Yahoo!ニュース

スマイルマークが大集合=真冬の昆虫芸術

天野和利時事通信社・昆虫記者
11月、ゴンズイの葉裏で越冬準備中のアカスジキンカメムシ幼虫。

 アカスジキンカメムシの終齢幼虫は、越冬前に大きな集団を作ることがある。まん丸のこの幼虫の背中の模様は、まるでスマイルマーク。そんな笑顔の大集団を目にすると、福の神に祝福されたようで、明るい気分で新年を迎えられそうに思えてくる。

 アカスジキンカメムシの幼虫は、晩秋から初冬にかけて、ミズキ、コブシ、ゴンズイなどの葉裏に集合する。メタセコイアなどスギ科の大木にもアカスジキンカメムシが多いが、スギ科では葉裏に集合するのが難しいため、樹皮の割れ目を隠れ家に使うことがある。

11月、アカスジキンカメ幼虫の通勤ラッシュ?どうすればこんな状態になれるのか不明。
11月、アカスジキンカメ幼虫の通勤ラッシュ?どうすればこんな状態になれるのか不明。

 カメムシと言えば、臭いにおいで知られるが、このにおいの物質は、さまざまな情報を伝えるフェロモンとしても機能する。越冬前の集団形成の際には恐らく集合フェロモンが放出されているのだろう。

 カメムシが集団で悪臭を発したらと考えると恐ろしくなるが、敵を撃退する際の強烈な悪臭以外で使用するフェロモン物質は微量らしいので、越冬集団を見つけても怯える必要はない。また、活動の鈍る越冬中は、ほとんど悪臭を出さないのでご安心を。

12月、メタセコイアの樹皮の裂け目で越冬中のアカスジキンカメムシ幼虫。
12月、メタセコイアの樹皮の裂け目で越冬中のアカスジキンカメムシ幼虫。

11月末、落ち葉の裏のアカスジキンカメムシ幼虫。
11月末、落ち葉の裏のアカスジキンカメムシ幼虫。

 葉裏に集まった幼虫は、落葉とともに地面に落ち、枯れ葉の山に埋もれて越冬するようだ。このため、厳冬期にこうした木々の落ち葉をかき集めると幼虫が見つかることがある。

 しかし、厳冬期や早春の幼虫は、単独のものや、せいぜい2、3匹の集団が多く、大集団を見つけたことはまだない。寒さに耐えられずに、集団が縮小していくのだろうか。

 明るい笑顔を背負っているアカスジキンカメムシの幼虫も、真冬には結構苦しい思いをしているのかもしれない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

天野和利の最近の記事