11月13日、パリ郊外のスタッド・ド・フランスにて、サッカーの国際親善試合フランス対ドイツが行われていました。最初にドーンという爆発音が聞こえたのは、前半始まって間もない21時17分のこと……。

監督や選手による試合後のインタビューは一切行われませんでした。フランスサッカー連盟会長だけが記者たちの前で受け答えに応じ、ドイツ代表ヨアヒム・レーヴ監督は「動揺しているし、衝撃を受けている。勝敗や失点のことなど、もはや二の次だ」との声明を出しています。すでに日中に宿泊先のホテルに爆弾テロ予告が入り、一時避難を余儀なくされていたドイツ代表チームは、そのままスタジアムで一夜を明かしました。フランス代表も、翌日の朝4時までスタジアムに留まりました。

たくさんの犠牲者を出した同時多発テロを受けて、フランス(本土+コルシカ島)には緊急事態宣言が出されました。またスポーツ省は、14・15日の2日間、パリとその周辺のイル・ド・フランス県におけるあらゆるスポーツイベントの開催を禁止しました。バレーボール、バスケットボール、アイスホッケーのフランス連盟はフランス全土の試合延期を発表し、ラグビー欧州連盟は欧州カップ戦のフランス国内開催分の延期を決めました。ボルドーで開催中だったフィギュアスケートのエリック・ボンパール杯も、一時は続行が発表されましたが、県からの通告により最終的に中止せざるをえませんでした。

フランスのスポーツ日刊紙『レキップ』の調べによると、週末に行われるはずだったプロカテゴリーの試合・大会43のうち、36が中止・延期されています。サッカーフランス杯のFCマントワvsイラクボは、イラクボが海外県ギアナから遠征してきたこともあり、特別にフランス連盟専用合宿所の練習ピッチで非公開にて行われました。

試されるユーロ2016

テロの発生により、フランスのスポーツ界は、大きな不安を抱えることになりました。なにしろ今から約6ヶ月後に、サッカーの欧州選手権がフランスで開催されるのですから。テロ直後から、関係者の間では、中止・続行の意見が飛び交っています。

「楽観視も悲観視もしていない。ユーロ2016年は、単純に、開催されるのだ。中止を検討することは、馬鹿な奴らを喜ばせるだけにすぎない」

事件から2日後、フランス公共TV局のスポーツ番組『スタッド2』にて、スポーツ省事務局長ティエリー・ブライヤール氏はきっぱりと宣言しました。また「安全対策とは、そもそも、この週末に突然降って湧いた問題ではないのだ」とも。

ユーロ2016の開催地として立候補した時点で、フランス側は「起こりうる12のリスク」の1つにテロを上げていました。2012年9月付の内務省機関誌『CHEMI』では、ユーロ開催委員長ジャック・ランベール氏が、大会の安全課題7項目を掲げました。その第1項目こそが「テロ行為の予防」でした。

去る9月2日には、内務省大臣、スポーツ省大臣、スポーツ省事務局長、開催都市代表、フランスサッカー連盟会長の出席のもと、第一回安全対策会議を開いています。10都市のスタジアム、各代表のキャンプ地、ホテルの安全対策はフランスが国家として対応する旨の議定書にサインがされたほか、開催県毎に大会専門の安全委員会が作られ、ファンの集会所や大会関係者(チーム、審判、メディア、スタッフ)の安全確保を進めていくことが発表されました。すでに各地では特殊訓練が何度も行われています。この訓練のおかげで、今回テロリストはスタジアム内部に侵入できなかったとの分析もなされています。

16日にAFP(フランス通信社)が行ったインタビューで、ランベール氏は、安全な大会実現のために全てを尽くすと改めて誓いました。「我々を邪魔しようとする奴らに利用されるかもしれないから、情報を公にすることはない」ということで、詳細こそ明らかにされませんでしたが。

「私にとって最大の関心事は、最大限の安全を確保すること。もしかしたら、あまり『フレンドリー』ではない対応を取ることになるかもしれないが、それもやむなし。私にとって大切なのは、全ての人々が無事に家へと帰り着くことだから」

サッカーのユーロ2016・フランス大会は、この先何事もなければ、2016年6月10日〜7月10日に開催される予定です。