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死闘の末にマリーを破り、ジョコビッチがカタール・オープン制す。世界1位と2位が開幕戦で示した存在感

内田暁フリーランスライター
写真提供:カタール・エクソンモービル・オープン

今季は、果たしてどんな1年になるのか――?

その問いに、現世界1位と2位が一つの解を示したような試合でした。試合時間は2時間54分。ジョコビッチは、最初のマッチポイントを手にしてから実際に勝利をつかむまで約1時間を要し、マリーはファイナルセットで手にしたブレークポイントを逃した時に、勝者の権利も取り逃してしまったようでした。

ファンの期待通り、マリー対ジョコビッチの対戦となったカタール・オープンの決勝戦。第2セットで3本のマッチポイントを凌がれながらも、第3セットで危機を凌ぎ再び主導権を奪い返したジョコビッチが、6-3,5-7,6-4のスコアで長くタフなマラソンマッチを制しました。

「望みうる最高の新シーズンのスタートだ。5試合を勝ち、しかも決勝戦では最大のライバル相手に、3時間の死闘を制したんだから」。

試合後のジョコビッチの言葉が、そしてなにより試合内容が、彼にとってマリーというライバルがいかに大きな存在かを体現していたでしょう。全てのポイントが長く激しいラリーであり、両者ともにボールが2バウンドするまで決して諦めることなくコートを端から端まで走ります。第2セットでマッチポイントを凌いだ時にファンの歓声を煽るマリーの珍しい姿が、そしてこのセットを落とした時にシャツを引きちぎるように脱ぎ捨てるジョコビッチの怒りが、二人の勝利への執着を物語っていました。

「この大会はATP250カテゴリーにも関わらず、そこまで必死になったのは相手がアンディだから?」

優勝会見で問われたジョコビッチは、即答します。

「彼との試合は、常に死闘になる。250だろうがマスターズ1000だろうが、あるいはグランドスラムの決勝だろうが関係ない。今日の試合でも、お互いにどれだけ勝ちたがっていたかは明らかだった。最大のライバルとの戦いでは、大会のカテゴリーも、明日自分の身体がどうなるかも考えず、ただ目の前の試合に勝ちたいとしか思えなくなるんだ」。

今季はフェデラーとナダルの復帰があれば、錦織をはじめとする中堅の追い上げもあり、混沌のシーズンが予想されています。それでもやはり、テニス界はこの二人を中心に回っていくだろうことを予感させる決勝戦でした。

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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