンターバックスクリーン左への豪快なホームランを叩き込み、初回に3塁打とセカンドゴロで1点を取ったオリックスに一矢報いる。ここまでは日韓の野球の違いが端的に表れていた展開と言ってよかった。

3回にセンターバックスクリーン横に豪快な一発を叩き込んだパク・ゴンウ(斗山)
3回にセンターバックスクリーン横に豪快な一発を叩き込んだパク・ゴンウ(斗山)

 田嶋は3回を2安打1失点と、先発ローテーション入りに向けて好スタートと言っていい内容の投球に自身も満足したコメントを試合後残していた。

3回をホームランの1点に抑えたオリックス先発の田嶋
3回をホームランの1点に抑えたオリックス先発の田嶋

 オリックスはこの後5回に単打に盗塁、そして相手のエラーを絡め1点を追加。スモールベースボールを斗山に見せつけるが、それだけではない、日本野球にもパワーがあることを斗山ナイン、スタンドのファンに見せつけたのが昨年不振にあえいでいた「浪速の轟砲」、T-岡田だった。

 この冬は、退団騒動があり、プエルトリコでも武者修行しながらも、昨日の試合ではノーアウト満塁の好機に注文通りのショートゴロゲッツーに倒れ、「今年もか」とスタンドじゅうにため息をつかせたベテランだったが、この日は違った。6回ランナーを2人置いての打席。来た球を思い切り叩いた打球は、その瞬間にそれとわかる大きな弧を描いてこの日は解放されなかった外野芝生席のはるか向こうに消えていった。この一発で試合を決定づけたオリックスは続く7回8回にも1点ずつを追加。7対1で韓国チャンピオン斗山に圧勝した。

勝利を喜ぶオリックスナイン
勝利を喜ぶオリックスナイン

 せっかくなのでソフトバンクと斗山の対戦も見てみたいものだが、残念ながら、この「みやざきベースボールゲームズ」での「日韓頂上決戦」は今回はない。斗山は今日25日、巨人キャンプのメイン球場、サンマリンスタジアムで西武と「日韓リーグチャンピオン対決」を行ったあと、26日に巨人二軍(サンマリン,12:30),27日にはソフトバンク二軍(生目第2,12:30)との練習試合を行い、3月8日まで宮崎・清武運動公園でキャンプを張る。

(写真はすべて筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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