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カマキリの卵の見つけ方、活用術=真冬の昆虫芸術③

天野和利時事通信社・昆虫記者
中央はオオカマキリとハラビロカマキリ、左はチョウセンカマキリ、右はコカマキリの卵

 子どもでも簡単に見つけられる真冬の昆虫芸術と言えば、真っ先に思い浮かぶのは、カマキリの卵(卵嚢=らんのう)。冬の野山を歩けば、1つ2つはすぐに見つかる。

 一番多く見つかるのはたぶん、オオカマキリの卵だ。大きい上に、枯れススキ、低木の枝先など、冬になると特に目立つところに、堂々と産み付けられているので、何気ない散歩の途中でもすぐに目につく。

オオカマキリの卵の下にハラビロカマキリの卵が産み付けられていた。
オオカマキリの卵の下にハラビロカマキリの卵が産み付けられていた。

オオカマキリの産卵。
オオカマキリの産卵。

 次に見つけやすいのは、ハラビロカマキリの卵だ。たぶん数の上ではオオカマキリの卵より多いと思うが、オオカマキリの卵よりだいぶ小さいし、色合いが木の幹に近い焦げ茶色なので、若干見つけにくい。枝先にもあるが、木の太い幹や、コンクリートの壁の表面などに産み付けられていることも多い。

ハラビロカマキリの産卵。生みたての卵嚢は青っぽいが、時間が経つと焦げ茶色になる。
ハラビロカマキリの産卵。生みたての卵嚢は青っぽいが、時間が経つと焦げ茶色になる。

 チョウセンカマキリの卵は、比較的大きく目立つので見つけやすい。しかし、チョウセンカマキリの卵ばかりが集中している所もあれば、全くない場所もある。生活環境がオオカマキリと重なるので、オオカマキリの多い所は避けているのかもしれない。

チョウセンカマキリの卵嚢。細長くて端が薄くなるのが特徴。
チョウセンカマキリの卵嚢。細長くて端が薄くなるのが特徴。

 意外と見つけにくいのが、コカマキリの卵。コカマキリは人目に付きにくい物陰に産卵する。昔は草原と化した空き地に捨てられたベニヤ板や木製のスノコをひっくり返すと裏にたくさん産み付けられていたものだ。しかし今は、そんな管理不行き届きな空き地は少ないので、公園の木柵の裏側とか、倒木の陰とかを丹念に探すしかない。

コカマキリの卵嚢。暗い物陰に産み付けられることが多い。
コカマキリの卵嚢。暗い物陰に産み付けられることが多い。

カマの模様が可愛いコカマキリ。
カマの模様が可愛いコカマキリ。

 日本一小さいカマキリの「ヒナカマキリ」の卵は、多産地なら、公園の休憩施設やトイレの壁面、木柵の側面などでよく見つかる。しかし、5ミリ程度とあまりにも小さいため、本気で探さないと見つからない。

ヒナカマキリの卵嚢。ともかく小さい。
ヒナカマキリの卵嚢。ともかく小さい。

ヒナカマキリは成虫もこんなに小さい。
ヒナカマキリは成虫もこんなに小さい。

 このほかにヒメカマキリもいるが、数がかなり少ない感じなので、卵を見つけたら超ラッキーと思った方がいい。

ヒメカマキリ成虫。体長はコカマキリより短い。
ヒメカマキリ成虫。体長はコカマキリより短い。

たぶんヒメカマキリの卵嚢。
たぶんヒメカマキリの卵嚢。

 ◆カマキリの卵の活用術 

 家に庭があって、アブラムシの被害に悩んでいるなら、幾つかカマキリの卵を持ち帰って、庭に置いておくと、春に孵化したカマキリの小さな幼虫がアブラムシの駆除に結構役立つ。我が家のベランダでも、カマキリの幼虫のお陰で、初夏ぐらいまではアブラムシの被害がかなり食い止められている。

 ただし、卵を持ち帰ったら必ず戸外に出しておように。部屋の中や、バッグの中に置き忘れていると、春になってカマキリの幼虫が部屋中にあふれて大変なことになる(昆虫記者も経験済み)。

孵化したばかりのオオカマキリの幼虫。
孵化したばかりのオオカマキリの幼虫。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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