怒涛の学校教育:少子化人口の変化を見据えた、小中学校一貫教育の現場の変遷を説く

(写真:アフロ)

中1のギャップと縦の統合

 中1のギャップの緩和を目指して、2000年代に入って小学校と中学校の9年間の一貫教育への試みが、自治体独自の取り組みとして始まった。その先駆的な自治体として広島県呉市では暮中央学園、川尻小学校そして川尻中学校で小中一貫教育を実施した。中1のギャップ。中学生になるときに、新しい環境に適応できずに、不登校やいじめなどの問題行動が増えるとされている。その背景には、小学校から中学校に進学するなかで、授業の速度や教育方法などが変化し、友人関係も変わり、部活動も本格化する。これら様々な変化が重なり合って起こるといわれている。

 かつても、そして今にわたっても、学校は地域の核である。学校が地域になくなるということは、子育て世帯が離れ、地域の過疎化が進むことを意味する。近年では、中山間地域や都市部の人口の空洞化において、閉校の危機に直面するなかで、学校の活力を維持させる観点から、小・中学校の統廃合を検討すべきだという動きがある。これを「縦の統合」と称する。

小中一貫教育調査研究事業

 2015年10月は文部科学省は「小中一貫教育調査研究事業」を開始した。先行区モデルとしていくつかの市が選定を受けた。その一つ養父市では、養父校区と関宮校区がモデル事業に選ばれた。そこで同年、小中一貫教育コーディネータを配置し、翌年の2016年には小中一貫教育推進協議会を設け、2017年には養父校区と関宮校区に加え、大屋校区と八鹿青渓校区を併せて、市内全域で下記のように小中学校一貫教育を実施した。

図 小中一貫教育

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出典)養父市「小中一貫教育リーフレット」より抜粋

 小中一貫教育事業には、小学校と中学校の校舎を同一とする「一体型」と小学校と中学校が離れている「分離型」がある。養父市においては、養父校区と八鹿青渓校区では施設分離型を行い、関宮校区と大屋校区では施設隣接型を実施した。このとき、養父市では施設分離型においては3~4つの小学校と1つの中学校とで一貫教育を実施し、施設隣接型では1小学校と1中学校で進めた。

教育内容と課題

 その教育内容において養父市では、中1ギャップの緩和を目指した一貫した指導方法、児童生徒の課題を踏まえた指導計画、生活リズムに学習習慣の定着、そして家庭と地域の連携・協働などを打ちだした。具体的には、中1ギャップの緩和には小学3年生の合同社会見学に5年生の交流会、6年生の中学校登校そして中学教員の乗り入れ授業を実施することで小学校から中学校への教育の乖離を防いだ。また、学習の定着化には、家庭学習の手引きやSNS対応へのルール作りなどを導入した。さらに、干し柿作りやコメ作りなどの体験、合同リサイクル活動に職場体験を通して、家庭と地域の連携を図った。

 だが、小中学校一貫教育事業を進めるなかで、いくつかの課題も出てきている。たとえば、新たに業務が発生することで教職員の多忙感が生じ、また小中学校の連携を図るうえで合同研修の調整なども生じた。これらの課題に対しては、教職員の多忙感の解消に、学校行事や研修を精選したり、メール等の連絡調整を行うことで、その解消を図ろうとしている。合同研修の調整については、各学校で校内研究授業の公開などで対応を行った。このような小中一貫教育事業を行うにあたり、本年度養父市では、合同研修、乗り入れ授業、中学校での授業および清掃等の活動体験そして次年度の計画の作成に対して、事業費として2,814千円(2017年度予算)をつけている。

 中1のギャップの緩和を目指して、2000年代から自治体独自の取り組みとして始まった小中一貫教育。これら小中一貫教育は質の向上に加え、将来迫りくる少子化人口の変化を見据え、閉校の危機に直面する中山間地域では、縦の統合として小中学校の統合が進む。