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秋の大発生で世間を騒がせたあの悪臭カメムシたちはどこへ消えたのか#カメムシ大発生

天野和利時事通信社・昆虫記者
ハートマークが可愛いエサキモンキツノカメムシの越冬集団。

 昨年秋に西日本を中心に大発生し、世間を騒がせたあの悪臭カメムシたちは、どこへ消えたのか。カメムシの大半は成虫や幼虫で越冬するので、冬の訪れとともに死に絶えたわけではない。必ずどこかにいる。

 集団で越冬することもあるため、人家や物置の中で冬越ししていたら困りものだが、多くは自然の中で寒さをしのいでいる。

 秋の大発生時に存在感が際立っていたツヤアオカメムシは成虫越冬する。落ち葉の中や、重なり合った木の葉の間などで、縮こまっている姿を見るとつい、優しく暖めてやりたくなるが、そんなことをするとすぐに動き出して、悪臭を放つ恐れがあるので同情は禁物だ。

 恐らく、冬はじっとしていることで体力を温存し、春の繁殖期に備えるのだろう。無理矢理たたき起こしてしまうのはかわいそうだ(時々そういう悪事を働いてしまう昆虫記者は反省すべきだ)。

重なり合った木の葉の間で越冬していたツヤアオカメムシ。
重なり合った木の葉の間で越冬していたツヤアオカメムシ。

オオムラサキの越冬幼虫を探してエノキの落ち葉をひっくり返したら、出てきたのはツヤアオカメムシばかり。
オオムラサキの越冬幼虫を探してエノキの落ち葉をひっくり返したら、出てきたのはツヤアオカメムシばかり。

 背中のハートマークが可愛いエサキモンキツノカメムシも、成虫越冬する。このカメムシも、可愛いふりして結構臭いので、越冬集団を見つけても刺激しない方がいい。

エサキモンキツノカメムシも結構臭いので、越冬集団を目覚めさせるのは禁物。
エサキモンキツノカメムシも結構臭いので、越冬集団を目覚めさせるのは禁物。

 カメムシの冬の越冬集団の規模の大きさでは、ヨコヅナサシガメの幼虫の右に出るものは少ないだろう。サシガメの仲間は、悪臭で問題になることはなく、肉食(獲物の体液を吸う)なので、イモムシ・毛虫を退治するという意味では益虫だが、不用意に捕まえると針のような口(口吻)で刺すことがあるので、その面では害虫かもしれない。

桜の幹のくぼみで集団越冬していたヨコヅナサシガメ幼虫。ゴミのかたまりのようだが、実態はカメムシのかたまりだ。
桜の幹のくぼみで集団越冬していたヨコヅナサシガメ幼虫。ゴミのかたまりのようだが、実態はカメムシのかたまりだ。

ヨコヅナサシガメの越冬集団を拡大してみた。これでようやくカメムシだと分かる。
ヨコヅナサシガメの越冬集団を拡大してみた。これでようやくカメムシだと分かる。

 また、桜の幹のくぼみなどで見つかるヨコヅナサシガメの越冬集団は、見た目が最悪なので、不快害虫の部類にも入るかもしれない。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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