各自治体の「いじめ対策」を順位付け!1位は鹿児島市、最下位は八王子市に決定。

2015年 主要都市の「いじめ防止基本方針」チェックリストランキング

私が所属しているNPO法人「ストップいじめ!ナビ」では、いじめ防止対策推進法に基づいて行なわれている各自治体の「いじめ防止基本方針」について「自治体チェックリスト調査」を行いました。

「いじめ防止基本方針」は、各都道府県、地方自治体、各小中高校などで策定されているものですが、今回は主要都市のいじめ防止基本方針をもとに、いじめ防止対策推進法の趣旨に基づいて、具体的にどのように方針が立てられているのかをチェックしたものです。

※前回の記事はこちらです。

各自治体の「いじめ対策」を順位付け。「いじめ防止基本方針」の 「自治体チェックリスト調査」を公表!

「自治体チェックリスト」調査報告(2015年度版)

いじめ防止対策推進法が施行されてから2年以上が経過しましたが、今年度も複数のいじめ自殺がニュースで取り上げられました。そのうち2015年7月に発生した岩手県の事件では、同法の周知徹底がなされていなかった上、いじめ防止対策組織も全く機能していなかったという事実が明らかになりました。

法は、小・中・高・特別支援学校に対し、「学校いじめ防止基本方針」(法13条)の策定を通して、いじめ防止のための具体的な独自の方針・計画を立てることを義務付けていますが、多くの学校が策定する同方針は、各自治体から提示された「雛形」をもとに作られているのが現状です。そして、その「雛形」は、各自治体策定の「地方いじめ防止基本方針」(法12条)の趣旨を踏まえたものになっています。

そこで、「ストップいじめ!ナビ」では、この「地方いじめ防止基本方針」がいじめ問題に直面する現場である学校のいじめ対策を大きく方向付けることに鑑み、昨年に引き続き、各自治体の同基本方針が法の趣旨に即した実効的な内容となっているかを調査・検証することとしました。そのため、法の趣旨を踏まえたチェックするリストを作成するとともに、同リストを使用して、2015年8月18日までに基本方針を公開していた人口の多い、いわゆる主要都市について、その内容を調査し評価しました。

なお、今回、我々の調査・検証の対象とならなかった都市についても、このチェックリストを用いれば、その自治体の基本方針がいじめ防止対策推進法の趣旨に即したものであるか否かを把握することができます。対象都市以外の自治体にお住いの方々も、ご自身のお住いの都市についてチェックしてみてはいかがでしょうか。

本チェックリスト及び本調査結果により、いじめ防止対策推進法の趣旨・目的への理解が進み、子どもたちに関わる全ての大人たちが自身のいじめ問題への関わり方を考えることで、子どもたちがより楽しく健やかに学校生活を送ることができるようになれば、メンバー一同、大変嬉しく思います。

「ストップいじめ!ナビ」一同 作業チーム:真下麻里子、小島秀一、石垣正純、松岡佐知子、清水秀俊、井桁大介、馬場大祐、今村奈央、畑福生、他18名(自治体チェックリスト班・弁護士チーム)、 須永祐慈(事務局)

チェックリストの改訂と今年度版(2015年度版)の内容について

ア.2014年度版チェックリストの改訂について 冒頭で述べました通り、法施行から2年以上が経過し、いじめに関する事件の発生が明らかとなる中で、法的観点から見た各学校のいじめ対策の問題点が日々浮き彫りになってきています。 そこで、かかる問題点を踏まえ、現時点においてより実効性が高いと考えられる「地方いじめ防止基本方針」が高く評価されるよう、昨年用いたチェックリストを改訂しました。 したがって、同じ内容の「地方いじめ防止基本方針」であっても昨年度とは順位や評価が異なっている可能性があります。この点をご承知置きいただいた上、今年度の結果をご参照いただけましたら幸いです。

イ.2015年度版のチェックリストの内容について 今年度版のチェックリストは、大きく以下の6つの重要項目により構成されています。 1「PDCAサイクル等」 、2「自治体内部の組織構成」 、3「法22条の組織」(学校内部の組織) 、4「いじめ予防の体制作り」 、5「重大事態への対応」 、6「その他の考慮要素」 多くの方が簡易にチェックできるようにするために、各項目について個別に点数を算出し、合算する方式を取りました。各項目の中でも、より重要度の高いものについては、あらかじめ高い点数が振られていますが、さらに高く評価すべき素晴らしい内容については、6「その他の考慮要素」において加点しました。

調査の方法及び対象

(1)方法

チェックリストを使用して、複数のチームにより、各自治体をそれぞれ3回チェックしました。原則として、3回のチェックの平均により算出したものが、今回の各自治体の評価になっています。

(2)対象

前述の通り、2015年8月18日までに基本方針を公開していた人口の多い、いわゆる「主要都市」(おおむね人口50万人以上)を対象としました。 なお、同時点において、対象とした都市のうち千葉市・札幌市は作成中、船橋市は作成検討中、東大阪市は作成済みではあるものの、ホームページには非掲載とのことでした。

確かに、地方いじめ防止基本方針の策定は、各自治体の努力義務であり、策定・公開が義務付けられているものではありません(法12条)。 しかしながら、いじめ問題は、言うまでもなく、子どもの尊厳・生命に関わる重大な問題です。子どもに関わる全ての大人たちが各自治体のいじめに対する取組を検証し、建設的な議論を行うことができるようにするためにも、基本方針を策定・公開していない自治体については、速やかに策定し、公開することが望まれます。

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寸評

(1)総評

各自治体が策定し公表する基本方針を確認してみると、それぞれ随分といじめに対する姿勢や取組が異なることがわかりました。以下に、上位自治体と下位自治体のそれぞれの特徴など、この調査を通して弁護士チームが感じたことを総評として記載します。

ア.基本方針の分量について

そもそも、基本方針を策定・公開していない自治体があったことは前述(3 調査の方法及び対象)の通りですが、策定されていたとしても、分量が極めて少ない自治体もありました。 もちろん、分量が多ければ直ちに素晴らしいということにはなりませんが、高評価であった多くの自治体は、分量が多い傾向にありました。いじめ問題に対し、真剣に取り組んでいるからこそ、自治体から発信したいメッセージが多くなり、その分、分量もとい熱量が増えるのだと感じました。

イ.基本方針の内容について

上位自治体は、総じて、独自の取組などが極めて具体的に例示・記載されていました。多くの自治体が抽象的な記載にとどまる中、対策を実施すべき「いじめ」とはそもそもどのようなものなのかを考え、早期発見のために現場における共通認識を形成しようとするもの、具体的な時期を特定した上で、いじめ予防週間などを設けて子どもの自発的な取組を促すもの、外部講師を招いた教職員研修を定期的に行おうとするもの、いじめ防止対策推進法だけではなく、子どもの権利条約などを参照して、多角的に子どもにとっての最善の利益を熟考するものなど、より実効的ないじめ対策を行おうという強い意気込みや真摯な姿勢が文面から伝わってきました。

他方、下位自治体においては、文部科学省や都道府県が作成した「基本方針」の文面をそのまま転載するのみにとどまったり、具体的な記述や独自の取組についてほとんど書かれていないなど、どのような問題意識をもっていじめ問題に取り組もうとしているのか文面からは伝わってこないものが多い傾向にありました。

ウ.「学校におけるいじめ防止等の対策のための組織」(法22条)の理解について

この調査を通して、多くの自治体においてその趣旨があまり理解されていないと感じたのは、法22条に定める「学校におけるいじめ防止等の対策のための組織」の在り方です。

法22条は、学校内部に、いじめ対策の中枢となる組織を設置し、校長や学年主任など生徒指導の中心となる教職員だけではなく、担任などの一般の教職員や外部の有識者を参画させることを求めています。これは、一定の年数内に全ての教員が一度は参画することによって同僚性、問題意識の共有化を確保するとともに、情報を速やかに集約させ、さらに学校内外の風通しを良くする体制を整え、担任一人の「抱え込み」を防止し、組織的にいじめ問題に対処するための措置です。

これまで、いじめにより、多くの痛ましい事件が発生してきましたが、最悪の事態を避けられなかった原因の一つにこの担任一人の「抱え込み」による対策の遅れがあります。その反省を踏まえ、新法下においては、いじめは担任だけが対応すべきものでは決してなく、学校全体で、あるいは学校の外の専門家をも用いて対応すべきものとなったのです。

しかし、多くの自治体では、校長や学年主任をはじめとする従前の生徒指導担当者などをそのまま組織のメンバーとしています。また、いじめに関する教職員間での情報共有についても、その重要性に比して、曖昧な記載にとどまっている、または記載すらない自治体が多くありました。これでは、法施行前と何ら変わりがなく、法の趣旨が教育現場にいきわたっているとはいえません。 そのため、本調査においては、「学校におけるいじめ防止等の対策のための組織」の在り方について、一定の理解があると考えられる自治体については、相応に高く評価しています。

(2)各自治体・寸評

各寸評では、主として、特に重要と考える10項目(1.理念・方針、2.14条3項組織の有無、3.自主活動支援、4.啓発、5.窓口、6.学校評価、7.22条組織、8.情報共有、9.28条組織、10.見直し)についてコメントしています。チェックリストの項目は、上記10項目以外にもあり、当該自治体の基本方針の全てに言及したものではありませんが、皆さんの理解の一助となれば幸いです。

上位3位自治体

■1位 鹿児島市 77ポイント

○全体評価  非常に読みやすく、読み手を意識して作成されていると感じました。また、網羅的、かつ、具体性に富んだ基本方針の記載からは、これまで鹿児島市がいじめ防止に熱心に取り組んできたこと、そして、今後も意欲的に取り組んでいくとの姿勢を感じました。他の自治体にも参考にしていただきたい素晴らしい内容だと思います。

○理念・方針について  いじめの定義について、いじめの認知からその判断方法、態様の具体例等が詳細に記載されているなど、鹿児島市が意欲的に取り組む姿勢が感じられます。もっとも、他の項目の内容と比べれば、少し淡白な記載にも感じられました。関係者へ熱意を伝える重要な部分であり、自治体による強い決意を明らかにすることが望まれます。

○自治体内部の組織構成について  法14条3項に基づく組織として「いじめ対策検討委員会」が予定されていると思われるところ、その構成員は自治体職員のみであり、第三者の参加が予定されていない点はやや問題です。一方、法14条1項の組織「鹿児島県青少年問題協議会」の構成について、学識経験者だけでなく、公募に応じた者なども明記されている点は同市の素晴らしい特色といえます。ただし、同協議会の活動内容は、抽象的な記載にとどまっており、運用によって実効性が大きく変わってしまう可能性があるので、今後の改訂により、より具体的な記載がなされることが期待されます。

○児童生徒への啓発活動について 心の教育の実施、「いじめ防止啓発強調月間(ニコニコ月間)」の実施、毎年のいじめ防止等に関するリーフレットの作成等の特色あるいじめ防止対策を講じるなど、独自の具体的な取組についての記載がある点は、高く評価できます。

○窓口の設置について  「市教育相談室等の電話番号を記載した教育相談カード(いじめ相談窓口~心のダイヤル~)を小・中学生全員に配布」するなど、学校以外の相談窓口を積極的に周知することが明記されており、高く評価できます。

○自治体による学校評価について 「より早く発見し、より早く解決できたか」等を「重視」することを明確にしている点、「いじめの取組に関する評価は学校基本方針に位置づけられたPDCAサイクルに基づき行う」としている点等、各校が積極的に開示していくインセンティブを与える方向で規定がなされていることは高く評価されます。

○学校内部の組織について 「いじめの防止等の対策のための組織の構成員」の役割が具体的に記載されている点は評価できます。 構成員については、学級担任や部活動顧問の他、「関係の深い教職員を追加」することなども例示的に挙げている点は評価できますが、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足している点はやや残念といえます。 外部専門家については、助言を得るなどの活用例が記載されているのみで、外部者の参加を義務付ける規定がありませんので、今後の改訂により規定されることが望まれます。

○教職員間の情報共有について  いじめ防止等において、組織で対応することの重要性、情報共有の重要性が明確に示されており、この点は評価できると思いますが、抽象的な記載となっており、実際には各校の裁量が大きいと考えられる点が少し懸念されます。

○重大事態への対応に関する組織の構成について 「児童生徒に関する事故等調査委員会」について、「弁護士等の法律関係者、医療関係者、学識経験者、共育関係者、その他教育委員会が認めるもの」となっており、第三者の専門家で構成されることが明確に規定されている点で評価できます。

■2位 仙台市 64ポイント

○全体評価  網羅的で丁寧な記載がなされており、かつ、具体的な施策も多く示されています。いじめ防止や早期発見のための「具体的取組例」が記載されていることも仙台市の基本方針の素晴らしい特色です。全体として、仙台市がいじめ防止対策に意欲的に取り組む姿勢がうかがえ、高い評価を受ける基本方針と感じました。

○理念・方針について  関係者全員で「いじめ」の抑止に取り組もうとする姿勢、及び、「いじめ」抑止に必要な視点が記載されており、その姿勢の強さが示されています。 また、「いじめ」の具体例について、いじめへと発展しやすい「いじり」の具体例も記載されており、いじめ予防に対する意識の高さがうかがわれます。

○自治体内部の組織の設置・構成員について  法14条3項に基づく常設の組織「仙台市いじめ問題専門委員会」の構成員として、「教育、法律、医療、心理、福祉等についての専門的な知識及び経験を有する者(弁護士、精神科医など)で構成することを基本とする」と第三者性の高い外部者を含めることを明示している点は、特筆すべき重要な点だと思います。

○児童生徒の自主的活動に対する支援について 「児童会、生徒回答によるいじめ防止に向けた自主的取組を促進するため、毎年11月を『いじめゼロ・キャンペーン』月間」として、学校と連携して、支援に取り組む姿勢がみられます。ただ、その具体的な内容は明らかではないため、実効性については、各学校の運用に依存する可能性があります。各学校の姿勢を尊重する姿勢は大切ですが、今後の改訂により、基本的な方向性だけでも示されることが望まれます。

○児童生徒への啓発活動について 具体的な取組、教材等が示されつつ、児童生徒への啓発活動の重要性がはっきりと示されており、仙台市の意欲的に取り組もうとする姿勢がうかがわれます。

○窓口の設置について  全体として関係各機関と連携していく姿勢はみてとれ、各校の「学校いじめ防止等対策委員会」がいじめの相談・通報の窓口ともされていますが、さらに、学校とは別組織の多種多様な相談窓口等を設置、記載した方がより望ましいと感じます。

○自治体による学校評価について 「いじめの有無や多寡のみによって学校や教職員を評価するのではなく」「取組や対応を評価」との視点が示されていることで一般的な基準は満たされていますが、さらに、いじめの実態を学校が積極的に開示していこうとのインセンティブを与える仕組み、姿勢について記載があればより良い内容になると思います。

○学校内部の組織について 「学校いじめ防止等対策委員会」の役割が具体的に記載されている点は評価できます。 構成員の具体的記載をみると、特別支援教育コーディネーターやさわやか相談員等も挙げられている点、「内容・案件により、他の必要な教職員や学校関係者等の出席も可とする」としている点は評価できますが、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加を義務付ける規定がないことは残念です。

○教職員間の情報共有について  いじめ防止等については組織的な対応が重要である点、各教員が抱え込まないようにするとの点が明記されている点で高く評価できますが、やや抽象的な記載にとどまっており、実際に教職員間で密な情報共有ができるかは、各学校の運用に依存すると思われ、この点、少し残念です。

○重大事態への対応に関する組織の構成について 調査組織について、学校が主体となって調査を行う場合にも「学校評議員、PTA役員、学校医など学校以外の委員を加えるなど公平性・中立性の確保に努めた構成」としている点、及び、学校が主体となって調査を行う場合以外の事案においては、14条3項に規定する弁護士、精神科医などを始めとする第三者性のある「仙台市いじめ問題専門員会」を調査組織としている点で評価できます。

○基本方針の見直しについて 毎年度の取組実施結果の点検・評価、仙台市いじめ問題専門委員会の意見を踏まえ、十分な検討を行い、必要な措置を講じるとしている点は、やや抽象的であるものの、他の自治体と比較して、具体的に見直しを検討する姿勢がうかがわれます。

■3位 川崎市 57ポイント

○全体評価 いじめの現状認識が具体的かつ最新であり、対応についても具体的に記載され、さらに、「児童支援コーディネーター専任化の推進」等、他の自治体にはない独自の取組も紹介されています。全体として、他の自治体に比べて記載が具体的であり、いじめ防止等に関する意識の高さと強い意志がうかがわれます。

○理念・方針について いじめ防止等において重要な8項目を端的に列挙しつつ、「いじめられる側にも原因があるとか、成長の糧になるなどの考え方を一掃し」、「過度な同質志向を排除」、「様々な情報を積極的に保護者と共有し、家庭との協力体制を築く必要」等を明確に記載しており、旧弊を改めようとする強い意志が感じられます。 また、「いじめ」の具体例について、いじめへと発展しやすい「いじり」の具体例も記載されており、いじめ予防に対する意識の高さがうかがわれます。

○自治体内部の組織構成について 法14条3項の「川崎市いじめ問題専門・調査委員会」については、役割が明確になっておらず、また、構成員についても「いじめ事案の関係者と直接の人間関係または特別な利害関係を有しない者」とされているのみで、外部性が担保されているとは評価できません。実際に選出された委員をみると、外部性が担保されていると評価できると思いますが、その重要性に鑑みれば、運用に任せず基本方針でも明確に記載されるのが望ましいと感じます。

○児童生徒の自主的活動に対する支援について 「児童生徒自身の『自浄力』を身につけさせる」等の記載もあり意識はされていると感じますが、いずれも抽象的な記載にとどまっている点が残念です。

○児童生徒への啓発活動について  「かわさき共生・共育プログラム」の6時間の実施が明記されるなど、実施内容が具体的に記載されている点で評価できます。

○窓口の設置について 通報・相談機関が他の自治体に比べて突出して多く挙げられている点、法務局等ではなく、市教育委員会独自のものを多く設けている点など、自治体全体でいじめ問題に真摯に取り組もうとする姿勢が見て取れます。

○自治体による学校評価について  学校評価において、「いじめの事実が隠蔽されず、いじめの実態の把握及びいじめに対する措置が適切に行われる」視点が重要であり、早期発見、再発防止の取組等に関して適正に評価されるべきと明記されている点は、他の自治体と比較して良い点だと感じます。

○学校内部の組織について 「校内いじめ防止対策会議」の役割が具体的に記載されている点は評価できます。 構成員の具体的記載をみると、児童支援コーディネーターや部活動顧問責任者等も挙げられている点は評価できますが、全ての教員が数年ごとに担当すること等、教員全員が意識の共有を図るための体制構築を目指す視点が不足しています。 また、外部の有識者等の参加を義務付ける規定がないことは非常に残念です。

○教職員間の情報共有について やや抽象的な記載ではありますが、「教職員は、いじめの兆候や懸念、児童生徒からの訴えを、一人で抱え込むことなく、管理職や学年職員に相談し、『対策会議』に報告する。」との記載があり、組織(チーム)で対応することが重視されている点は評価できます。

○重大事態への対応に関する組織の構成について 「重大事態の意味」、「調査の実施」については一定の具体性をもった記載がなされていますが、最も重要な構成員については、「自治体内部の組織構成について」の項で述べたのと同様に、具体的に明記されておらず、記載上、外部性に関し問題があると言わざるをえません。この点は、今後の改訂により改善されることが望まれます。

下位2自治体

■25位(下位第1位) 八王子市 6ポイント

○全体評価  この八王子市教育委員会作成の「八王子市いじめ防止基本方針」は、いじめの防止等のために社会総がかりでいじめの問題に対峙する姿勢が全く感じられません。全体的に法の文言をそのまま引用、または簡易に表現し羅列しただけの内容であり、きわめて抽象的な表現が多い一方、具体的な取組はない、などの酷評をせざるをえません。 本調査で上位となった他の都市等を参考に、早急に見直しが行われる必要があると思われます。

○理念・方針  いじめのない八王子市を作るという気概が全く感じられません。

○自治体内部の組織の設置・構成員 法14条3項に基づく組織は、規定されていません。

○児童生徒の自主的活動に対する支援 児童生徒の自主的活動を支援するのではなく、学校が「授業づくりや集団づくり」を行うことのみ規定されています。児童生徒を主体としての活動が規定されていないことは甚だ残念です。

○啓発活動 「いじめの問題の理解と対応について、保護者や関係機関等への啓発を行う。」とのみ定められており、具体的に、何をどう啓発するのか明らかでありません。

○窓口の設置  「電話・来所によるいじめの通報や相談を受ける体制を整備する。」と述べられているのみであり、具体的な内容は全く記載されていません。

○自治体による学校評価  規定はありません。

○学校内部の組織  「複数の教職員その他の関係者」による組織を置くことのみ定めています。学校内部の組織ですから複数の教職員が関わるのは自明です。これだけでは、誰が構成員か全くわかりません。

○教職員間の情報共有  「組織的に対応する」と記すのみで、どう組織的に対応するのか、そもそも「組織的に」とはどういったことなのか、全く明らかでありません。

○重大事態への対応に関する組織の構成 本方針で、「重大事態への対処」の項目の最初にあるのは、「必要に応じて警察への通報」を行うことだけです。相当の期間の学校欠席の場面などは、全く念頭にない内容で残念です。法律の内容をよく理解できていない可能性があります。

○基本方針の見直し このような規定はありません。

■24位(下位第2位) 岡山市 27ポイント

○全体評価  全体として、法の施行に伴い状況を改善していこうとの姿勢が感じられませんでした。基本方針よりも法律が上位にあることを十分考慮し、少なくとも法の趣旨を踏まえた見直しを図ることが望まれます。なお、表題が「岡山市いじめ等の問題行動及び不登校の防止に関する基本方針」となっていますが、法の趣旨をより反映するためにも、いじめを問題行動や不登校問題の一部分として捉えるのではなく、いじめと正面から向き合った上で、いじめに特化した基本方針の作成が望まれます。

○理念・方針  法律の文言を引用していますが、いじめが、児童等の尊厳の問題である点の指摘はなされていません。法律の趣旨をくみ取り、法律との整合性を、しっかりと検討する必要があります。

○自治体内部の組織の設置・構成員 「問題行動等対策委員会」は、法14条3項に基づく組織のようですが、その構成員については、「学識経験者や専門的な知識等を有する第三者等からなる」と定めるのみです。「等」が二つ重なっていることもあり、結局、誰が構成員になるのか判然としません。実効性ある第三者組織をしっかりと構築する規定とすることが望まれます。

○児童生徒の自主的活動に対する支援 教育委員会と学校を主体とする規定のみで、児童生徒の自主的活動についての意識が薄いように感じます。「市民協働」を掲げる以上、今後の改訂では、いじめ問題の主体である児童生徒や、その保護者を主体とする規定が望まれます。

○啓発活動 「家庭への啓発」という項目はありますが、規定の中では「適切な情報提供を行う」との別にとどまり、積極的な活動が念頭にあるようには読み取れません。上記「市民協働」の観点からも、しっかりとした啓発活動規定を定めることが望まれます。

○窓口の設置  いじめ関連の窓口についての規定はありません。

○自治体による学校評価  学校評価についての規定はありません。

○学校内部の組織  法22条に基づき学校が設置する組織については、「教職員の他に専門的知識を有する者等を加えて構成する。」としており、外部の有識者等の協力を想定していることは評価できます。

○教職員間の情報共有  「教職員の共通理解と資質向上」という項目を設け、「同僚性を高め互いの資質を高め合う」旨規定しており、一定の配慮がなされています。

○重大事態への対応に関する組織の構成  法律に基づき適切に対応することを規定するのみで、その調査主体も「学校又は問題行動等対策委員会」によるものとするのみで、具体的に誰による調査なのか、調査主体の構成員が明記されていません。中立性・公平性・透明性を確保した組織により、適切に対応しようとする積極的な姿勢が望まれます。

○基本方針の見直し 「変化する状況に柔軟に対応するために」とし、見直し手続きの規定ぶりは、具体的なものとなっています。見直し時期のめどにつき規定があれば、より良い内容になると思われます。

全自治体の寸評を掲載したページはこちらから

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2016年3月5日(土)にSVP東京ネットワークミーティング

『繋がる力でいじめに向き合う~いじめを止めるオトナの役割』を開催!

日時:3月5日(土)16:00~19:00

会場:日本財団ビル 2階 AB大会議室

ゲスト:

●荻上チキさん(代表理事)須永祐慈さん(事務局長)

特定非営利活動法人 ストップいじめ!ナビ

●明智カイトさん

いのち リスペクト。ホワイトリボン・キャンペーン代表

●朝倉景樹さん(シューレ大学スタッフ)

特定非営利活動法人 東京シューレ理事

●渡辺由美子さん

特定非営利活動法人 キッズドア理事長

●綾屋紗月さん

おとえもじて/東京大学先端科学技術研究センター

イベント詳細と、参加お申し込みはこちらから⇒

http://nwm79.peatix.com/

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NPO法人「ストップいじめ!ナビ」

「ストップいじめ!ナビ」は、一向におさまることのない「いじめ問題」に一石を投じようと、2012年秋に活動を開始したNPO法人です。様々な分野の専門家が集まり、それぞれが持つノウハウや社会資源を結集させて「いじめ問題」への具体策を提示・実現させていこうとしています。

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