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東京湾岸の公園に大軍で侵攻する南国の虫、リュウキュウツヤハナムグリ

天野和利時事通信社・昆虫記者
東京湾岸でとんでもなく大発生している南国の虫、リュウキュウツヤハナムグリ

 東京湾岸で、ある南国の虫がとんでもなく大発生しているらしい。リュウキュウツヤハナムグリという、コガネムシ系のちょっときれいな虫だ。

 琉球の名があるので寒さには弱そうだが、何と今頃すでに羽化している気の早いのもいるようだ。つまり今なら、幼虫、蛹(蛹室)、成虫がワンセットで見られる可能性がある。まだまだ虫の少ないこの季節としては、超豪華なメニューだ。ということで、さっそく先週末に調査(遊びのようだがあくまで科学調査だ)に行ってきた。

 某線の某駅から東京湾方面へ。運河を渡ってすぐの公園にも、幼虫の糞がかなりあり、かき分けてみるとコロコロ太った幼虫が出てきた。

次々と出てくるリュウキュウツヤハナムグリの幼虫。下の粒々は糞の山。
次々と出てくるリュウキュウツヤハナムグリの幼虫。下の粒々は糞の山。

 さらに東京湾方面へ進み、次の公園(テニスコートなど運動施設の多い典型的都市公園)に入ると、石垣の上の林から幼虫の糞があふれ出して、下の道路にこんもりと積もっている場所もあり、すさまじい数のリュウキュウツヤハナムグリが生息しているようだ。

 ここは深い腐葉土の層があるわけでもなく、コガネムシ系の幼虫が生きていくには厳しい環境。つまりリュウキュウツヤハナムグリは、都会的環境をあまり苦にしない、都会派の虫だということだ。

石垣の下の路上にあふれ出した糞(左)。拡大すると糞の山だと分かる(右)。
石垣の下の路上にあふれ出した糞(左)。拡大すると糞の山だと分かる(右)。

 近くの狭い側溝には、成虫の死骸が幾つか転がっていた。その下の落ち葉をかき分けると、何と成虫がモゾモゾと4、5匹はい出してきた。糞を固めたようなウズラの卵大の蛹室も出てきた。割れた蛹室の中からは成虫が顔をみせていた。

糞玉のようなリュウキュウツヤハナムグリの蛹室(左)と割れた蛹室から顔をのぞかせる成虫。
糞玉のようなリュウキュウツヤハナムグリの蛹室(左)と割れた蛹室から顔をのぞかせる成虫。

青っぽい成虫
青っぽい成虫

赤黒い成虫も
赤黒い成虫も

リュウキュウツヤハナムグリ成虫を見つけたのは、こんなありえへん側溝のような場所。左の落ち葉の下にいた。
リュウキュウツヤハナムグリ成虫を見つけたのは、こんなありえへん側溝のような場所。左の落ち葉の下にいた。

  侵略的外来種なら殲滅すべきなのだが、このリュウキュウツヤハナムグリは、奄美あたりから植物と一緒に伊豆諸島に入り込み、そこから伊豆航路で東京湾岸に来た可能性があるらしい。つまり侵略者というよりは、長旅の末ようやく東京にたどり着いた渡航者、旅行者だ。

リュウキュウツヤハナムグリの幼虫(左)は、平な場所に置くと仰向けになって、蠕動運動で進んでいく(右)。
リュウキュウツヤハナムグリの幼虫(左)は、平な場所に置くと仰向けになって、蠕動運動で進んでいく(右)。

 しかし、一見しただけでこの様子なので、近い将来、東京の都市公園はリュウキュウツヤハナムグリに占拠されて、シロテンハナムグリとか、コアオハナムグリとか、これまで大きな顔をしていた虫たちが脇に追いやられてしまうかもしれない。(写真は特記しない限りすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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