「財務局の意向で都合良く利用」国有地値引きの鑑定書”否定”で再調査必至

問題の国有地に立つ森友学園の小学校校舎(撮影・相澤冬樹)

 森友事件の核心である、森友学園への国有地巨額値引き売却。その根拠とされた不動産鑑定が、依頼者である財務省近畿財務局の意向に沿う形で行われ、安値売却に「都合良く利用された」と指摘する調査報告書を、不動産鑑定士の団体がまとめた。財務省がこれまで主張してきた「適正価格での売却」を根底から覆す内容で、政府・財務省は改めて説明が求められる。

 この調査報告書は、大阪府不動産鑑定士協会が利害関係のない弁護士や不動産鑑定士による調査委員会を設け、去年11月から調査を進めた結果をとりまとめたもの。それによると、森友学園に対する国有地の売却にあたり、近畿財務局から依頼を受けた不動産鑑定士は、まずこの土地にごみが埋まっていないと仮定して、鑑定評価額を9億5600万円とした。その上で、近畿財務局の推測に基づく、信用性に欠けるごみの撤去費用を鑑定評価額から差し引き、1億3400万円を意見価額として鑑定評価書の末尾に記載した。その翌月、近畿財務局はこの意見価額通りの金額で国有地を森友学園に売却している。

森友学園の小学校の名誉校長が安倍首相の妻、安倍昭恵さんだった(撮影・相澤冬樹)
森友学園の小学校の名誉校長が安倍首相の妻、安倍昭恵さんだった(撮影・相澤冬樹)

 これについて調査報告書は「鑑定評価書に意見価額の記載がなければ、近畿財務局は国有地を1億3400万円で売却することはできなかったのではないか」としている。また「依頼者である近畿財務局の意向に沿う形で鑑定評価書が作成され、結果として依頼者に都合良く利用された」と指摘し、「国民の利益に反し、不動産鑑定評価制度に対する国民の信頼を損なう結果につながる」と厳しく批判している。

 調査にあたり、委員会は近畿財務局に質問状を送ったが期限までに回答はなかった。また問題の鑑定を行った不動産鑑定士にも協力を依頼したが応じなかったという。

国有地を安値で売った財務省近畿財務局(撮影・相澤冬樹)
国有地を安値で売った財務省近畿財務局(撮影・相澤冬樹)

 調査報告書はこのほか、問題の国有地の売却に先立ち、森友学園にこの土地を10年間の定期借地契約で貸し付ける際の2件の不動産鑑定についても、調査方法や記載などに同様の問題があったと指摘している。

 土地売買をめぐる公的機関の不正としては、13年前、奈良県生駒市の山林買収をめぐり前の市長らが大阪地検特捜部に逮捕され、背任罪に問われて有罪になった事件がある。この時は問題の土地の鑑定を行った不動産鑑定士も逮捕されている。大阪特捜はこの時、市の元トップの不正をきちんと立件した。

大阪地検前で抗議する木村真豊中市議ら(撮影・相澤冬樹)
大阪地検前で抗議する木村真豊中市議ら(撮影・相澤冬樹)

 ひるがえっておととし5月、大阪地検特捜部は森友学園への国有地売却をめぐる財務省関係者らの背任容疑や公文書改ざんをめぐる容疑をすべて不起訴にして事件にふたをした。だが今回の不動産鑑定士協会の報告書をみれば、近畿財務局の売却担当者、池田靖 統括国有財産管理官(当時)とその上司らの責任は明らかだ。そしてすべてを知りながら事件を立件しなかった大阪地検特捜部の責任も。

 この時、現場に圧力をかけて事件をつぶしたとささやかれたのが、当時法務省事務方トップの事務次官だった黒川弘務 東京高検検事長だ。“官邸の守護神”と呼ばれるゆえんである。その黒川検事長の不当な定年延長が行われたのは検察トップの検事総長に据えるためとみられ、さらにそれを後付けで正当化し、政権の検察支配につながる検察庁法改正案が今まさに審議されている。

森友事件を追及してきた阪口徳雄弁護士(撮影・相澤冬樹)
森友事件を追及してきた阪口徳雄弁護士(撮影・相澤冬樹)

 生駒市の背任事件が立件された当時、現職市長の依頼で顧問を務め、森友事件も追及している阪口徳雄弁護士は「生駒市と同じで、不動産鑑定士と役所が結託して不正な売買を行ったことが明らかになった。事件で亡くなった赤木俊夫さんの妻、雅子さんが求めているとおり、政府・財務省は国有地の売却と公文書改ざんについて再調査して、きちんと説明すべきだ。また事件として立件しなかったのは法務省と検察庁の責任で、その責任が問われないままの検察庁法改正などありえない」と話している。

#検察庁法改正案に抗議します

#赤木さんを忘れない

【執筆・相澤冬樹】

国有地前で安倍昭恵さんと籠池夫妻のスリーショット。これがもとで財務局が“神風”を吹かせた(関係者提供)
国有地前で安倍昭恵さんと籠池夫妻のスリーショット。これがもとで財務局が“神風”を吹かせた(関係者提供)