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雄叫びを上げる大怪獣のシルエット?シャチホコガ幼虫の雄姿#イモムシ

天野和利時事通信社・昆虫記者
シャチホコガ幼虫のシルエットはまさに伝説の怪獣「鯱鉾」。

 善良な一般市民にとってシャチホコ(鯱または鯱鉾)と言えば、お城の天守閣の上にあるあの怪獣のことで、名古屋城の金のシャチホコは特に有名だ。しかし、虫好きにとってのシャチホコは、シャチホコガという蛾の異形の幼虫のことである。

 鯱の字を分解すると魚と虎。つまり鯱は頭が虎、体が魚の伝説の怪獣のこと。その本家鯱鉾よりも、はるかに不気味ではるかに格好いい(虫好きの勝手な評価です)のが、シャッチーの愛称で親しまれるシャチホコガの幼虫だ。反り返って天敵を威嚇するその姿は、天守閣の鯱鉾をはるかにしのぐ魔除け、守護神としての効果がありそうだ。

萩などマメ科の植物に多いヒメシャチホコ幼虫。
萩などマメ科の植物に多いヒメシャチホコ幼虫。

前から見たヒメシャチホコの幼虫は、エビのようにも見える。
前から見たヒメシャチホコの幼虫は、エビのようにも見える。

 鯱鉾になじみのない西洋では、シャチホコガは、その幼虫の姿からロブスターモスとも呼ばれるらしい。芋虫とは思えない長い脚を伸ばした姿は、エビに見えないこともない。

 この魅力的(個人の感想です)な幼虫に出会える可能性がある期間は結構長い。成虫が春と夏の2回羽化する年2化の虫なので、幼虫は5月から9月末ぐらいまで見られる。

シャチホコガの終齢幼虫。相当に不気味な姿だ。
シャチホコガの終齢幼虫。相当に不気味な姿だ。

シャチホコガの若齢幼虫。幼い頃から怪獣の雰囲気を備えている。
シャチホコガの若齢幼虫。幼い頃から怪獣の雰囲気を備えている。

ヒメシャチホコの幼虫は、地面を這う姿もかなり気味悪い。
ヒメシャチホコの幼虫は、地面を這う姿もかなり気味悪い。

 シャチホコガの幼虫探しの難点は、どの木にいるか分からないこと。幼虫の食樹が、ブナ科、バラ科、ニレ科、クルミ科など多種多様なので、狙いを絞りにくいのだ。しかし、そんなことで諦めてはならない。お勧めは、見た目の不気味さ、格好良さではシャチホコガ幼虫に劣らないヒメシャチホコ幼虫を探すこと(胴体の柄はヒメシャチホコの方がきれいかも)。このヒメシャチホコ幼虫は、萩(ハギ)などマメ科の植物に付いていることが多いので、シャチホコガ幼虫よりも出会いのチャンスが多い。

 秋の7草の萩の花を楽しんでいる時に、ヒメシャチホコの幼虫を見つけたらまさに一石二鳥ではないか(などと思うのは虫好きだけだ)。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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