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晩秋の可愛い蛾「ミノウスバ」。幼虫は悪名高い庭木の害虫#害虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
ミノウスバ成虫のカップル。左がオス、右がメス。体の下には大量の卵が。

 木枯らしの11月に良く見られる「ミノウスバ」は、半透明の翅を持った、ちょっとおしゃれな雰囲気の蛾だ。成虫は晩秋に発生し、交尾、産卵のためにマサキ、マユミ、ニシキギなど、庭木として人気のある低木に集まるので、都会でも目にする機会が多い。

 ミノウスバの成虫を見て、気に留める人は少ないだろう。しかし、その幼虫は害虫として結構知名度が高い。下の方に掲載した写真を見た人の中には「あー、あの不気味なイモムシの集団のことか」と、不快な経験を思い出す人もいるはずだ(苦手な人は見ないように)。

11月にマサキで集団交尾・産卵中のミノウスバ成虫。
11月にマサキで集団交尾・産卵中のミノウスバ成虫。

 何組ものミノウスバのカップルが並んで交尾している姿は、虫好きの目には可愛らしくも見える。しかし、付近の枝にメスが産み付けた膨大な数の卵を目にすると、「これがすべてイモムシ、毛虫になったら、庭木を丸坊主にしてしまうのでは」と不安にならざるを得ない。

 そして春になると、その悪い予感が的中。幼虫が大発生したマサキ、マユミなどの木々は、放っておくと、あっという間に無残な姿になってしまう。

ミノウスバのメスは産み付けた卵を自分の毛で覆う。
ミノウスバのメスは産み付けた卵を自分の毛で覆う。

春にマサキに大量発生したミノウスバの幼虫。放っておくと庭木が丸坊主になる。
春にマサキに大量発生したミノウスバの幼虫。放っておくと庭木が丸坊主になる。

マユミの葉を食べつくすミノウスバの幼虫。
マユミの葉を食べつくすミノウスバの幼虫。

 ミノウスバの成虫は、虫好きにとっては、獲物が少なくなる季節に目を楽しませてくれるありがたい虫だ。しかし、園芸家や公園の管理者にとっては厄介者。

 虫好きは、晩秋に枝先に集まったミノウスバの交尾、産卵シーンを楽しみ、来春の幼虫の孵化シーンをカメラに収めたいなどと考える。しかし、庭木を管理する側であれば、卵の付いた枝を切り落とすなど、駆除作業が不可欠だ。

ミノウスバのメスはお尻の毛が立派。この毛で卵を覆うのだろう。
ミノウスバのメスはお尻の毛が立派。この毛で卵を覆うのだろう。

ミノウスバのオスは触角が立派。
ミノウスバのオスは触角が立派。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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