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楽天イーグルス、台湾遠征。台湾に遠征した日本プロ野球チームを振り返る

阿佐智ベースボールジャーナリスト
今年ブレイクの予感がするオコエも訪台のメンバー入りした

 いよいよプロ野球もオープン戦が本格化してきたが、近年は、キャンプも実戦中心となり、2月中から各球団、「練習試合」を多く組んでいる。ロッテなどは、石垣島のキャンプは2月上旬で切り上げ、その後は、沖縄本島、高知、宮崎と移動して連日「練習試合」をこなしていた。

 そのロッテは、例年、台湾プロ野球チーム、ラミゴ・モンキーズとの「アジアゲートウェイシリーズ」を皮切りに、練習試合に突入するのだが、このラミゴというチームは、日本球界とかかわりをもつことに熱心で、昨年は、ロッテとの試合の後、一旦台湾に帰ると、その後、北海道に遠征して日本ハムとの練習試合に臨んでいる。

 そして今年は、楽天を台湾に招いて「日台プロ野球バトルカップ」を行う。

 台湾はご存じのとおり、戦前は日本の植民地だった。それゆえ、日本人の手によって野球が広められ、日本の敗戦による中華民国領への復帰、続く国共内戦による中国本土からの事実上の切り離しと中国国民党による支配後も、「国民的スポーツ」であり続けた。

 日本のプロ野球チームの台湾遠征の歴史を振り返ると、1960年代の終わりから70年代の初めにかけて、巨人と太平洋(現西武)が、春季キャンプを行っている。この頃はまだ、台湾にはプロ野球がなく、プロによる日台戦は当然実施されなかった。

 台湾にプロ野球リーグ、中華職業棒球聯盟(CPBL)ができたのは、今からちょうど30年前の1989年10月のことである。リーグ戦が翌90年に開始されると、そのオフには、巨人の2軍が早速訪台し、単独チームの味全ドラゴンズや台湾プロオールスターチームと5試合を戦っている。この記念すべき最初の「日台野球」では、巨人2軍は、到着直後の味全との試合は落としたものの、残りのオールスターとの4戦にすべて勝利していることから、当時はまだまだ両国のプロ野球の実力差が大きかったことがわかる。

 日本のプロチームの訪台はその後も続き、91年には中日、93年には再び巨人、94年にはヤクルトが訪台し、2勝4敗に終わった中日以外はすべて勝ち越している。

 この時代、巨人には呂明賜(1988-91年在籍)、中日には郭源治(1981-96年在籍)、陳大豊(日本名・大豊泰昭, 1989-97, 2001-02年在籍)、陳義信(1989-90年在籍)、ヤクルトには郭建成(1989-91年在籍)といった台湾人選手が在籍していたが、このこともこれらの遠征の実施には関係しているのだろう。

 この後、日台野球の歴史には空白期間ができるのだが、その間、台湾プロ野球には大きな出来事があった。1997年、CPBLとは別個に新リーグ、台湾職業棒球大連盟(TML)が発足し、CPBLと熾烈なファン獲得争いを繰り広げるのだが、このTMLは西武ライオンズで活躍した郭泰源を最高顧問に迎えるなど、西武との関係を深め、かつてのエースピッチャー、渡辺久信や石井丈裕を選手兼指導者として招く一方、許銘傑(2000-11年西武在籍)、張誌家(2002-06年在籍)らを西武に送り出すなど日台間の選手交流を促した。このTMLは、1998年に西武を招いて単独チームとの3試合シリーズを行っている。

 この西武による遠征の翌年には、オリックスが訪台し3試合シリーズを行うが、両リーグが対立する中、オリックスは、台湾代表、CPBLオールスター、TMLオールスターと1試合ずつを行い、バランスをとった。この時期は、以前のセ・リーグではなく、パ・リーグ球団が台湾に目を向けるようになり、オリックスの後は、台湾にルーツをもつ、王貞治監督率いるダイエーが、2002年秋に3連戦を行っている。この頃になると台湾プロ野球も実力をつけ、混成チームや代表チームだと、日本の単独チーム相手には互角の勝負をするようになった。

 また、ダイエーは、2002年5月には、オリックスを連れて、台北・天母棒球場で公式戦2連戦を実施、台湾のファンに日本のプロ野球を披露している。なおこの遠征にはあのイチローも参加している。

 その後、台湾プロ野球はCPBL(現在の正式名称は中華職業棒球大連盟)に一本化されるが、オフに国際試合が入ることが多くなったこともあってか、日台野球は再び空白期を迎える。2007年オフには翌年の北京五輪の予選を兼ねたアジア選手権大会が台中で行われ、侍ジャパンが台湾代表を下している。国際大会では、2005年から13年まで断続的に実施されていたアジア・オセアニア各国のリーグチャンピオンが集うアジアシリーズにおいて、2011年大会と2013年大会が台湾で行われ、これにソフトバンク、楽天がそれぞれ参加している。

 2008年になってひさかたぶりに巨人が二軍を台湾に送るが、このシリーズが巨人二軍の1勝3敗に終わったことは、台湾野球の進歩を如実に映し出していると言えるだろう。

 また、巨人は、2016年に三軍を創設すると、これを毎年、台湾に送り出すようになった。2016年は、U23のナショナルチーム候補など大学生チームと6連戦を行った後、ラミゴのファームと試合を行い、ラミゴ戦の敗戦を含め、計3勝4敗でシリーズを終えている。以後、レベルの高い台湾アマチュアとの対戦に加えて、ラミゴ二軍と一戦を交えるというのがパターンとなってようで、2年目の2017年は、大学生アマチュアとだけの対戦に終わったが、昨年は、初戦にラミゴ二軍との試合を組んでいる。

 おもしろいところでは、独立リーグ、四国アイランドリーグplusの高知ファイティングドッグスが、一昨年の前後期の間にアマチュアリーグ参戦のため訪台、CPBLの富邦ガーディアンズのファームと練習試合を行っている。

ロッテ対ラミゴ戦の会場、桃園国際棒球場
ロッテ対ラミゴ戦の会場、桃園国際棒球場

 現在、最も台湾球界との交流に一番熱心なロッテが、初めて台湾遠征をしたのは、2014年オフのことである。代表チームが侍ジャパンと頻繁に交流試合を行っていることからもわかるように日台間の野球のレベルは確実に近づいている。この遠征でもロッテは、本気モードで臨んできた単独チームのラミゴ相手に3連敗を喫している。ロッテはこれに気を引き締め直したのか、その次の2017年の訪台では、代表チーム相手に3連勝でリベンジを果たしている。ロッテは、昨年もラミゴとの3連戦シリーズのために訪台を果たした。

 今回の楽天の訪台は、関連会社のプロモーションも兼ねてのものようだが、野球を通じた国際交流が盛んになることは、次々回パリ五輪から野球が外れるという逆風の中、野球の未来にとっても喜ばしいことだ。楽天には、日本のプロ野球の質の高いプレーを台湾のファンに披露してほしいし、ラミゴにはそれに負けない溌溂とした姿を地元ファンに見せてほしい。

「日台プロ野球バトルカップ」は、2月28日と3月1日に、首都・台北の天母棒球場において行われる。

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(写真は全て筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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