日本に参議院は不要か?日本独特の「参議院不要論」の理由(選挙制度改革から考える)

アイルランド上院

先週、参議院の選挙制度改革について民主党と公明党が共同で隣接する選挙区を統合する「合区案」を打ち出す中、定数是正策を唱えるだけでは他党の協力は得られないと判断した自民党は「合区」を容認する方針を固めました。このまま一票の格差を放置し続ければ、参議院は世間から見放され、その先には「参議院不要」や「一院制」が現実味を増しかねないと思います。この「参議院の選挙制度改革」や「参議院不要論」について「民社ゆーす」元事務局長の西形公一さんにお話を伺いました。

※前半のインタビューはこちらです

日本に参議院は不要か?日本独特の「参議院不要論」の理由(一院制・両院制から考える)

一院制の利点と欠点 (裏返せば両院制の利点と欠点)

明智 一院制、両院制それぞれの利点と欠点について教えてください。

西形 まず「一院制」の利点としては下記が挙げられます。

1. 両院の意見が対立し、時機に応じた法律の整備が遅れるということがない。

2. 両院の意見が一致する場合の議論の重複を省くことができ、速やかに立法が行われる。

3. 人件費や選挙実施費用といった経費を削減できる。

そして、「一院制」の欠点としては下記が挙げられます。

1. 議会内での両院相互の均衡と抑制(チェック・アンド・バランス)が働かない結果、議会が暴走する可能性がある。特に、1つの党が長期に渡り単独過半数を維持し続ける場合に危険性が大きい。

2. ひと通りの審議で法律が成立してしまうので、その時の雰囲気に流されて立法がなされる恐れがある。

3. 投票の機会が半減するため、議会に対する民意が反映されにくくなる。

4. 一つしかない議会が解散されて総選挙が行われる前に、議会決議が必要な事態に対応できない恐れがある。

5. 地域代表の議院がないため、地方の意見が国に届きにくくなる。

これら、「一院制」の欠点に対しては、以下のような反論がなされています。

1. 第1の点に関しては、憲法によって、議会をコントロールするための安全装置を設定することで対応する(例えば、大統領に法律の拒否権を与えるなど。)

2. 第2の点に関しては、本会議前の委員会で十分審議を尽くさせることで、事実上、両院制と同様の機能を果たすことが可能。一部の国(コスタリカなど)では重要法案に関して数度の審議を行うことでそのような欠点を回避できるとしている。

3. 第3の点に関しては、議員の任期を短縮したり、半数改選制や国民投票制度を採用するなどで、対処可能である。→半数改選制の場合、議会の解散は困難になる

4. 第4の点に関しては、議員の半数改選制や代替組織で対処可能である。→半数改選制の問題は上と同じ

5. 第5の点に関しては、議員選出方法において地方選出枠を設けたり、地方公共団体の権限を大きくして国に依存する体制を解消したりすることで、対処する。

アメリカ上院
アメリカ上院

日本独特の「参議院不要論」の理由

明智 それでは次に「参議院不要論」について教えてください。

西形 「参議院不要論」が出る背景に参議院の政党化による衆議院のカーボンコピー化があげられます。政党化によって参議院に期待されていた良識の府としての機能が、十分に果たされなくなったということです。伝統的に各国の上院は当初は間接選挙や任命制を用いるなど有徳有識の者を集めることを目的とされていました。また、国民の代表となる下院より権限が弱く、有識者による議員立法や下院をチェックし法案の修正案を提示することなどに特化して存在意義を示す場合が多いのです。また下院のような政党対政党の対決をよしとせず、政党化しないで中立な視点から有識者による審議を目指す傾向があります(→有識者・貴族院型の上院)。

日本においても、明治憲法下では上院の貴族院は国家功労者などによる貴族と、有識者や功労者の勅撰議員からなっており、戦後に公選の参議院を設けた際にも被選挙権は30歳以上、一部に全国区制を採用するなど、できるだけ有識で党派に属さない議員が増えるよう努力されました。しかし参議院は次第に政党化し、議院と同じような党派対決の場へと変貌、全国区制は逆に党派対決の要素が最も強い比例代表制へと変えられました。このような中で、衆議院と変わらない参議院に存在意義を見いだせないというのが、参議院不要論の核心といえます。

これに対して参議院の衆議院化(政党化)こそが問題であり、参議院改革によって本来のチェック機能を取り戻せるという考え方もあります。また、この参議院の政党化は比例代表制の弊害であり、かつての全国区を復活させ(単なる知名度による人気投票に過ぎないとの批判はあるが)、政党の意を受けずに当選した議員によって参議院を構成することが、衆議院に対するカウンターパートとしての参議院の価値に繋がるとの意見は根強くあります。

いっぽうで私は同じ党派対決でも内閣不信任権・予算議決権・条約批准権のある衆議院と、事実上もたない参議院では立場が異なり、衆議院ではある程度は民意を集約する選挙制度、参議院では民意を鏡のように反映する選挙制度を採用することで両院の違いを出すべきだと考えています。

参議院の選挙制度改革について

明智 参議院の選挙制度改革案についてどう思われますか?

西形 衆議院は具体的には小選挙区で地域代表性を反映し、一部比例区で野党にも議席を回す方法を提案しています。その際、小選挙区3、比例代表1の比率とし、その代わり比例代表に小選挙区で敗退した政党に重く配分する方法です(連用制や、ドイツ・スコットランドの方式に近い)。この方法で衆議院はある程度の民意の集約を図るなら、参議院は民意を鏡のように反映する比例代表制はいかがでしょうか。

さらに思い切ったことを言えば、衆議院のほうが定数が多い必要もないのです。アメリカに倣って「少数精鋭の上院」+民意に近い所から選ばれる数の多い下院、とし、衆議院を上院に、参議院を下院に位置づけることさえ可能です。この場合、衆議院160名、参議院900名(半数改選)とか、こんな感じでしょうか。衆議院は120名を小選挙区で選び40名を比例区で選ぶ、いっぽう参議院は450名を都道府県単位の比例代表制で選ぶ…そんな感じでしょうか。ここまで思い切った案を出している政党はどこにもないですよ(笑)。

明智 ありがとうございます。参議院を守るためにも、今こそ大胆な選挙制度改革が必要になってきますね。

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西形公一(にしがた・きみかず)

プロフィールは 1970年生。旧民社党全国青年部を引き継いだ「民社ゆーす」事務局長を経て、現在「AFEE エンターテイメント表現の自由の会」副編集長。池袋ロマンス通り商店会商店会副会長として地域づくりにも携わる。

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