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炎のオレンジ集団、オオキンカメムシの越冬=真冬の昆虫芸術④

天野和利時事通信社・昆虫記者
房総半島で集団越冬していたオオキンカメムシ。

 炎のオレンジ集団と言えば、ワールドカップのオランダ・チームを思い浮かべるかもしれない。しかし、真冬に虫好きを歓喜させるオレンジ集団は、オオキンカメムシだ。

 オオキンカメムシは日本最大級のカメムシ。キンカメムシの仲間なので、成虫はコガネムシの仲間のようなピカピカ、ツヤツヤの固い甲羅に包まれている。そして、このオオキンカメムシは、真冬にマテバシイなどの大きな葉の裏側で、集団越冬する。

 虫の少なくなる冬。虫好きの心の中にも寒風が吹きすさぶ。そんな時に、温かさを感じさせるオレンジ色のオオキンカメムシの集団が目に入ると、昆虫趣味の炎が復活。冬の野山の寒さを乗り切ることができるのだ。

オオキンカメムシは、背中がオレンジ、頭部と腹部が紫色。南方系の虫らしい豊かな色彩だ。
オオキンカメムシは、背中がオレンジ、頭部と腹部が紫色。南方系の虫らしい豊かな色彩だ。

オオキンカメムシの正面顔。
オオキンカメムシの正面顔。

 南方系の虫なので、本州では南部に多いが、数は少ないながら関東地方にも生息している。関東でオオキンカメムシの越冬が多く見られるのは、房総半島の先端付近。冬にはできるだけ南に行こうとするようだ。三浦半島の先端付近でも時々見られる。マテバシイ、ツバキなど常緑の固い葉の裏側で、「おしくらまんじゅう」のように、ぎゅう詰め状態で越冬していることが多い。

このマテバシイの葉裏では7匹が越冬していた。
このマテバシイの葉裏では7匹が越冬していた。

この葉裏のオオキンカメムシは計12匹。昆虫記者が見つけた中では最大の集団だった。
この葉裏のオオキンカメムシは計12匹。昆虫記者が見つけた中では最大の集団だった。

ツバキの葉はあまり大きくないので、葉裏で越冬できるのは3匹が限界か。
ツバキの葉はあまり大きくないので、葉裏で越冬できるのは3匹が限界か。

 カメムシの仲間は悪臭で知られるが、キンカメムシ類の臭いは比較的穏やか。特に越冬時は、活動が鈍っているので、よほどひどくいじめない限り、悪臭に悩まされることはない。

 主要な食樹は、アブラギリというちょっと珍しい木。アブラギリはかつて、実から油をとるために栽培されていたが、今では植物園でたまに見かける程度になった。このため、オオキンカメムシも、数をかなり減らしているとようだ。それだけに、このどっしりとした大きなカメムシを見つけた時の感激は大きい。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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