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【打ち上げ成功】九州発の民間レーダー衛星「イザナギ」、インドPSLVロケットで打ち上げ

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
Credit:ISRO

【追記】日本時間2019年12月11日18時55分、QPS研究所のレーダー地球観測衛星「イザナギ(QPS-SAR初号機)」を搭載したPSLV-C48はサティシュ・ダワン宇宙センターから予定時刻に打ち上げられた。打ち上げ開始から16分26秒50後に主衛星「RISAT-2BR1」が切り離され、17分26秒50後に「イザナギ」が切り離され、打ち上げは成功した。

PSLV-C48の打ち上げ。出典:ISRO打ち上げ中継より
PSLV-C48の打ち上げ。出典:ISRO打ち上げ中継より
軌道上で切り離される「イザナギ(QPS-SAR初号機)」。出典:ISRO打ち上げ中継より
軌道上で切り離される「イザナギ(QPS-SAR初号機)」。出典:ISRO打ち上げ中継より
現地で打ち上げを見守るQPS研究所の大西俊輔CEOら。出典:ISRO打ち上げ中継より
現地で打ち上げを見守るQPS研究所の大西俊輔CEOら。出典:ISRO打ち上げ中継より

日本時間2019年12月11日、日本の衛星開発企業、QPS研究所による民間レーダー地球観測衛星「イザナギ(QPS-SAR初号機)」がインドのロケットPSLV-C48で打ち上げられる。打ち上げ時刻は日本時間18時55分(現地時間15時25分)の予定だ。

QPS-SAR衛星による地球観測のイメージ。Credit: 株式会社QPS研究所
QPS-SAR衛星による地球観測のイメージ。Credit: 株式会社QPS研究所

QPS-SAR衛星は、直径3.6メートルの軽量・大型パラボラアンテナを搭載した合成開口レーダー(SAR)衛星。レーダーを使用することで、光学地球観測衛星が観測できない夜間、雲がかかった天候でも地表を観測できる。

2016年以降、レーダー衛星を複数機打ち上げて高頻度に地球を観測する民間のSAR衛星コンステレーションが次々と活動を開始している。フィンランドのICEYE、米カペラスペースなどに続き、日本で小型SARコンステレーションを計画する企業ではQPS研究所が初の衛星打ち上げとなる。

これまで日本のSAR衛星では、JAXA開発の地球観測衛星ALOS(だいち)、ALOS-2(だいち2号)が搭載しているほか、NEC開発によるASNARO-2などがある。これまでの衛星は、だいち2号が約2000キログラム、ASNARO-2が約570キログラムあったのに対し、QPS-SARは衛星本体がおよそ100キログラムと小型軽量を実現している。本体は軽量だが、SAR衛星のキー要素であるアンテナには省電力性に優れた展開式のパラボラアンテナを採用し、高い鏡面精度を実現した。

民間小型SAR衛星の開発企業が大電力のアンテナを採用する中、QPS研究所は軽量、省電力に優れた直径3.6メートルのパラボラアンテナを採用した。Credit: 株式会社QPS研究所
民間小型SAR衛星の開発企業が大電力のアンテナを採用する中、QPS研究所は軽量、省電力に優れた直径3.6メートルのパラボラアンテナを採用した。Credit: 株式会社QPS研究所

小型軽量化した衛星は開発費を数億円規模といい、多数機を打ち上げることで高頻度に地球観測ができる。初号機打ち上げ後、2号機(愛称は「イザナミ」)を2020年中に、2024年ごろまでには36機の衛星を打ち上げる予定だ。

多数の衛星で高頻度に観測ができるようになることで、「約10分ごとに世界のほぼどこでも定点観測する目標」を持っている。自動車の出荷などを観測し、物流の効率化、インフラ老朽化の検知、災害対応などに役立てる目標だ。

QPS研究所は、九州大学名誉教授の八坂哲雄教授らが中心となり2005年に福岡市で設立された宇宙ベンチャー企業。九州大学出身の大西俊輔CEOら若手技術者が参加して小型人工衛星開発プロジェクトを進めてきた。金属メッシュを使用して小型軽量化を実現したパラボラアンテナの技術は、日本の技術試験衛星ETS-VIII(きく8号)でも使用されている。

QPS-SARほか、インドのレーダー衛星などを打ち上げるPSLV-C48。Credit: ISRO
QPS-SARほか、インドのレーダー衛星などを打ち上げるPSLV-C48。Credit: ISRO

「イザナギ」衛星は、50回目の打ち上げとなるインドのPSLVロケットに搭載される。主衛星にインドが開発した同じレーダー衛星「RISAT-2BR1」が搭載されるほか、「イザナギ」のほかに8機のインド外からの衛星が搭載される。

PSLV-C48の打ち上げは、インド南部のサティシュ・ダワン宇宙センターから18時55分開始の予定で、主衛星の切り離しは打ち上げからおよそ16分後、「イザナギ」ほか相乗り衛星の切り離しは打ち上げから17分~22分の間に行われる予定だ。打ち上げはISRO(インド宇宙研究機関)により中継が行われる。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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