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あなたの家の周りにも山ほどいる身近なかわいい害虫その1=ホタルガ

天野和利時事通信社・昆虫記者
ホタルガの幼虫(左)と成虫。どちらもそこそこ見栄えのいい虫だ。

 都心の公園やマンションの植栽で多いのが、ヒサカキやハマヒサカキ。その葉を食べる害虫(一般住民にとって害虫でも虫好きにはかわいい虫)が「ホタルガ」の幼虫だ。もうすぐ出てくる成虫の蛾は、昼間に飛ぶので「ああ、あいつか」と思い当たる都市住民も多いはず。頭が赤く、黒い翅に白い1本線が入った、ちょっと気になる装束の蛾だ。赤い頭と黒い翅が「ホタル」に似ていることが、ホタルガの名の由来らしい。

成虫の赤い頭と黒い翅がホタルに似ていることがホタルガの名の由来らしい。
成虫の赤い頭と黒い翅がホタルに似ていることがホタルガの名の由来らしい。

 マンションの周囲がヒサカキなどの生垣でぐるりと囲まれていれば、まず確実にホタルガが生息している。幼虫が小さいころの食痕(食べ跡)は極めて特徴的。葉裏の葉肉だけを円形に食べて、葉の表面の薄皮を残す。幼虫が大量発生した場所のヒサカキ類は、緑の葉の上に銀色のアクセサリーをちりばめたようで、見ようによってはなかなかに芸術的だ。しかし、見ようによっては若干汚らしい。

 黄色、青、黒の3色に彩られた幼虫は、見ようによってはなかかなかに美しい。しかし、見ようによっては、危険な警告色だ。警告は伊達ではなく、幼虫の体液には毒があるので、「かわいい!」と思っても触らない方がいい。幼虫は生垣のヒサカキ類を台無しにする上、毒があるとなれば、一般住民にとってこれはまさに害虫だ。

ちょっとボコボコした感じの幼虫は一見スイーツ風だが、体液に毒があるらしい。
ちょっとボコボコした感じの幼虫は一見スイーツ風だが、体液に毒があるらしい。

ホタルガの幼虫に食害されたハマヒサカキの葉。斑入りの芸術的な葉にも見える。
ホタルガの幼虫に食害されたハマヒサカキの葉。斑入りの芸術的な葉にも見える。

ホタルガの幼虫が大量発生すると、生垣の緑はこんな風になる。星空のようでもある。
ホタルガの幼虫が大量発生すると、生垣の緑はこんな風になる。星空のようでもある。

小さな幼虫は、葉裏から葉肉だけを食べて表面の薄皮を残す。
小さな幼虫は、葉裏から葉肉だけを食べて表面の薄皮を残す。

 ホタル風の素敵な姿の成虫も、大量発生して玄関ドアにベタベタ張り付いていると不気味だ。このため、ホタルガが大量発生したマンションでは住民の苦情が理事会に殺到する。そして大量の殺虫剤が撒かれて、ホタルガは皆殺しとなる。

マンションの玄関に張り付いたホタルガ成虫。数が増えるとだんだん不気味になる。
マンションの玄関に張り付いたホタルガ成虫。数が増えるとだんだん不気味になる。

マンションの壁にあったホタルガの繭。
マンションの壁にあったホタルガの繭。

 しかし、しぶといホタルガは、また翌年には細々と発生し、次第に勢力を盛り返していくので、虫好きはまた、それを観察する。

(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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