鬼女と悪役レスラーは冬の高尾山名物=キジョランとアサギマダラ越冬幼虫#イモムシ
冬の高尾山周辺では、白髪を振り乱した鬼女をよく見かけることがある。と言っても、もちろん、小屋の中で包丁を研ぐ山姥とか、かつて渋谷あたりに多かったヤマンバ・ギャルのことではない。キジョラン(鬼女蘭)の大きな実がはじけて、鬼女の髪のような白い綿毛が飛び出てくるのだ。
そのキジョランの葉裏では、アサギマダラという超美麗な蝶の幼虫が越冬している。アサギマダラは成虫のみならず、組み紐のような模様の幼虫も非常に美しい(ただし、顔のように見えるその頭部は、悪役レスラーの覆面のようでちょっと怖い。ヤマンバ・ギャルにも少し似ている)。
真冬に見つかる越冬幼虫は、非常に小さいものが多いので、美貌が花開くのはまだ少し先になる。それでも、若干大きめの幼虫には、端麗な容姿の兆しが感じられる。
アサギマダラの越冬幼虫を見つけるにはコツがあり、それを会得すれば、誰でも比較的簡単に幼虫に出会える(と言っても真冬にそんな地味な作業をする人は、よほどの虫好きだけだ)。
そのコツとは、まず地面近くに生えている高さ数十センチから1、2メートルの小さなキジョラン探すこと。そのキジョランの葉に丸い穴(幼虫の食痕)がたくさん開いていたら、近くにアサギマダラの幼虫がいる可能性大だ。
葉を裏返してみて、穴の周囲に白い粉(植物が食害されないように出す物質)が付いていたら、その葉か、すぐ近くの葉に幼虫がいる。白い粉がなければ、古い食痕の可能性が高いので、近くで幼虫が見つかる可能性は低くなる。
これだけの知識があれば、アサギマダラの越冬幼虫探しの成功率はほぼ100%。「さあ、鬼女と悪役レスラーを探しにいざ真冬の高尾へ」。などと言っても、どこからも賛同の声が聞かれないのはなぜだろう。
(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)