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全米オープンテニス:ベスト8入りした錦織圭が、コート上で示した前向きな姿勢と心の強さ

内田暁フリーランスライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

4回戦:○錦織圭 6-3 6-2 7-5 コールシュライバー

 スコアは6-3,6-2,7-5で、試合時間は2時間16分。完勝に見えた試合ですが、勝利の瞬間、錦織は精魂尽き果てたようにその場にしゃがみ込みました。

「久しぶりの暑さの中で大変でした。長いラリーが続いたあとは、次のポイントをどう戦おうという判断力が、どんどん奪われていくのは感じたので」

 朝11時に始まり、太陽がすり鉢状のスタジアムの底を直射する中での試合は、熱に削り取られる心身のスタミナと試合時間、そして刻一刻と移り変わる気象状況がせめぎ合う、スコアには映らぬ死闘だったのです。

 判断力を維持するのが困難だったという錦織ですが、それでも試合内容を見れば、ゲームメイクにおいて勝っていたのは明白でした。コールシュライバーにしてみれば、過去2試合ともに完敗を喫した錦織は、苦手意識を抱く相手だったでしょう。対戦前にも「僕のアングルショットが圭には通じない」と、不安要素を口にしていました。

 対する錦織には、コールシュライバー対策が見えていた様子。「相手に時間を与えない」「バックのダウンザラインを多く使い、彼のフォア側を攻めていく」などの策を徹底し、終始試合を支配します。この試合唯一もつれたのが、ブレークバックを許した第3セット終盤ですが、その時にも「すべきことはシンプル。前に出て打つことを心がけた」と振り返りました。

 

 暑さで朦朧としながらも、やるべきことを貫けた背景にある物とは、今大会の錦織がコート上で示す、前向きな姿勢と心の強さでしょう。いつも以上に拳を固め、「カモン、カモン!」と口にしながら自分を鼓舞。そのような前向きな姿勢は、ケガからの復帰後、錦織が特に心がけていることだと言います。

「ケガ後はネガティブな感情がすごく多かったので、それをどうやって減らしていこうかというのは考えていました。なるべく自分を奮い立たせたり、悪いところだけ見ないようにしたり。常にポジティブでいるのは、どうしても必要なので」

 意識的にポジティブな姿勢を心がけたその結果、今では自然と、前向きでいられるという錦織。

 その強きメンタリティを胸に抱き、次に挑むはマリン・チリッチ。

「対戦する時は、いつも決勝のことを思い出す」という、4年前の全米決勝で敗れた相手です。

※テニス専門誌『スマッシュ』のFacebookより転載

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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