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クリスマスは真冬のテントウ虫のおしくらまんじゅうを見に行こう

天野和利時事通信社・昆虫記者
テントウ虫の集団越冬は、クリスマスイルミネーションのように華やかになることも

 真冬と言えば、テントウ虫の「おしくらまんじゅう」が見頃。と言っても、虫好き以外の人々にとっては、何のことやら。あの小さなテントウ虫(主にナミテントウ)が、成虫で集団越冬するのを知っている人は、都会では少ないかもしれない。

狭い隙間や、野外公衆トイレの天井の片隅などで、押し合いへし合いながら越冬している姿は、まさに暖を取るための「おしくらまんじゅう」。でも、そもそも今時「おしくらまんじゅう」をする子供たちなんているのだろうか。コロナ禍では、禁止されそうな遊びだし、もはや死語に近い言葉かも。「押されて泣くな。あんまり押すとあんこが出るぞ」なんていう、続きの歌詞を知っている人はいないかも。

石の裏に隠れていたテントウ虫の越冬集団。石は元に戻しておこう
石の裏に隠れていたテントウ虫の越冬集団。石は元に戻しておこう

積みわらの中に潜り込んで越冬するテントウ虫も
積みわらの中に潜り込んで越冬するテントウ虫も

越冬直前のテントウ虫はなぜか電柱などに集まることが多い。枯れ木と勘違いしているようだ。
越冬直前のテントウ虫はなぜか電柱などに集まることが多い。枯れ木と勘違いしているようだ。

落ち葉の中で越冬するテントウ虫。これぐらいの集団が一番かわいいかも
落ち葉の中で越冬するテントウ虫。これぐらいの集団が一番かわいいかも

 日本のテントウ虫の中で、大集団で越冬するのはナミテントウだ。その集団の中に時々大型のカメノコテントウが紛れ込んでいることもある。不思議なことに、数の多いナナホシテントウが、この集団に加わっているのは見たことがない。ナミテントウとナナホシテントウは、大きさ、餌(主にアブラムシ)、生息環境が重なるライバルなので、仲が悪いのかもしれない。ナナホシテントウは、草の根本や落ち葉の中で、単独で越冬することが多いようだ。

樹木名表示板の裏で越冬していたテントウ虫。大型のカメノコテントウも何匹か混じっている
樹木名表示板の裏で越冬していたテントウ虫。大型のカメノコテントウも何匹か混じっている

 そんなことを言うと、テントウ虫の越冬集団の中に、「ナナホシみたいなのがたくさんいた」という報告が殺到するかもしれない。でもそれは、ナナホシテントウではなくて、ナナホシ風のナミテントウ。

ナナホシテントウは単独で越冬することが多い
ナナホシテントウは単独で越冬することが多い

ナナホシテントウ風のナミテントウも多い
ナナホシテントウ風のナミテントウも多い

 ナミテントウは黒地に赤い点2つというのが多いが、黒地に赤い点をたくさんちりばめたものや、赤地に黒い点をたくさんちりばめたもの(これがナナホシに似ている)、ほぼオレンジ一色のもの、目玉模様のものなど、その模様は多種多様。それだけに、越冬集団になると、クリスマスイルミネーションのように華やかになることもある。(写真は特記しない限り、過去記事を含めすべて筆者撮影)

時事通信社・昆虫記者

天野和利(あまのかずとし)。時事通信社ロンドン特派員、シンガポール特派員、外国経済部部長を経て現在は国際メディアサービス班シニアエディター、昆虫記者。加盟紙向けの昆虫関連記事を執筆するとともに、時事ドットコムで「昆虫記者のなるほど探訪」を連載中。著書に「昆虫記者のなるほど探訪」(時事通信社)。ブログ、ツイッターでも昆虫情報を発信。

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