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コロナ禍の技能実習生と「健全化」を目指す青年起業家

阿佐部伸一ジャーナリスト
ベトナム人技能実習生のアパートにあった玉ねぎ=大分市内で21年2月阿佐部写す

 タイの民主化デモに続き、軍事クーデターがあったミャンマーからは友人知人が叫びのようなメッセージや映像を連日送ってきています。ライフワークとしてきた東南アジア取材にますます行かねばと思うのですが、まだ新型コロナの防疫措置から出入国が難しく、殆どのフライトも運休中で、いま取材を敢行すると平時の3倍を超す経費がかかります。ということで、東南アジア関連のリポートを国内で取材しました。

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 コロナ禍の不安やイライラから雇用主が外国人実習生に暴力をふるったり、業績不振から退職を迫ったり、解雇したりというケースが増えている。また、国際線の減便と航空券高騰などで期間を満了しても帰国できない実習生は約3万7千人にのぼる。

 政府は昨年、帰国できない実習生は6か月間一定の業種で、解雇された実習生は介護や農業など14の「特定産業」で最長1年就労できることとした。だが、仕事に必要な日本語を覚えるのが精いっぱいの彼らにとって、在留資格の変更を知り、手続きすることは困難を極める。受入(監理)団体に頼らざるを得ないが、経営が悪化している受入団体では義務付けされている実習生の支援が疎かになっていることも。職場と寮から追い出された実習生のなかには、路頭に迷う人も少なくない。コロナ禍に見舞われる直前、日本には41万人あまりの技能実習生がいた。その53%にあたる21万8千人が、このビデオでも焦点を当てているベトナム人。

 いわゆる「3K」職場では労働者の高齢化が進んでいて、慢性的に人手不足であっても、日本人の若者はなかなか求職せず、すぐに辞めてしまう。外国人なしには立ち行かないと、政府はコロナ発生前の19年4月には外国人が働ける枠を広げるため「特定技能1、2号」という在留資格を新設した。そしてコロナ渦中、1回目の緊急事態宣言が開けた昨年6月には「ビジネス上必要な人材等の出入国について例外的な枠を設置」し、ベトナムを真っ先にこの対象国に指定した。ベトナム人実習生はベトナム側の送出機関と日本側の受入団体を通じて来日するので「防疫措置を確約できる受入企業・団体がいること」とする条件をクリアできるからだ。

 今回、こうした困難な時代に遭遇したベトナム人実習生と受入団体、実習先の企業の話を聞いた。年々顕著になる少子高齢化、アフターコロナも外国人労働者の需要は高まることはあっても、低くなることはないだろう。それだけにコロナ禍という窮地に実習生を切り捨てるのではなく、逆に支援すべきと奮闘する受入団体の青年理事長、東和毅さんに密着させてもらった。

ジャーナリスト

全国紙と週刊誌編集部、ラテ兼営局でカメラマンや記者、ディレクターとして計38年、事件事故をはじめ様々な社会問題や話題を取材・報道してきました。そのなかで東南アジアは1987年に内戦中のカンボジアへ特派員として赴いて以来、勤務先の仕事とは別にライフワークとしています。東南アジアと日本は御朱印船時代から現代まで脈々と深い繋がりがあり、互いに大きな影響を受け合って来ました。日本の人口減が確実となり、東南アジアの一般市民が簡単に来日できるようになった今、相互理解がますます求められています。2017年に定年退職しましたが、まだまだ元気な現役。フリーランス・ジャーナリストとして走り回っています。

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