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超身近な秋の鳴く虫、カネタタキの簡単な捕まえ方を伝授。狙いはアオキの枯葉#秋の鳴く虫

天野和利時事通信社・昆虫記者
声だけで姿が見えない忍者のような秋の鳴く虫「カネタタキ」

 人家周辺、生垣の低木の間から聞こえてくる「チッチッチ」という小さな鳴き声。カネタタキは12月初めまでその声を聞くことができる、息の長い秋の虫だ。しかし、あまりに小さく(1センチに満たないものが多い)、茂みの奥にいるため、その正体を見ることはめったにない。声だけで姿のない忍者、妖精のような存在だ。

 だが、かつては、秋の鳴く虫の一つとしてカネタタキを飼育して、小さな鐘をたたくようなかすかな音色を楽しむ風流な人々もいたようだ。

 今でも、カネタタキを捕まえて飼ってみようなどと思う人がいるならば(昆虫記者以外にそんな人がいる可能性は低いが)、そんな人々に、カネタタキの簡単な捕まえ方を伝授しようと思う。

茂みの中で小さな翅を立てて鳴くカネタタキの雄。
茂みの中で小さな翅を立てて鳴くカネタタキの雄。

 まずは昼間に、カネタタキがいそうな低木で、枝が折れたりしてしおれた葉が集まっているところを探す。そんな葉のかたまりに透明なビニール袋をかぶせてガサガサと振ると、中に隠れていたカネタタキが袋の中に落ちてくる。

 葉が大きいほどカネタタキが隠れている確率が高いので、昆虫記者の経験上、一番都合のいい木はアオキだ。

こんなアオキの枯葉の中には、たいていカネタタキが隠れている。
こんなアオキの枯葉の中には、たいていカネタタキが隠れている。

枯葉に袋をかぶせて振ると、意外に簡単にカネタタキを捕まえられる。
枯葉に袋をかぶせて振ると、意外に簡単にカネタタキを捕まえられる。

 ただし、夜風が冷たい季節になると、カネタタキは隠れ家に潜むことなく、昼間に活動して小さな鳴き声を響かせるようになるので、前述の方法で捕まえるのが難しくなる。来年の秋、カネタタキの鳴き声を聞いたら、この方法を試してほしい。

 うろこ状の黒い小さな翅があるのがオス、翅がないのは幼虫かメスだ。餌はキャベツの葉など腐りにくい野菜で十分。動物質の餌も与えたい場合には、観賞魚の餌をあげてもいい。

 これだけ丁寧に、捕まえ方、飼い方を解説しても、たぶん無駄骨になると思う(なにせ、捕まえなくても庭先にたくさんいるのだから)。それでも、あの小さな翅で、小さな鳴き声を響かせる姿を観察してみたいと言う人が、たとえ1人でも「参考になった」と言ってくれれば嬉しい。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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